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恋愛アプリを使ってみたら幼馴染と両想いになれました  作者: 釧路太郎
恋愛コミュニケーション
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第四話

「朝の公園なら大丈夫だって言ったのはお前なのになんで来ないわけ?」

「私は一言もお前らに会いに行くなんて言ってないんだけど、お前らの中では勝手に私が行くことになってたってだけの話だろ。私が朝からお前らに会いに行って何の得があるって言うんだよ。どうせ、奥谷と仲良くするなとかそういう話がしたいだけなんだろうけど、私は最初から奥谷に対して恋愛感情なんか持ってないし、小さい時から一緒にいるから家族とか兄妹としか見えてないんだよ。いい加減説明するのもうざいから少しは理解しろよな。そんなんだからお前らは勉強も出来ないで男ばっか追っかけてんだろ」


 私は山口がなんでそんな事を言うのかなって思って見ていたんだけど、山口の目の前に立っていた亜紀ちゃんがいきなり山口の顔をひっぱたいていた。クラス中の視線が集まっていただけだったら良かったのだけれど、運が悪く亜紀ちゃんが山口をひっぱたいたタイミングで担任の早坂先生が教室に入ってきたのだった。


「ちょっと、西森さんやめなさい。何があったかわからないけれど、暴力は良くないわ。みんなも早く席について。誰か、この状況を説明出来る人はいますか?」


 山口が悪いので亜紀ちゃんが叩いたのは正当な理由がある。なんてことは言える状況じゃないし、二人が言い合いをしていたのはクラスのみんなも見ていた事なんだよね。山口は亜紀ちゃんたちの事を悪く言い過ぎたってのは私も思うんだけど、暴力は良くないってのは誰でもわかるよね。この状況で亜紀ちゃんを守るためには何が一番正解なんだろう。どうにかして早坂先生を納得させるようなことを言わないと、先生の目の前で暴力を振るった亜紀ちゃんが停学になってしまうかもしれない。


「誰もこの状況を説明出来る人はいないんですか。何があったかはわかりませんが、どんな理由があっても暴力はいけないことだと思います。このままでは理由もわからずに西森さんに対して何らかの処分を下さないといけないことになるのですが、先生も人間ですので理由によっては他の先生たちに対する報告も変わってくると思います。もう一度聞きますが、何があったか説明出来る人はいないんですか?」


 元々は亜紀ちゃんたちが山口と喧嘩をするために人気のない場所に呼び出そうとしてたんだけど、それを察知していたのか来なかった山口に言い寄ったら言葉で反撃されて手が出てました。なんて言えないよね。それにさ、他のクラスメイト達は二人が口喧嘩をして負けそうになったから亜紀ちゃんが手を出したんだって思ってそうだし、そんな事を言ったら亜紀ちゃんの処分が重くなっちゃうかもしれないんだもんな。自分の一言でクラスメイトがいなくなっちゃうかもしれないって思うと、何も言えないってのは当然だと思うんだよ。私だって亜紀ちゃんを守りたいって思うんだけど、あんなことを平気で言う山口は私が何を言ってもそれを否定してしまうんじゃないかって思うと迂闊なことは言えないよね。


「あの、先生は誤解しているみたいなんですけど、西森さんが私を叩いたのは私には見えないけど西森さんには見える悪魔みたいなのが私に憑いててそれを祓うためだって言ってました。私はそれを信じていなかったけど西森さんに叩かれてから頭痛と肩凝りが治ったような気がしています。私も先生も見えないかもしれませんが、西森さんはそういうのが見える人らしいです。そんなの子供っぽいなとか漫画みたいだなって思ってたんですけど、西森さんにお祓いしてもらったら体調も良くなってきたし、今日は一日頑張って勉強できそうな気がしてきました。先生も西森さんに見てもらったらどうですか?」

「ちょっと山口さん。あなたはいったい何を言っているのかしら。廊下まで二人が言い争っている声が聞こえてきていたんだけど、それはいったい何だったっていうの?」

「私もよくわからないんですが、言い争う事で西森さんの霊的な力を高めているそうです。お互いに全力でぶつかることによって霊的な波動を強くすることが出来て、それが最高潮になった時に一気に相手にエネルギーをぶつけることで効果が最大限に発揮されるって聞いてました」

「先生には理解できないんだけど、それは本当なの?」

「本当ですよ。叩かれた私が言うんだから間違いありません。もしも、私が西森さんにいじめられていて日常的に暴力を振るわれていたのだとしたら学校に来ていないと思いますし、とてもじゃないと同じクラスで授業なんて受けていられないと思います。私には霊的な力は無いですけど、西森さんはそんな素晴らしい力を持っている素敵な女性なんですよ。私は叩かれたことは何とも思ってないですから、先生もあんまり気にしないでくださいね」

「西森さん。山口さんが言っていることは本当なの?」


 山口が亜紀ちゃんを助けてくれるとは思っていなかったけれど、山口の説明は無理がありすぎるんじゃないだろうか。こんなんで言いくるめられるとは思わないんだけど、クラスのアホな男子たちは山口の説明を真に受けて信じているようだった。亜紀ちゃんは山口の説明を顔を下に向けて聞いていたんだけど、髪の隙間から見えるその顔は真っ赤になっていた。

 早坂先生は山口の説明に納得はしていなかったようだったが、生徒指導の先生を交えた面談でも同じことを言っていたらしく、先生方は誰も納得はしなかったものの当事者の山口が亜紀ちゃんが行ったことは暴力ではないという説明を終始行っていたことで亜紀ちゃんは停学などにはならず、今週一週間学校敷地内のゴミ拾いをするという処分が下されたのだった。

 私達もボランティアとしてゴミ拾いを手伝うことにしたのだけれど、クラスの男子が亜紀ちゃんに向かって能力を使って欲しいと言って顔を叩かせているのはいったい何なんだろうと考えさせられるものになった。


 そして、山口もゴミ拾いに参加していたのは山口なりの罪滅ぼしのつもりだったのだろうか。山口が先生たちに説明したことは何故か学校中に知れ渡っており、亜紀ちゃんはこの学校で一番有名なんじゃないかと思えるくらい目立っていたのだった。

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