ファミレスでクリスマス
今日はカレンダー上、クリスマスイブだ。心なしか駅や道では、カップルと多くすれ違っている気がする……。
俺は婚活中に四十男だ。一応、「出会い」までは行けるのだが、その次は全く進まない。
「つまらない」
「話合わない」
「退屈」
婚活相手には、そんな事を言われた。ファミレスに連れていったのも問題だった気もするが、俺はあそこで食事するのが好きなんだよな。
美味しいものは好きだが、貪欲に店を探すほどグルメではない。気軽にクオリティ高いものが食べられるファミレスは、最高だと思うのが、ネットを見ると婚活でそこに行くのはNGらしかった。
恥ずかしいが俺は恋愛経験はほぼないし、そういう暗黙ルールがわからない。恋愛難しい。わけが分からない。昔のお見合い制度は理にかなっていたと思うのだが、過去に戻りたいとも考えてしまう
まあ、クリスマスにそんな事を考えても仕方ない。今日も開き直ってファミレスで食事しよう。そうしよう。
会社の帰り、家の近所のファミレスにふらっと入る。
クリスマスイブというのが信じれらないほどいつも通りに営業されていた。客も一人で来ているものも多い。リス型の配膳ロボットも走り回っていたが、クリスマスの帽子をかぶっている。クリスマスらしいのは、それぐらいだった。
窓際へ行き、座席を確保する。窓からは街のイルミネーションも見え、そこそこ景観もいい。
さっそくパッチパネルで照り焼きピザ、フレンチフライ、それに食後のパフェも注文する。クーポンの忘れずに使う。クーポンを使うのも婚活では受けないらしいが、全く意味がわからない。
注文して出来上がるまで待つ。
この待つ時間もいいんだよな。ファミレスは遅くも早すぎもしない。牛丼屋は早すぎるので返って申し訳なくもなる。かといって遅すぎる事もない。
クリスマスアドベントカレンダーを使い、待つ時間を楽しむ行事だ。あのカレンダーは職場の女性が使っていたが、今はその気持ちがわかるような。
うん、俺も全く女心がわからないわけじゃないのだ。少しは自信が出てきた。ドリンクバーでフリーの水をもらって飲む。冷たい水で少し頭も冷静になってきた。
クリスマスで一人でファミレスに入るのは、どうかとも思ったが、みな食事に集中し、それぞれの時間を楽しんでいる。意外と老若男女色んな人間がいる。クリスマスのファミレスは、いつもより懐が広く見える。駅や道では何となく感じていた冷たさが、ここには無い気がするな。
そんな事を考えていたら、腹が減る。同時に配膳ロボットが注文した料理を持ってきた。まさにグッドタイミングだ。
そうかタイミングか。今は婚活も上手くいかないが、タイミングの問題もあったかもしれない。
もう少し気長に期待せず婚活も頑張ってみるか。どうせ俺はハイスペ男子でもないんだ。女に理想や期待なんてしないで良いと思うと気が抜けてきた。
テーブルの上は、料理で華やかだ。ピザのチーズの焦げる良い香りも鼻をくすぐってくる。
来年のクリスマスは、目の前にパートナーがいる事を夢見ながらご飯を食べるとするか。夢見るだけは今の俺にも出来る。今は希望を失わない事が一番大切な気がした。