クリスマス限定コーヒー
会社の昼休み。
飯を食った後、休憩室で一休み。ここの会社はホワイトなので、休憩室の自動販売機は無料で楽しめる。カップ式の自動販売機だが、ここのコーヒーは案外うまい。こういう庶民の味がいいのだ。某コーヒー店は、おっさんの俺には敷居が高い。
さっそくコーヒーを一杯もらう事にしよう。
この出来上がるまでの数十秒がいいよな。これもオシャレなカフェでは味わう事ができない時間だ。
「おお、コーヒーできた」
出来上がったコーヒーを取り出す。
「お、これはいいな」
コーヒーのカップのデザインがクリスマス仕様になっていた。サンタの帽子を被ったトナカイのイラストが描かれている。いつもは茶色の無地のものだったので、なんだか嬉しい。おそらくクリスマス限定だろうが、こういう小さな変化が嬉しいものだ。
もっともクリスマスは関係なく仕事だ。年末だし、暇でもない。
「あれ? 先輩。コーヒーですか?」
そこの後輩がやってきて、同じようにコーヒーを飲んでいる。後輩のカップはサンタクロースのデザインのものだった。どうやらこのカップは色々な種類があるようで、気になるね。
「なんか、こういうデザインの変化っていいわな」
「俺も。限定って感じします!」
二人で熱々のコーヒーをすする。カップのデザインがちょっと変わっただけでも、意外と心は華やぐものだ。
もっともクリスマスも仕事だが。
コーヒーを飲み終える。別に仕事だっていい事ばかりでなく、嫌な事もある。報われる事も少ないが、全てが不幸でもない。こんなカップのようにささやかで小さな幸せはある。
やる気が出てきた。
「さあ、午後からも仕事頑張るか」
「僕はクリスマスも遊びたいなぁ」
後輩の本音には笑ってしまうが、頑張ろう。