月明かりの下で夜空の空中散歩を楽しんでいた時に
『シュタッ』『衝撃波』『ブオッ』『『ぎゃあっ!』』
『なっ、なんだっ!』
『魔法障壁展開。春の穏やかな陽気に誘われまして、根元魔法の飛翔により夜空の空中散歩を楽しんでいましたが。下の方から盗賊団による下卑た』
『ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ』『カキンッ、カキンッ、カキンッ』
ふむ。ある程度は実戦慣れをしている盗賊団のようです。衝撃波により吹き飛ばされても直ぐに立ち直り、私が話しをしている最中に矢を放って来ました。
『魔法障壁は肉眼では見えない不可視の障壁を術者の周囲に展開をする根元魔法です。盗賊団が使用する弓から放たれる矢程度では、貫通するのは不可能ですよ』
穏やかな春の陽気に誘われまして、月明かりの下での夜空の空中散歩を楽しんでいましたが。下の方から街道を移動中の馬車を取り囲み下卑た声で脅しを掛けている盗賊団による言葉が聞こえましたので、せっかくの良い気分が害されたので地上に降りて殲滅をする事にしました。
『金髪の女魔法使いかっ!』
『死之舞踏』『バアンッ』『ドサッ』『『ひいっ!』』
即死魔法の死之舞踏が命中した盗賊団の一人が倒れますと、他の輩が情け無い悲鳴を上げましたので。
『金髪までは正しいですが、私は男性の魔法使いです。金髪に瑠璃之青の瞳をしている中性的な容姿をしているのは自覚をしていますけれど、夜空の空中散歩を邪魔されて気分が害されている所に、性別を間違われると更に不愉快に感じます』
『わ、悪かった。金髪の魔法使いさんよ』
『き、気分を害するつもりは…』
『重力制御』ガクンッ『バタンッ。ミシッミシッミシッ』『ぎゃあっ!』『なっ、何をしやがるっ!』『ミシッミシッミシッ』『ぐへっ!』『がはっ!』
圧し潰されて息絶えつつある盗賊団を、私は瑠璃之青の瞳で冷ややかに見下ろしながら。
『革靴の靴底により踏み潰された地を這う地虫のように、様々な体液を一面に撒き散らしながら息絶えるのが、私の気分を害した盗賊団の末路には相応しいですよ』
根元魔法の重力制御により盗賊団を圧し潰して殲滅を完了した事により、夜空の空中散歩を邪魔されて害された気分が少しだけ良くなりました。
『さて、空中散歩に戻るとしましょう』
夜空に輝く月を見上げまして、再び根元魔法の飛翔を唱えようとしますと。
『カチャッ』
『お待ち頂けるかしら、若き金髪の魔法使い殿』
盗賊団に取り囲まれていた馬車の扉が開きまして、三十歳くらいだと思われる上品な御夫人が優雅な発音で声を掛けて来られました。
『何か御用でしょうか御夫人?。私は素敵な夜空の空中散歩に戻りたいのですが』
馬車の周囲に散乱している盗賊団の死体と体液が通行の邪魔だと抗議をされるのでしたら、根元魔法の原子核崩壊で全部消し去るべきかも知れません?。
『先ずは助けて頂いたお礼を申し上げますわ、若き金髪の魔法使い殿。緊急の要件でしたので護衛兵の手配が出来ずに、盗賊団が放った矢により射殺されてそこで倒れ伏している御者しか伴う事が出来ませんでしたわ』
御夫人の視線の先には、首を矢で射抜かれている御者と思われる男性の死体が転がっていました。
『もしも新たな御者を探していられるのでしたら申し訳ありません御夫人。私は馬術に関しては素人でして、馬車の手綱捌きに関しても技能を有しておりません』
話しを切り上げて夜空の空中散歩に戻ろうとしている私の事を、三十歳くらいだと思われる御夫人は月明かりの下で優雅な笑みを御浮かべになられながら御覧になられまして。
『もし宜しければ、若き金髪の魔法使い殿が御幾つか教えて頂けるかしら?』
ふむ?。まあ、年齢を教えても問題は無いかと思われます。
『十四歳です。御夫人』
私の年齢を聞かれた御夫人は、満足気な笑みを浮かべられますと。
『お互いにとって特になるご提案がありますわ。若き金髪の魔法使い殿』