シュトレンと計画
シュトレン。
クリスマス時期に食べるお菓子だ。元々はドイツのお菓子で、イエス・キリストのパンとも呼ばれれいた。
シュトレンの起源については諸説ある。生まれたばかりの赤ちゃんイエス・キリストを表している説もある。真白ななまこ型は、全くそう見えない事もない。
そんなシュトレンだが、一本丸ごとは量がある。毎日少しずつアドベント的にクリスマスに楽しむ菓子でもある。シュトレンの材料は日もちするものを使い、一カ月ぐらいは長持ちするのだった。
十二月初旬、私は近所のパン屋でシュトレンを購入し、毎日少しずつ食べていた。
私は元々計画性がある。仕事もとある会社で秘書を長年やっていた。我ながら計画性があると思う。特にスケジュール管理が一番好き。シュトレンもスケジュールを組んで毎日少しずつ食べていた。
「よく我慢できるな」
夫はそんな私を見て呆れていたが、一度立てた自分の計画は崩さないタイプだ。
シュトレンがいくら美味しくても、どんなにたくさん食べたくても我慢し、一日に決めらた食べる分だけ楽しんでいた。
十二月十八日ぐらいになってくると、シュトレンもだんだんと小さくなり、全部食べたい衝動がくる。
本音では全部食べてしまいたいが、我慢だ。ダイエット中だと思えばいい。
こうしてクリスマスイブまで計画的にシュトレンを食べていた。シュトレンを計画的に食べるのは、成功したが。
「今日、婦人科に行ってきたんだけど、妊娠しているらしい……」
計画外の事が起きていた。最近どうも生理がこないと思い、病院に行ったら妊娠が発覚。これも計画的にコントロールしているつもりだが、100%ではなかったみたいだ。
初めての子。初めての妊娠。
「嬉しいぞ。来年は三人でクリスマスだ!」
不安がないわけでもないが、夫の喜ぶ顔をみて全てどうでもよくなった。
人生はシュトレンのように計画通りのはいかないらしい。
それでも今は幸せだった。自分の計画だけが全てでは無いはず。たまにはノープランで生きてみるのも楽しいのかもしれない。