シュトレン警察
毎年、12月ごろに「シュトレン警察」なるものが現れるらしい。
シュトレンは、ドイツのお菓子だ。クリスマス時期にアドベントとして少しずつ食べていく。なので、シュトレンは日持ちするようドライフルーツやナッツを使う。あの表面の大量の砂糖も保存目的という。
その点は、日本のおせち料理と共通点がある。おせち料理も日持ちするよう、甘い味付けが多かったりする。
そしてこのシュトレン警察だ。
シュトレンは、ドイツ語読みだと「シュトーレン」にはならない。「シュトレン」が正解だ。
日本では「シュトーレン」呼びの方が一般的だが、シュトレン警察たちは、この呼び方をするものをSNS上で洗い出し、いちいち注意して回っていた。12月の風物詩といってもいいだろう。
「シュトーレンではなく、シュトレンです!」
朝子もシュトレン警察になり、SNS上で注意して回っていた。現在女子高生の朝子だが、SNSにハマり、その点は廃人状態。SNSの常識=この世の中常識と勘違いしている面もあり、リアル生活で恥をかく事も多い。
「しかし、SNSでシュトレンとか言ってると食べたくなってきたわ」
こんな風に一番SNSの情報に影響されやすい朝子は、さっそく近所のパン屋へ行き、シュトレンを購入する。
真白な砂糖を被ったシュトレンは、雪が降り積もった煙突のような雰囲気だ。
それを真ん中から包丁で切る。シュトレンは真ん中で切る事もSNSで知った。
「うま……」
シュトレンは、想像以上に濃厚だった。ぎっしりとしたナッツやドライフルーツ。そしてほんのりお酒のに風味がするのが美味しい。口の中の水分も消えていくが、シュトレンを食べるのはやめられない。
本当は12月に少しずつ食べるお菓子なのだが。今はまだ12月になったばかり。
シュトレン警察をしている朝子だが、肝心なこの事は違反していた。
どうやら甘いシュトレンの誘惑からは、逃げられられないようだ。
気づくと、シュトレンは半分以上消えてしまっていた。罪深い事をやってしまった。