特別なディナー
クリスマスは楽しみだ。海外で働いている父も帰ってくるし、街も賑やかになる。楽しい年末年始に胸がときめく。
ただし、一つだけ問題はあった。
「ひゃ!」
風呂上がり、体重計の上に乗ると悲鳴が出た。太っていた。どうりで最近、腰回りがキツいと思っていたが。
これから来るクリスマスにワクワクしていたが、ご馳走も目に浮かぶ。
私も一応は女子高生だ。そんなデブとかにはなりたくない。ダイエットしなければ。
母にお願いし、ご飯を小盛りにするように頼む。
「えー、あんたは太ってないって」
そう言うが気になるものは、気になる。毎日食べる量を減らしていき、運動量も増やす。苦手な野菜も頑張って食べた甲斐があり、なんとか体重はクリスマスまでに元に戻った。問題はクリスマスのご馳走だ。毎年母が用意してくれるディナーはほっぺたが落ちるほど美味しい。「リバウンド」という言葉浮かぶ。だからと言って、家族みんなで食べるクリスマスディナーは参加したい。
我ながらワガママだと思うが、今の時代はルッキズムが激しい。SNSの発達により他人と比較する事普通になってしまった。昔は町内で可愛い存在だったら良かったのかもしれないが、今の戦場はネットにも及ぶ。つまり全世界の人がライバルになてしまったという事だ。インターネットの便利な技術が発達するのは良い面と悪い面もあったのだろう。こんな事を言っても誰も賛成してくれなが、私は昔の村娘Aになりたいって思ってしまう。
そんな何となく憂鬱な気持ちで迎えたクリスマス。
父も帰ってきて家族三人でディナーが始まったのだが。
テーブルの上の料理が例年と少し違う。七面鳥やピザ、ケーキはない。代わりにデミグラスソースの野菜に煮込み料理、サラダチキンのサラダ、チーズたっぷりのグラタン。ピザもあったが、生地は油揚げだ。
「このグラタンはチーズ使ってるけど、植物由来のチーズよ」
母が説明する。どの料理も糖質や脂質をオフしたものという。見た目は全くそう見えない。星形やツリーの形の飾りがあり華やかだからだろうか。
ケーキも特製の甘味を使ったティラミスだった。
「あんたがダイエット中だしね。今年のディナーは特別にしてみたわ」
「見えないなあ。どれも美味しそう」
母と父の声を聞きながら、何だか目の奥が痛い。母がわざわざ自分の為に工夫した料理を作って貰ったと思うと、泣きそうなる。
「別にあんたがどんなにデブでブスと言われても、私にとっては一番可愛い子よ」
「そうだ。世界一の美人だ」
二人の優しい声を聞きながら、涙が我慢できない。テーブル上にポタポタと雫が落ちる。
SNSで「いいね!」を争う競走、ルッキズムなんてどうでも良くなった。
今日は幸せなクリスマスのディナーを思いっきり楽しみたい。誰が何と言っても、今夜は最高のディナーだ。