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大切なお皿

 ガシャーン。


 皿洗い中、妻の大切なお皿を割ってしまった。


「ああ、しまった……」


 俺は冷や汗をかきながら、砕けた皿を片付ける。この皿は妻がお気に入りのものだった。パン屋のノベルティで貰ったものだが、デザインが可愛い。丸い皿の淵にクリスマスリースを模したイラストが描いてあるのだが、食パンやコッペパン、ドーナツが飾られていて可愛いデザイン。パンのリースといった感じか。


 クリスマスではない時期も気に入り、妻はこの皿を普段使いしていた。


 幸い、今は妻は親戚の用事があると実家方面の帰っていた。


 帰ってくるのは、十二月二十三日の予定だ。その間に同じものか、似たようなものを探すしかないだろう。


 別に妻は鬼嫁ではないが、まあ、俺は頭が上がらない。家事はもちろん、家計の管理、町内会の行事、それの俺の実家の面倒も見てくれている。


 結婚して三年。まだ子供はいないが、妻には弱い。同じ皿か似たようなものを探したい。


 クリスマスも近い。このクリスマスデザインの皿を割ってしまった事は、さらに罪悪感が……。


 まず、フリマアプリを見てみたが、同じものは見つけられなかった。全部ソールドアウト。


 ネットで検索すると、ノベルティとはいえ、かなり人気があるようだった。マニアのサイトも発見してしまい、冷や汗が流れる。


 俺は男だ。こんな皿にこだわる事は、正直意味がわからないが、妻が大切にしていたもの。自分も大切にしたいものだ。


 ネットショッピングサイトも色々見てみたが、似たようなデザインの皿は見つからなかった。


 結局、ネット上では同じものを探す事ができず、ショッピングモールへ行って似たようなものを探す事にした。それにクリスマスプレゼントも買おう。妻は電気毛布とヘアアイロンが欲しいと言っていたので、まずは電気屋に行ってそれを買う。


 その後に雑貨屋に行き、同じような皿がないか探す。


 何件か雑貨屋やキッチン関連の店を巡ってみたが、本当に似たようなものが見つからない。


 それでもリースがデザインされた皿は何種かあり、全て買って帰った。埋め合わせにはならないと分かってはいたが……。


 そして十二月二十三日の夜。妻が親戚の家から帰ってきたので、正直に皿を割ってしまった事を話し、代わりの皿とクリスマスプレゼントを渡す。


「なんだ、そんな事」


 意外にも妻は、全く怒っていなかった。


「いつになく真剣な顔して謝ってくるから、浮気でもしたにかと思った」

「え、浮気!? そんな事しない。疑うなんてショック」

「私も案外、疑り深かったね。これでお互い様?」


 という事で笑顔で仲直りした。


 クリスマスイブは夫婦水入らずでパーティーを開く。


 あの皿もさっそく使う事になった。チーズやクラッカー、パスタ、唐揚げ、サラダ、シュトレン、ケーキなどを乗せ、すっかりテーブルの上は華やかだ。


「来年も一緒にクリスマス過ごそうね」

「当たり前だ」


 約束もする。


 あのお皿はもう無くなってしまったが、本当に大切なものは全く変わらずにある。


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