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サンタさん、がんばる

 娘からサンタさんへんの手紙をチラッと見る。一応「サンタさんへ」と書いてある。父親の俺が勝手に見てしまうのは、いくら七歳の娘相手でも良くないのでヒヤヒヤする。


 サンタさんへ


 私はおとうとがほしいです。おねがいです。四人かぞくがいいです。麻友


 こまった。頭を抱える。クリスマスまでに弟を生み出すのは、不可能だ。


「おはは、さすがうちの娘!」


 妻は大笑いしていたが、俺は頭を抱えてしまう。この要望をどうやって答えたら良いのだ?


「あの、そろそろ性教育的な事をした方がいいのか?」


 悩みすぎてそんな事を呟いてしまう。


「何言ってるのよ。麻友も冗談で手紙に書いているでしょう」

「っていうか、そろそろ二人目ってありか?」


 妻の表情が曇る。年齢的に難しい話題だった。この件については、二人目はない事を夫婦で決めていたが……。


「まあ、あの子が好きなシルバニアファミリーのグッズ買えば大丈夫よ」

「そうか?」

「ええ」


 という事で妻の指示のもと、シルバニアファミリーのお家や各種小物を買い、クリスマスのラッピングをしてもらい、プレゼントの準備が完了。


 しかし、やっぱり娘の要望を叶えるべきか。そこを悩みぐるぐるしてしまう。クリスマス当日娘に突っ込まれたらどうしよう。娘がガッカリするところは見たくない。我ながら親バカだと思う。


 だからといってクリスマスパーティーを手を抜くわけにはいかない。近所のケーキ屋で一番高いケーキを予約し、朝から妻と一緒にチキンの準備をする。


「ほら、サンタさん。頑張れ!」


 他にも色々とクリスマスパーティーの準備をやらされたが、妻にサンタさんなんて呼ばれると頑張るしかない!


 部屋もクリスマスのオーナメントで飾り付け、リースやツリーが浮かない雰囲気にんった。ケーキも引き取りに行き、チキンも焼き上がり、準備は全て完了。


 こうしてクリスマスパーティーがはじまる。


「わあ、ケーキすごい!」


 娘はこのクリスマスパーティーを喜んでくれたみたいだった。終始笑顔で、妻と一緒に頑張った甲斐がある。もう涙が出そうだ。


 あとは夜、娘が寝静まった時に枕元にプレゼントを置くだけ。


 あの手紙通りのプレゼントを用意してやれなかった事は、悔いが残るが仕方がない。サンタさんは、しがないおじさんだ。安月給のサラリーマンだ。このクリスマスパーティーもちょっと無理した。


 意外な事に、娘は手紙通りのプレゼントでなくても大喜びしていた。シルバニアファミリー効果すごい。一日中これで遊んでいたが、27日の午後、娘からサンタさんに手紙が届いているのに気づく。


 例によってこっそりチラ見する。


 サンタさんへ


 プレゼントありがとう。おとうとじゃなくてもハッピーです。ママとパパといっしょにいられるだけで、とってもハッピーです。麻友


 そんな手紙を送られた日には、俺はどうすれば? 泣くしかないじゃないか。


「あらあら、泣き虫なサンタさんね」


 妻は呆れて、ティッシュを差し出す。涙を堪えるのはどうしてもできそうになかった。


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