26日のクリスマスケーキ
クリスマスは、バイトだった。コンビニでバイトしている為、23日夜ぐらいからずっとケーキを売っていた。
さすがに職場のクリスマスケーキは美味しそうには見えず、スーパーによって半額のケーキを買って家に帰ってきたところだ。
26日の19時過ぎ。
狭いアパートで、缶ビールとともにクリスマスケーキを食べる自分。今年21歳になるが、将来の孤独死などもイメージできてしまう。
半額のケーキは、チョコクリームたっぷり。スポンジはふわふわで味は悪くない。それでも、世間で言うハッピーなクリスマスに憧れもないわけでもない。クリスマスが仕事だったなんて、クリぼっちよりも侘しいかも……。
そんな事を考えながらケーキを食べていると、妹から電話がかかってきた。なぜか妹だけは一家の中で一人だけクリスチャン。毎年教会でクリスマスを過ごしていた。妹によると、12月25日は本当はイエス・キリストの誕生日かどうかも不明だそう。悪魔の誕生日説もあるようだが、「日本人がイエス様に心開いてくれる日だし、フツーに嬉しいよ」などと言っていた。
「姉ちゃん、ハッピークリスマス!」
妹は、自分の今の状況を知っているかのように、明るい声で言っていた。
「いや、もう26日だよ。もうクリスマス終わったし。スーパーもお正月のお餅や福袋ばっかりだった」
「まあ、そう言わずに。イエス様は別に時間に縛られる神様じゃないから、今祝ってもいいんだよ」
「そんなもん?」
「っていうか、クリスチャン的には毎日がクリスマスみたいなもんよ。信じると心の中に神様が住んでるからね」
そんなもんか?
いまいち納得はできないが、妹の明るい声を聞いていたら、日付や時間に気を取られるのもバカバカしくなってきた。妹によると、教会にはまだクリスマスツリーなど飾っているらしい。年明けの公現祭の時までクリマスを祝うのが、普通らしい。
そんな事を聞くと、26日のクリスマスケーキも悪くないかもしれない。値段も半額だったが、味は普通に美味しいし。
「そうだね。ハッピークリスマス!」
「うん、姉ちゃん、ハッピークリスマス!そしてお仕事お疲れ様」
こうして26日に祝うのも、悪くないはずだ。再びフォークを掴み、クリスマスケーキを頬張ったが、さっきより美味しく感じていた。