不思議なクリスマスカード
転職サイトに登録し、一社だけ応募した。
これでも長い間、家にきもっていた昂にとっては勇気がいる事だった。
子供の頃喘息なり、それがきっかけでいじめられた。
就職してもパワハラのターゲットになり、連日残業続きで心も身体も壊れた。
家に篭り、ネットやゲーム三昧の日々だったが、心は癒されない。
そんな中、近所の教会にだけは行けるようになった。元々子供の頃からクリスチャンだった昂だが、いじめやパワハラで教会に遠ざかっていた。
改めて礼拝堂に出席し始めたら、このままでいるのも違う気がして、ようやく就活を始めた。
そんな昂だったが、SNS上で同じクリスチャンと交流するのが苦になってきた。
最初は楽しく語りあっていたが、なぜか突然暴言や神学論争に巻き込まれる。
今もちらっとSNSを覗くと、「クリスマスを祝うべきか?」というトピックで内輪で言い争いをしていた。
せっかく動き出した昂だったが、躓きそうになっていた。
そんな時。
クリスマスも近づくある日。家のポストにカードが入っているのに気づいた。
クリスマスカードらしい。ツリーのイラストが描かれていたが、魚、パン、オリーブの実、ワインなどがオーナメントだった。妙なオーナメントだが、どれも聖書と関係の深いものだ。
「恐れるな。わたしはあなたとともにいる。たじろぐな。わたしがあなたの神だから。わたしはあなたを強め、あなたを助け、わたしの義の右の手で、あなたを守る」
しかも聖書の御言葉も書いてある。イザヤ書の言葉だ。
キリスト教関連のカードだろうが、誰か送ったか書いていない。
教会の人に聞いても、心当たりが無いという。カードのデザインも独特で、誰も見たことが無いという。文房具マニアの人もいたので聞いてみたが、市販されているものでは心当たりが無いらしい。
「これ、もしかしたら神様からのクリスマスカードじゃない?」
牧師はそんな事を言っていた。
まさか。そんな訳ない。かと言って誰が送ってきたのかもわからない。
「そうか、そうだな……」
誰が送ってきたかは不明だが、イタズラや嫌がらせのような悪意は無い。むしろ、自分を励ましているものだと感じる。
「そうか、うん……」
この不思議なクリスマスカードを見つめながら、もう少し頑張ってみようと思う。
大丈夫。
最初の一歩は踏み出せたじゃないか。
それに神様がいる。そう信じてる。