浮かびながらの会話
フヨッフヨッフヨッ『ジャリッジャリッジャリッ』「ポタッ、ポタタッ」
『見えて来ました令嬢。前方の城館に子爵閣下は御住まいになられていられます』
ロートリンゲン公国…、ロレーヌ公国の最北端にある御領地を御治めになられていられます子爵閣下の城館が見えて来ましたので、北に位置するエルザス伯国…、アルザス伯国から来られた私と同じ金髪と瑠璃之青の瞳をされている令嬢に御教えしますと。
フヨッフヨッフヨッ『道案内をして頂きまして、心底よりの御礼を申し上げますわ。魔法使い殿♪』
笑顔でお礼を言われた令嬢に対して、私も笑みを浮かべまして。
『御気になさらずに令嬢。依頼主でもある子爵閣下に御報告申し上げる為に、城館には戻る必要がありますから』
フヨッフヨッフヨッ『ジャリッジャリッジャリッ』「ポタッ、ポタタッ」
魔法使いである私と女魔法使いでもある令嬢は、根元魔法の飛翔で浮かびながら移動をしています。褐色の侍女であるマリーは、主と同じ高さに浮かんで移動するのは畏れ多いと言うので徒歩で移動をしています。
フヨッフヨッフヨッ『ジャリッジャリッジャリッ』「ポタッ、ポタタッ」
『御領主であらせられる子爵閣下から、盗賊団の討伐依頼を受けた後に、家臣の騎士殿に水辺まで道案内をして頂きました』
ロレーヌ公国の北側に位置するアルザス伯国から来られた令嬢は、私の説明に御頷きになられまして。
『魔法使い殿はわたくしの事を淑女では無く令嬢と呼び慣わさられていられますから、東側を流れる国際河川でもある大河の対岸に位置する帝国の御出身のようですわね♪』
ロレーヌ公国とアルザス伯国では、令嬢の事は淑女と呼び慣わすのでした。
『失礼をいたしました。淑女』
御辞儀を行い謝意を表した私に対して、淑女は可愛らしい笑顔を見せられまして。
『お気になさらずに。魔法使い殿♪』
男性の体面を潰す事無く優雅に間違いを指摘して修正するように誘導される淑女は、かなり高貴な御生まれであるのは間違い無いようです。