奥深い森の中にある拠点
『ガサッガサッガサッ』
『おっ、水汲みが終わったか。ご苦労さん』
『おっ、おうっ。明日からは男の俺達が水汲みせずとも済むかもな』
『どういう意味だ?』
ふむ。これは道案内が無いと見付けるのが難しい、奥深い森の中にある盗賊団の拠点ですね。
『て、手土産があるぜ』
もう少し自然体で演技をして欲しいのですが、難しいようです。
『ヒューーーッ♪』『金髪の別嬪さんに淑女だぜ♪』『俺は褐色の侍女が良いな♪』
根元魔法の命令魔法により、私の指示に背いたら人間の脳が感じる事が出来る最大の激痛を味わう制約を課した、水汲みに来ていた髭面の無法者に命じて、奥深い森の中にある盗賊団の拠点まで道案内をさせましたが…。
『金髪の別嬪さんとは、私の事でしょうか?』
女魔法使いでもある淑女が優雅に笑いを堪えている気配を背後に感じながら確認をしますと。盗賊団の一員でもある無法者達は全員が頷きまして。
『おう。その通りだぜ。金髪の別嬪さん♪』『もう一人の淑女とは姉妹かな?。金髪と瑠璃之青の瞳が同じだからな』
…盗賊団の全員に性別を誤認されているようです。
『お、お頭の姿が見えないな?』
命令魔法で制約を課している髭面の無法者が、お世辞にも上手とはいえない演技で盗賊団の首魁の所在を尋ねましたが。私達に意識が向いている拠点にいた他の盗賊団の輩は違和感を抱いた様子は無く。
『ああ、お頭なら昨日の夜に街道に襲撃に出掛けた連中が戻らないから、様子を見に行ってるぜ』
『獲物が見付からずに粘っているのかもな』
ふむ。昨夜に貴婦人が乗車をしていた馬車を襲撃して、私に根元魔法の重力制御で地を這う地虫のように圧し潰された輩も、同じ盗賊団に所属をしていたようです。