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クリスマスのオードブル

 十二月二十五日、本当はクリスマスの日。しかし、イブを過ぎたら盛り上がりも欠ける。スーパーなどの商業施設は、正月商品を売っているだろうが、会社の近くの弁当屋はまだクリスマスの飾りを商品に飾っているようだ。


 私はこの弁当屋でオードブルを受け取る。予約していたものだ。今日、会社ではちょっとした打ち上げがある。毎年、休憩室でオードブル料理と酒を楽しむ打ち上げ。


 コロナ渦中は中止されていたので三年ぶりの開催だ。こんな打ち上げは嫌だという社員も一部いるが、毎年の恒例となっていたので、復活する事にした。もちろん自由参加だ。私のいる営業部人間が主な参加者だが、毎年他の部署のものも来て、最終的にはグダグダになる。


 十八時過ぎ、休憩室にテーブルを出し、オードブルや酒を用意する。


 オードブルは、クリスマスのピックやリボンなどの飾りがある。確かに二十五日がイエス・キリストの誕生日というが、なぜかこの日にクリスマスの飾りを見ると、盛り上がらない。もっとも会社でする打ち上げなのでこんなものでいいだろう。


 私も長年この営業部の事務員として働いてきた。もうお局といっていい年齢だ。別に会社は好きではないが愛着はある。今日の打ち上げぐらいは楽しもうか。


 さっそく上司や営業部のメンバーも集まり、打ち上げが始まる。さっそく他部署の人間も乱入し、グダグダし始める。酒も入り、騒がしくなってきたが、食べるのが好きな私はオードブルのエビフライやチキンを皿に盛る。あまり人気が無さそうな漬物やポテトサラダも盛る。こういう箸休めも良いものだ。確かにメインのエビフライやチキンも良いが、それだけだとオードブルではない。


 餃子やエビチリなどの中華ものも入っているのも楽しい。一皿で少しずつ色々と楽しめるのも良い。クリスマスの飾りも何だか今は憎めない。実際、十二月二十五日がクリスマスの日付であるわけだし。


「あの、隣いいですか?」


 食べる事に熱中していたら、隣の椅子に派遣の小倉さんが座る。まだ若い子だが、ちょっと自信がない雰囲気だ。その分、仕事は正確で早くて信頼できる。


「漬物とか美味しいんですか?」

「美味しいよ。オードブルだからね。箸休め的な料理も嬉しい」

「そうですか?」

「ええ。オードブル見てるとどんな料理も必要だって思う。このクリスマスの飾りも可愛いね」


 ちょっと酔っていたのか、私は笑いながらツリーの絵がついた小さな旗を振る。


「そうか。仕事もそうだといいですけど」

「え?」

「私も役に立てているのかなって不安で」


 小倉さんも酒が入っているのか、本音が溢れているようだ。


「そんな事ないよ。いつも助かってる。ありがとう」

「え、本当ですか?」

「ええ。もっと自信もって!」


 私が励ますと、彼女は泣きそうだった。でもすぐ笑顔を見せる。


「私も漬物食べよう」

「うん、箸休めにおススメ!」


 その後、酒が本格的に入り打ち上げはグダグダになってしまったけれど、意外と楽しかった。オードブルの料理も全て空になった。


 空の容器を片付けながら、不要な料理も仕事も無いのかもしれないと思う。


 このクリスマスの飾りもデスクのペン立てにでも飾っておくか。捨てる気分にはなれなかった。

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