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待ち望む日々

 私にとってお兄ちゃんは、スーパーヒーローだ。なんでも出来る。イケメン。頭いい。背が高い。スポーツ万能。優しい。モテる。


 モテるのは、妹としてはちょっと嫉妬してしまうけれど。


 そんなお兄ちゃんとは歳が離れている。だから余計にお兄ちゃんがかっこよく見えてしまうのかもしれない。


 お兄ちゃんは高校生だけど、アメリカに留学している。向こうも英語がペラペラで活躍していると聞くが、私は寂しい。


 やっぱり家にいて欲しいと思うけど、お兄ちゃんも勉強があるから仕方ない。


 それに今年はクリスマスイブの日に帰ってきてくれる。


 それがすごい楽しみ!


 カレンダーを見ながら、ウズウズしちゃう。まだ十二月三日なのに、焦ったくて仕方ない。


「ママ、もう待つの飽きた。早くお兄ちゃんが帰ってきて欲しい」


 あまりにも時間の進みが遅く感じ、ママに文句も言ってしまう。


「はは、真美はお兄ちゃんのこと大好きだからね」

「うん。だから時計の進みが遅くてイライラする!」


 私は子供みたいに頬を膨らませる。実際、少学生だから子供だが。


「でも、待つ時間を楽しんでみない?」


 ママは紙袋から、カレンダーのようなものを取り出す。


 いや、カレンダーではなくクリスマスデザインの薄い箱?


 表面にカレンダーのように数字が書いてあったか、そう見えてしまったようだ。サンタやトナカイ、ツリーのイラストも描いてあるが、この薄っぺらい箱にカレンダーのような日付書いてあるのが謎だ。


「これがアドベントカレンダーというの。一日ずつ、この箱を開ける」


 ママはそう言ってカレンダーのように数字が書いてある場所、十二月三日のところを開く。よく見るとミシン目があり、開けられるようになっていた。


 中には小さなキャンディーが一個入っていた。


「毎日一個ずつ開けていくのね。こんな風に中にお菓子が入ってる。クリスマスまで楽しみじゃない?」

「そう?」


 私はそのキャンディーを貰い、口の中に入れながら考える。焦ったいカレンダーだ。今日にも全部開けて中身のお菓子も食べてしまいたい。


「それはダメ。一日一回だけ」

「えー、焦ったい!」


 私はジタバタと子供のように暴れたくなったが、このアドベントカレンダーというのも、面白いかも?


 少し考えを変えてみる。


 とりあえず、ママの言う通りに数日続けてみた。


 いろんなお菓子が入っていて、毎朝開けるのが、ワクワクしてきた。今日はヌガーというちょっと珍しいお菓子が入っていた。こんな風にワクワクするのは、一日一回だけというルールがあるからかもしれない。


 それにこのアドベントカレンダーを見る度にお兄ちゃんの事を考える。クリスマスはショッピングモールに行って、カフェにも行って、パーティーして……などと想像していると楽しくなってきた。


 こんな日々も悪くない。


 思えば今の時間は早すぎるんだ。ネットショッピング、ハンバーガーや牛丼、コンビニのレジも待たずにすぐに欲しいものが得られる。


 それは便利だが、待つ時間を楽しむ余裕も無くなっていたのかも?


 今年のクリスマスは、待つ時日々を楽しんでもいいのかもしれないと気づく。


 確かに焦ったい。イライラする事もあるが、こんな日々もワクワクしている。待つ時間も楽しもう。

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