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赤と緑

 クリスマス料理は好きになれない。年寄りには脂っこい。肉もケーキもピザも。


 クリスマスイヴ、俺は清掃の仕事を終えた後スーパーを見ていたが、目立つ所はケーキの山。惣菜コーナーはチキンとピザの山だった。


 正直、俺も妻もこういうハイカラなものは好きではない。


 妻は最近膝の具合が悪く、元気付けたいのだが、何を買って帰れば良いのやら。


 店内は「もろびとこぞりて」もかかっているが。


「主はきませり、主はきませり♪」


 歌詞をよく聞くと、どう考えてもイエス・キリストを待ち望んでいる歌だ。多くの日本人には関係ないはずだが、これで良いのだろうか。


 そんな事を考えても、買うものが決まらない。寿司は年末年始に便乗値上げしているのも気が引ける。


「うーむ」


 スーパーよりコンビニ行っても良いかもしれない。そう思い、店内から出る。「もろびとこぞりて」が遠ざかっていくが、店の前にフードトラックが出ているのに気づく。


 焼きそば専門店のフードトラックだった。真っ赤な車が派手だが、ソースのいい匂いがする。


 クリスマスに焼きそばってアリか?


 チキンにケーキ、ピザが苦手な俺はアリだだと思う。妻も焼きそばは好きだったし。


 値段はちょっと高いが良いか。フードトラックというレア感、それにクリスマスムードで財布の紐が緩む。「もろびとこぞりて」の明るい曲調は、やはり気分は上がる。


「どうも、ありがとうございます」


 店員から二人分の焼きそばの入った袋を受け取る。出来立てを作って貰ったので、ソースのいい臭いが鼻をくすぐった。


 中身をチラリと見ると、ソース焼きそばの上に紅生姜と青のりが見える。この赤と緑のコントラストは、クリスマスらしい。焼きそばだって十分クリスマスのご馳走ではないか。


「さて帰るか」


 二人分の焼きそばを抱き抱え、冬空の下を歩く。まだ焼きそばは温かい。冷める前に早く帰らなければ。


 焼きそばの紅生姜で口は真っ赤になるだろう。青のりで歯も汚れるだろう。


 でも、そんな事を気にせず一緒に食べる相手がいるのは、幸せな事だ。


 早く家に帰ろう。


 妻の喜ぶ顔が一刻も早く見たかった。


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