ブレイバーベイビー&ゴンゾウのGOGOGO
本作に登場する人名や地名などはフィクションです。
午前6時、太陽に照らされたマッハ漁漁号と書かれた漁船が太平洋を漂う。乗組員はゴンゾウ、メクル、偽メラオ、ジョンジロウの四名だ。
青い海と青い空の中で青い玉のように輝くのは、地球から異星へと転写された人の心を持ったスライムのゴンゾウ。
腰から爪先までゴンゾウを装備し、まるで上半身は人間で下半身はスライムの半人半スライムのような赤子の名はメクル・ブバベビ。
生後1か月のメクルは出会い頭にテイムしたゴンゾウを装備して以来、まわりの大人たちが脱がすことを頑として拒絶し続け、いつも半人半スライムのように過ごしている。
(俺の運は尽きたようだ)
「ぶぅばぁ。ぶぅぅぅ。」
メクルは便意を催したようで少し震えている。
(ウンチか。運が尽きた代わりに、ウンチが付きまとってくるのは等価交換だろうか)
時には歩行器として、時にはオムツとしての日々を送るゴンゾウであった。
スライムは許容できる容積なら何でも体内へ取り込むことが出来る生き物で、身体の中で栄養素と栄養素以外を仕分けすることで、あらゆる物から栄養を摂取することが可能。
(チョコのように美味しいのが屈辱的だな。)
「ふふふ。ゴンゾ、よく食べて大きくなりなさい」
(アリー、役割交換しよう)
ボブカットにメガネの、肉体仕事は不慣れな感じのメクルの父メラオに化けているのは、マザースライムのアリー。投網を片付けながらゴンゾウとメクルの様子を見ている
「いやぁ、メラオ君、すまないねぇ、こんな時に手伝ってもらって」
白髪頭で褐色肌の、いかにも海人といった感じの筋骨隆々とした男性はジョンジロウ。メクルの祖父でありメラオの義父。
「いいんですよ。海に出られてメクルもゴンゾも喜んでいます」
「いつもなら、ルミネが手伝ってくれているけど・・・」
ルミネはメクルの祖母で、普段は夫であるジョンジロウの漁業も手伝っている。
「ぼんじゅーる、ジョンジロウ。クルミよ」
会話の途中、船内のAIスピーカーがルミネの声で鳴り響く。
「おっと、ビデオ通信を受信しているようだ。クルミか。オーケーぼんじゅーる、受信してくれ」
乗組員全員が船内へと入り、通信機能を備えたモニタにクルミとルミネが映し出されていた。ヨウメイ・クリニックと書かれた病院が画面の隅に映っている。
クルミはメクルの母であり、難病を治療するために三千里離れた医療大国アメリガへと渡航した。
「あぁ、クルミがアメリガの病院へ到着したようですね」
全乗組員がクルミとルミネとの会話を楽しむためにモニタ前へ着席した。モニタの最前列にはメクルとゴンゾウが居座っている。
「おはよう。メクル。かわいい、ワタシのチビちゃん」
クルミはメクルを見て嬉しそうな笑顔。
「ぶぅばぁぁ」
メクルも久しぶりの母に喜んでいる。
ゴンゾウにとってクルミは想い焦れていた亡き幼馴染マチコや上司の姫巫女を彷彿とさせられる存在であり、無事を確認すると安堵した。
スピーカーから戦闘機の爆音が鳴り響く。
「あいやぁ。戦闘機がうるさいねぇ。せっかくクルミとメクルちゃんが話しているのに。」
ほどなく爆音は遠ざかり、ルミネが文句を言っている。
「まぁ、いいさぁ。アメリガの魚は美味しいかね?」
「ジョンジィ。あんた、アメリガは牛肉が名物だよ。魚料理は見ていないさぁ」
「ルミネ、牛ばかり食べていたら角が生えるんじゃないか」
「あんた、魚ばかり食べているのにウロコが生えていないでしょ」
ルミネと鄭次郎が夫婦の他愛もない話が長引きそうな時、戦闘機の爆音が鳴り響く。
「こちらも戦闘機が飛んでいますね」
「メラオさん、メクルは変わりないかしら?」
「ぶぅばぁ、ぶぅばぁ」
メクルはゴンゾウを太鼓のように叩いて感触を楽しんでいる。
(おい、こら、やめろメクル)
「ふふふ。ゴンゾ、メクルをヨロシク・・・」
クルミが何か言いかけた途端、通信障害が起きた様子。
「あいやぁ。どうしたかねぇ」
「ぶぅぅばぁ。」
メクルがモニタを叩く。
(昭和時代のテレビでもあるまいし叩いて直らないだろう)
モニタを守るために遠ざかろうとするゴンゾウだが、メクルはモニタから手を放さない。
「やめなさい、メクル。それでは直らない」
(そうだぞ。爺さんの言う通りだ)
「斜め45度で叩かないとダメだよ」
(爺さん、ちがう)
「ぶぅぅ。」
叩き始めるメクルを止めるゴンゾウ。
(こら、やめろ)
「こうですか」
アリーが手刀で斜め45度で叩くとモニタは何も言わない屍のようになった。
「ぶぁぁぁぁぁ」
泣きわめくメクルに三名が狼狽えていると外から声がする。
ゴンゾウたちがマッハ漁漁丸のデッキへ出ると上空に300インチほどの大型スクリーンが投影されていた。
スクリーンにはレオタードに身を包んだセイレーンたちが映し出される。セイレーンは上半身が羽の生えた人間のようで、腰から下が魚のような種族。
「人々よ。深く美しき海王リヴァルフ様が怒り嘆いておられる」
しっかり者の長女セイコと書かれた字幕が流れる。セイコはウェーブのかかった長髪で黒縁眼鏡に黒レオタードを身に着けたセイレーン。
「仮想現実への逃避などという愚かなる文明を放棄せよ。さすれば命は許そう」
おてんばな次女レイチェルと書かれた字幕が流れる。レイチェルはウェーブのかかった短髪でヒョウ柄レオタードを身に着けたセイレーン。
「抵抗は無駄である。圧倒的なる我ら海王軍の粛正を見るが良い」
甘えん坊の三女イレーヌと書かれた字幕が流れる。イレーヌはストレートな長髪でピンク色のレオタードを身に着けたセイレーン。
「抵抗など無駄であることを我ら三姉妹が実況中継してやろう」
三姉妹が口を揃えて言った。
美人セイレーン三姉妹が海王軍の凄みを教えちゃうぞという字幕とともに、この放送は海王軍放送局が全世界の人間どもへお送りしますという字幕が流れる。
「おじいはセイコが良いなぁ」
ジョンジロウは三姉妹を嬉しそうに見つめて微笑んでいる。
「ボクには分かりません」
(この非常事態にこのオジイは。この三姉妹で推しを決めるとしたら・・・)
「ぶばぁぁぁ」
メクルは泣きながらゴンゾウの頭を平手で連打する。
(やめろ、メクル。考えがまとまらない)
突如、スクリーンに爆音とともに現れた戦闘機が三姉妹を機関銃で撃ち尽くす様子が流される。
「あぁ、セイコ、セイコ、セイコがぁぁぁ」
叫ぶジョンジロウ。
霧散した三姉妹が早戻ししたかのように元の姿に戻って現れた。
「さて、我ら海王軍は全員が幽体機能強化型生物。いわば幽物である。」
復活したセイコが威風堂々と言う。
生物は魂と幽体、肉体の三要素によって成り立つ。
魂は感情や意思など心を司り、幽体や肉体といった体の司令塔のような役割を果たす。魂が無ければ幽体と肉体は自律的に動くことが出来ず、ただ条件反射によって動く生ける屍と化す。魂は体を得ることで生物としての活動を営むことが出来る。
幽体は精神エネルギーによって構築された体であり、魂を留める器としての機能や、記憶の保存、魂からの指令にもとづいた肉体の操作、肉体が得た感覚を魂へと伝える役割などを果たす。強い幽体があれば自らの肉体を100%以上操作することや、周囲の物質やエネルギーなどを操ることも可能である。幽体は魔法や超能力といった物理を超えた力の源。幽体は霧散しやすい性質があり、肉体なしに単体で存在することは困難であり稀である。
肉体は酸素や炭素、水素、水分、カルシウム等といった物質によって構築されており、肉体だけでは単なる物質であるものの、生命活動には非常に重要な要素である。肉体は幽体を保護する器であり、多くの生物は肉体という器が無ければ幽体が霧散して死に至る。肉体による感覚や習慣、機能は時として幽体を伝わって魂へ影響を及ぼす。
「おぉぉぉ。いいぞぉ。セイコちゃぁぁん。カメラ、もっとアングルを下から撮れぇぇ」
ジョンジロウはセイコが蘇って嬉しそうに叫んでいる。
(いやいやいや、ジョンジロウよ、何を期待している)
(仕方ないわねぇ。お爺ちゃんは)
アリーは呆れながら念話でゴンゾウへ話しかける。
念話は幽体から発受信される精神波を利用した通話方法であり音は出ない。
「洋服が乱れるから、戦闘機は処刑。」
イレーヌが両手の人差し指を戦闘機へ向けると風の弾丸が現れ、戦闘機の両翼が根本から貫かれた。
墜落していくと同時にコクピットから噴出されて脱出したパイロットはパラシュートで落下しつつ機関銃を乱射するものの、被弾した肉体を修復していく三姉妹。
「優秀な兵隊さんねぇ。けど、見ての通り物理攻撃は無駄よ、無駄よ、まるで無駄よぉぉぉ」
セイレーン三姉妹は幽体によって自らの肉体を一定の形に保つ能力、いわゆる肉体再生能力を有している。
「戦闘機すら歯牙にもかけず葬る私たちですら序列9億位ていどなの」
「さらに、このとおり肉体が大きく損傷しても即座に復元可能よ」
「はい、デモンストレーションは御仕舞い。縛っておくわ。ヘアバインド」
セイコの髪で縛られたパイロットはタンポポのように大人しく落ちていく。
「どうやら、人間に対して抵抗は無駄と言いたいようですね」
冷静に分析しているアリーは静かに呟く。
「おぉ。そうだねぇ。セイコちゃんに抵抗する気はないさぁ。おじぃを優しく縛ってくれぇ」
セイコに夢中なジョンジロウは激しく叫ぶ。
(まったく面倒な連中だ。)
ゴンゾウは襲撃してきた海王軍もジョンジロウも面倒だと思っていた。
「我ら9億9千体の海王軍が貴様らの腐敗した文明機器を破壊するところを見るが良い」
場面が切り替わる。海上で大勢のダツが整列しているようだ。
「さて、ローレンダッツ特攻隊長。今日はどのような作戦でしょうか~。」
イレーヌが上目遣いで巨大なダツに甘えるような口調でインタビューしている。
(魚類とどうなりたいのだ、イレーヌ)
「ぎょぎょぎょ。あの通信アンテナに向かって突進だぎょ。イレーヌたん、この後の予定は・・・」
「なるほど。張り切って突進しましょう」
さばさばした感じのレイチェルの周りが魚でデコレーションされる。
(意味不明)
「なんで鯖かねぇ。」
(さすがジョンジロウ。鯖でサバサバね。はいはい)
「ぷっふぅ。鯖でサバサバって。ふふふ。」
アリーよ、笑いのツボが分からない。
「ぶぁぁ」
メクルがゴンゾウを引っ張って出来立ての餅のように伸ばす。
(あう、引っ張るのはヤメロ。早く行きたいって?まずは情報を得たい)
「ぷぅぅぅ」
不満そうに頬袋を膨らませるメクル。
スクリーンには通信アンテナや通信基地へ向かって突進する無数のダツたちの様子が流れる。
通信基地の場所や地方の情報が字幕で表示されている。
(いや、名産品とか表示する意味あるのか、海王軍よ)
「どうやら通信障害はこいつらの仕業ですね」
「おぉ、大変なことになっているぞ」
人々が混乱して逃げまどう様子が流れされていて、あわただしく発信した車がアイスクリームをもった少年を引こうとした瞬間、回転して飛んできた巨大なカメが車を潰した。
「あ、あぁぁ。あり、ありがとう。」
少年は無事だがアイスクリームを落としてしまった。
「礼なら要らないかめ。おや、アイスクリームが。」
「だ、だ、だ、だいじょうぶ。」
狼狽しながら取り繕う少年。
「代わりにコレとアイスクリームと交換するがイイかめ。」
子供を引こうとした車のタイヤを剥がして子供に渡す巨大カメ。
運転手が逃げた瞬間、爆発する車。
「あ、あ、あ・・・。」
絶句している少年。
「どうでしょう。この感動的なシーンは。」
セイコ、さすがに無理があるだろう。
「さすがジャイアンタートル。」
レイチェルが無理を押し通す。
「さすがじゃい。」
イレーヌがダメ押し。
(このマッチポンプ感はなんだろう。騙されるヤツはいないよな)
「おぉぉ。さすがじゃい。男気あふれる亀じゃのぉ。」
ジョンジロウがジャイアンタートルを褒めたたえる。
(だ、ダメだ。このオジイ)
海王軍によって世界中の通信機器類が破壊されて、インターネットはもとより、航空交通、軍事など多くの機能が損なわれた。
まるでインターネットの代わりにと言わんばかりに世界中の空へ大型スクリーンが現れて、人類の軍隊と海洋生物の如き海王軍との戦いが映し出されている。
銃弾やミサイルを受けた途端に再生しては嘲笑う海王軍。
さらに、海王軍は人類が誇る近代兵器を破壊した挙句、長年の訓練によって鍛え上げてきたであろう軍人たちを気絶させて子犬か子猫でも抱きかかえるように優しく収容所へと運んでいった様子が繰り返し放送されている。
最後に多言語で抵抗しても無駄だというメッセージが伝えられた。
(それにしても仮想現実の何が気に障ったというのだろうか)
「ぶぅばぁぁぁぁぁぁ」
(う、うぉぉ。メクル、そこは海だ。やめろ)
母を心配に思ったメクルはアメリガへと向かおうと必死で這いずり、船を転覆させるほどの勢いで駄々をこねていた。
「ぶぅばぁ、ぶぅばぁ」
(こ、こいつ。俺の身体を気合でコントロールして暴れている)
テイムされているゴンゾウはメクルに逆らえない。
「こ、このままでは船が壊れちゃうさぁ」
「メクル、ゴンゾ。アメリガに行くから落ち着いて」
「行く、行く、行っちゃうさぁ。勘弁して、メクルちゃん」
必死でメクルを宥めるジョンジロウ。
「ぶぅぅ」
マッハ漁漁丸が遠く三千里東のアメリガへと舵を切るとメクルは落ち着きを取り戻す。
(結局、アメリガへ向かう羽目になってしまったか)
溜息をつくゴンゾウ。
(まぁ、通信障害が起きている以上、飛行機は飛ばないでしょうね。ドンマイ)
励ますアリー。
(他に移動手段が無い事は無いのだが、よりトラブルが起きそうだ)
「メクルちゃんはお母さん想いの良い子さぁ。可愛いねぇ」
ジョンジロウは頬ずりしようと近づいてくるがメクルの掌底で突き放される。
「あいやぁ。お爺の身体に負担をかけないために頬ずりさせないのかねぇ」
少しでも前向きになろうと現実逃避したいジョンジロウ。
「いや、お義父さんがタバコ臭いから近づけたくないみたいですよ」
アリーは残酷な現実を突きつけた。
「メクルちゃぁぁぁん」
(真実は残酷だ)
クルミに会うため、高速漁船マッハ漁漁丸で一行がアメリガへと突き進む。
(まぁ、少人数の方が海王軍に見つからないだろう。もしも見つかったとしても戦闘の意思を示さなければ戦わずに済むはずだ)
「ところで、不思議な雲が付いてくるさぁ。風向きから、反対方向へ行くはずだが」
ジョンジロウがそう言って空の雲を見ていると、ゴンゾウは不吉なものを感じた。
「だぁぁぁ。」
メクルが前を見て叫ぶ。
眼前の海上から黒雲の塊と見紛う魔物の大群が向かってくる。
(どうして、こんな小さな船に海王軍の大群が)
ゴンゾウは困惑していた。
「このまま進むなら交戦の意思ありとして容赦しないぞ。引き返せ。」
海王軍の巨大なサメがボリューム大でマッハ漁漁丸に向かって話しかけてくる。
「くっ。メクルが危ないさぁ。大漁のチャンスやしが引き返すしかないかぁ」
ジョンジロウは撤退を表明。
「まぁ、何とかなるでしょう」
アリーは余裕の発言。
「ぶばぁぁぁ」
メクルはサメに拳を向けている。
(投降しよう。おい、メクル、ファイティングポーズをやめろ)
乗組員の意見は割れていた。
(仕方ない。引き返してドンブリカン城に頼るか・・・)
ゴンゾウがアリーへ話しかける。
(あら、ドンブリカン城なら付いてきているわよ)
まるで気づいていなかったのかと言わんばかりにアリーが応答する。
(えぇ?)
雲の中からドンブリカン島が垣間見えてくるとともに、一人の女がマッハ漁漁丸へと飛び降りてくる。
「はっはっは。我ら六華仙が付いてきて正解だったな。時空無限の仙女クレオ見参!」
空から舞い降りてきたクレオが得意げに叫ぶとともに、マッハ漁漁丸の船頭で仁王立ちしている。クレオは黒いストレートの長髪でヨーヨーをもったセーラー服姿の仙女。
「きゃぁぁぁ。きゃっきゃ」
クレオの様子を見て喜ぶメクル。
ドンブリカン島は丼の形状をした3,141haの面積に高さ3,000mの飛空島であり、中心にそびえ立つ空き缶のような建物はドンブリカン城。
「あいやぁ。ら、ら、らぴゅた」
ジョンジロウだけが驚愕している。
ドンブリカン島の底からクレーンゲームのアームのようなものが出てきて収納されるマッハ漁漁号。
「な、なに?巨大UFOか?」
ジョンジロウが困惑する中、ドンブリカン島の内部へと強制的に収容されていくマッハ漁漁号。
「海王軍が暴れているから、ボクらはゴンゾウたちを護送しようと駆けつけたのさ。雷電細工の仙女、トリーヌの名に懸けて、お爺ちゃんは城内で守ってあげるよ」
格納庫には、白衣に黒タイツとメガネを装備した金髪の仙女トリーヌがジョイスティックのコントローラーを片手に座っていた。
「はい、ゴンゾたちは戦斗雲に乗ってアメリガへ向かって」
トリーヌは6畳程度の雲へゴンゾウたちを乗せる。
「あ、お義父さんは残ってください」
アリーがジョンジロウを指先で突きながら突き放す。
「わ、ワシも・・・ぐぅ」
(何をした?)
(体内で生成した眠り薬を投与しただけよ)
アリーは体内に収納した物質を合成するスキルを持つスライムだ。
「海王軍にはお構いなく最短でアメリガへ向かうことを優先としながら安全性を確保する動きをする人工知能付きだよ」
トリーヌから、ガンガンいこうぜ、けど、命大事に、みたいなことを言われた気がしてゴンゾウは困惑した。
(どうやら俺たちはアメリガへ向かうこと決定らしい)
(最初からアメリガへ向かう予定だったから、いいじゃない。それよりもジョンジロウは寝ているから声を出していいのよ)
アリーは人の大きさほどのマザースライムの姿に戻っていた。
「拙者とクレオが同行するでござる」
マサミが戦斗雲へ乗り込む。マサミは灰色の長い髪をポニーテールの、着物姿にサラシを巻いて帯刀している仙女。
「そ、そうか。なら、穏便に行こう」
仙女を宥めるゴンゾウ。
戦斗雲で出発するメクルとゴンゾウ、アリー、クレオ、マサミ。
まるで戦斗雲へ付いて行くように、ドンブリカン島から数百万のグリフォンやキメラといった飛行系幽物の軍勢が舞い降りてきて海王軍へと向かっていく。
「さぁ、ゴンゾウ殿につづけ!」
ひときわ大きいグリフォンが叫ぶ。
「おぉ!」
「いやいやいや、穏便に」
「だぁぁ、ぶぁぁぁ」
ゴンゾウ以外は昂っている。
数の上では立ちはだかる海王軍と互角になった六華仙たち。
「んなぁぁぁっはっは。変幻自在の仙女ニャテップ見参だにゃ」
海入道のように巨大になった桃色ナース姿の仙女ニャテップが海王軍を投げ飛ばし、鯛やヒラメのような海軍兵たちが舞い散っている。ニャテップは桃色の髪の毛に猫耳が生えた仙女。
「爆裂炸裂モーレツ!灼熱爆炎の仙女セキコ見参」
爆炎とともに現れて投げ飛ばされた海王軍たちを炎に包むのは、赤髪を炎のようになびかせたライダースーツ姿の仙女セキコ。
(なんてことしやがる。もはや宣戦布告じゃないか)
嘆くゴンゾウを後目に戦る気満々な六華仙の軍勢。
「オラ、クワクワすっぞ」
タンクトップ姿の農業女子系仙女のアグリが鍬で海を耕し始めると、サメよりも大きい食虫植物の群れが現れて海の魔物たちを襲う。
「面白いしゃー。リヴァルフ様の腹心たる我ら大海将率いる精鋭部隊が殲滅するしゃー」
巨大なサメの幽物たる第三大海将メガシャークは数千の牙を機関銃のように撃ち放つ。
「行く手を遮るものは私たちが引き受けてやろう!さぁ、海王を倒しなさい」
クレオはヨーヨーでメガシャークの牙を迎撃し、殴りかかった。
「ぐぁぁっしゃー」
「わかれろ、戦斗雲」
マサミが戦斗雲に指示すると四つに分裂してクレオ、マサミ、メクル&ゴンゾウ、アリーは別々になった。
メクル&ゴンゾウの戦斗雲は真っ直ぐアメリガへと向かう進路をとった。
「よし、さっさと向かうぞ」
「ぶぅばぁ。」
周りでは前を除いて海王軍と六華仙の軍勢が激しい戦いを繰り広げている。
「この先は通さなイカ。」
「我らの王には辿り着けないタコ。」
第一大海将タコングと第二大海将イカテリーナが現れた。
タコングは巨大なタコの幽物であり、八本の触手で剣、斧、槍、大錘、分銅鎖、鎖鎌、チャクラム、ブーメランを持っている。
イカテリーナは巨大なイカの幽物であり、十本の触手が大砲のようになっている。
「ここは任せて。」
アリーがメラオからマザースライムの姿へと変化していた。
「き、きさま。まさか深淵の女王じゃなイカ。」
「ど、どうしてココにいるタコ?」
イカとタコが驚いている様子。
「あなたたち、第一海将と第二海将ね。相手に不足はないわ」
「拙者も助太刀いたす」
アリーとマサミがタコングとイカテリーナへと立ち向かい、その隙をかいくぐってメクル&ゴンゾウは突き進む。
(まさか、ラスボスが近いのか)
ゴンゾウが予感したとおり、まるで空母のように巨大でエメラルドグリーンに輝く双三角錐の物体が現れた。
書きたい構想はあるので、推敲しながら遅筆ながらも進めていきます。
未完ながらもブバベビボという作品を本作にて書き直したいと思います。