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プロローグ
プロローグ
それは差し詰め“死”の投影だった。
ヒトが線香花火に魅入るのは、その小さな炎に自己を投影してしまうからだという。
色鮮やかに花ひらくが、しだいにしぼみ……最後には落ちてしまう。
その刹那に自分自身の人生を重ね合わせてしまうのだ。
悲鳴。
嗚咽。
叫喚。
全ての音が癇に障る。
――五月蝿い。
まるで頭の中で蓮華院誕生寺の大梵鐘を打ち付けられているような気分だ。
――五月蝿い。
止めなければいけない。
一刻も早くこの音を消さなければならない。
どうすればいい?
どうすれば聴こえなくなる?
吐きそうだ。
胃液すら出し尽くしたというのに。
耳を塞ごうか?
……意味はない。
聴こえなくなるほど遠くに行こうか?
……それは選べない選択だ。
ならばどうすればいい?
……決まっている。
――音の原因を壊してしまえばいい。
じゅっ、と音がして、光が失われた気がした。