パッションフラワーのハーブティー
最近寝つきが悪い。やっぱりワンオペ育児には無理があるのか。家電など便利なものは増えたのに、昔より忙しくなっている理由がわからない。
今日は実家の両親がこっちの来ているので、子供の面倒を見てもらい、友達と会い、ゆっくりと過ごす事にした。大学の頃からの友達、玲那オススメのカフェに行く。
ハーブティー専門のカフェだった。アルコール消毒や仕切りもなく、広々と明るいカフェだった。観葉植物も多くあり、居心地よい雰囲気。カウンターの方には、乾燥ハーブがつめられた瓶もならび、全体的に緑が多い。
玲奈と私は窓辺の日当たりの良い席に通された。客は自分達と似たようなアラサーぐらいの女性が多いようだ。
「玲奈は何がおすすめ?」
メニューには、いろいろ書いてあるが、ハーブティーは詳しくない。
「最近不眠なんだよね。やっぱりワンオペ育児大変。イライラして眠れない感じ」
「だよねぇ。まあ、そういう不眠だったらパッションフラワーがいいかも」
「パッションフラワー?」
玲奈によると、自然の精神安定剤と呼ばれているぐらいのハーブティーらしい。不安やイライラ、不眠に効果的とか。
「パッションって情熱?」
英語だとそうだ。だとしたら、落ち着くイメージがないのだが。ラベンダーとかカモミールの方がいいかもしれないとメニューに目を落とす。
「パッションは受難という意味。キリスト教ではイエス・キリストを象徴するハーブらしい。花言葉は聖なる愛。受難も十字架のことね」
「おお、なんかそう言われるとと効果ありそうかも」
偶然にも季節はクリスマスに近い。宗教は苦手だが、イエス・キリスト自体は「聖☆おにいさん」のイメージもあり、悪い印象はない。という事で、パッションフラワーのハーブティーを注文した。あとハーブクッキーやキャロットケーキも。
まあ、味は草っぽい。臭いもそうだ。特に美味しくはなく、即効性もないが、こうしてカフェで玲那に愚痴ってたらスッキリしてきた。
お土産でパッションフラワーのティーバックも買う。
寝る前にも飲んでみる事にした。子供を寝かしつけた後で、イライラと疲労は上限を超えている。
やっぱり味は美味しくはない。でも聖なる愛のハーブティーだと思うと、効果はありそうだ。実際、イライラも緩和されたような。
「おやすみない」
プラシーボ効果かもしれないが、思い込みも時には大事だ。
ハーブティーを飲み終えた後、ベッドに潜り込み、目を閉じた。