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BELIEVE

 英語の時間、先生がBelieveとBelieve inの違いについて説明していた。


 Believeは、その人の発言などを信じてるという意味。


 Believe in は、その人の能力など全て丸ごと信じているという意味になるらしい。


「私はサンタクロースを信じてますって言いたい場合は、Believe inを使った方がいいでしょう」


 そんな先生の言葉を聞きながら、私もサンタクロースを信じている事を思い出す。


 今は中学生だが、ずっと信じていた。実際、小学二年の時、サンタさんに会った事があった。家に来て母と三人でクリスマスパーティーを祝った。


 プレゼントだって貰った。


 小さな手鏡だった。淵には綺麗なビーズがはまってり。見ているだけで美人さんになれそうな鏡だった。


「え、本当?」


 そんな事を親友の美優に告白した。放課後の教室、他に誰もいなかったので。


「そうか……」

「証拠もあるよ。これが私が貰ったサンタさんからのプレゼント」


 私は美優にあの手鏡を見せる。


「外国人だった。日本語もあんまり話せなかったけど、本物だと思う」

「うーん、そうか……」


 美優は考え込んでしまったが、特に否定はしなかった。


「私の家って貧乏じゃん? シンママ一家じゃん? だからサンタが来たって思うんだけど、どう?」

「絢香のパパの可能性はないの?」

「うちのパパなんてずっと前に死んでるし」

「そうか……」


 これ以上、美優は何も言わなかった。自分でも変な事を言っているのは、知っている。頭おかしい。お花畑と思う。


 でもあのサンタさんが来たパーティーを思い出すと、全て嘘とも思えない。母に聞いても「本当にサンタさんが来てくれた」と喜んでいたし……。


 そして今年もクリスマスがやってきた。


 私はクリスマスのケーキを焼こうと思い、キッチンの戸棚で型を探していたが。


「うん?  何これ?」


 ケーキの型には、チラシが詰まっていた。中を開くと、代行サービスのチラシだった。家事代行だけでなく、母親代行、父親代行、友達代行、恋人代行まである。


「ああ、ママはこのサービスを呼んでサンタを呼んだのか……。イベントでサンタクロース代行出来るって書いてある……」


 謎は全て解けた。あの手鏡も母からのプレゼントだったのだろう。


 我ながら中学生までよく信じてこれたと苦笑してしまう。


 だからといってこの事で誰も傷付いてはいない。


 もしかしたら、サンタそのものではなく幸せな時間があった事を信じていたと気づく。


 そんな時間だったら、私も作る事が出来るだろう。サンタは魔法でも奇跡的でも無いのかもしれない。誰もがサンタさんになれる?


「さあ、ケーキつくるか」


 私はエプロンをつけ、手を洗う。とびっきり美味しいクリスマスケーキを作ろう。


 今日のクリスマスも幸せな時期になる。そう信じてる。


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