第一話 俺はオタクを隠し通す。
中学1年生のころ親友だった彼のこと思い出す。
九月の始め、夏の終わりを感じさせる今日この頃、学校内カースト制度の頂点に立つ俺は、小学校からの親友にこう告げた。
俺実は、オタクなんだ。
ずっと仲良かった悪友。沢山の思い出全てが崩れ去ったその日、親友は冷たい目で。
「お前そっち系か。モヤっぽいわ…」
彼が残した最後の言葉。それ以来、彼とは一言も喋っていない。
頂点にいたはずの自分は、奈落の底へと落ちていった。
それからというもの、仲良かったグループからは離れられ、自然と友達が減っていき。
女の子から後ろ指で指され最悪だった。サッカー部だったというだけで、オタク系グループからも嫌われており、(以前は気にしていなかったが)誰の仲間にも入れなくなった。
もう誰も信じない。信じられない。そのまま俺の中学校生活は終わった。
やっぱりオタクは悪いことなのか?俺の趣味を受け入れてくれると思ったのに。
中学校卒業と同時に俺は決めた。
俺は!オタクを障害隠し通す!!
そして四月、俺は高校一年生になった。
中学校で同じだった奴らとは、一切関わりがなくなった俺は誰も知らない遠くの町へと引っ越した。
元々海外で仕事をしている両親からは、一切何も言われることもなく了承を得ることができた。
これで平穏な日々が送れると思っていたんだが…
「オラ!起きろカケル!なんだこれ?またこんなものに抱き着いて。お前キメーな。早く彼女を作ってママさん達を安心させてやれ」
「ちょ、お前!勝手に部屋に入るな!!」
「また、こんなものに無駄遣いしてさぁ。何?二次元がそんなに好きなのか?触れねーぞ?」
うりうりと布団で抱き枕に抱き着いている俺に、足蹴してくる。茶髪の女の子。あ、ちょっと気持ちいじゃなかった…
まあ自己紹介をすると。
俺、桑名翔15歳。小中サッカー部所属。趣味。アニメ、ラノベ、ゲーム。グッズ購入。
足蹴してくる女(ちょっと気持ちいい)桑名空15歳。俺の従妹。趣味。ショッピング、可愛いもの集め、化粧、テニス。以上。
もともと俺と空一家はだいぶ離れた所に住んでいた。
俺が一人暮らしをするという情報を聞いて、こいつの両親が経営しているアパートの一室を貸してくれるという提案に俺は乗り引っ越しを決めたのもある。
それはありがたいことであり感謝するべきなのだが、こいつも隣の部屋を借り一人暮らしを始めたのだ。
「私がこいつの面倒を見る。」と同じ学校にまで進学してきやがって…
空は俺からみても可愛い。学校でも人気者だ。多少ギャルっぽくてあれだが、話しやすいし、料理もそこそこできるし。誰に対しても公平に接する。
だから俺がオタクだとばれた時も、余り興味がなさげだった。
そう現在、空だけがオタクだと知っている。因みに両親も俺が隠れオタクだということを知らない。
隠してくれるだけ、ありがたい存在かもしれないのだが…
「アンタさぁ。ガチで卒業しなよ。そこまでして、そのオタクをやめないの?」
「うるせーな。どんな趣味を持ってようが勝手だろ!ほっとけよ。大体いいだろ!学校では切り替えてるんだからさぁ!」
「…だからこの金髪は辞めれないわけ?顔もそこそこいいのに、ホント翔ママが可哀そうだよ」
「どっちも大事なんだ。俺には学校での位置もオタクでいることも…」
空は俺を呆れた顔で見つめる。
そしてため息をついた。
「あっそー。まあどうでもいいけど。遅刻するよ?」
「遅刻したほうが、かっこいいだろ。」
「お前は高校生か!!」
「高校生だ!!着替えるからとにかく出てってくれ!」
「はいはいよー。私は先に言ってるからね。」
空が俺の部屋を出ていく、俺は鏡を見る。
どっちも俺なんだ。絶対に隠し通すんだ。オタクをやめることもない!そして…
俺はスイッチを切り替える。
だらしなく制服を着こなし、髪をセットする。完璧だ。誰もオタクだと思わない。そして絶対に今日もバレることはない!!
こうして俺の一日が始まる。
そう、俺の二重生活のまた幕開けだ。
どうしても空に対して強く当たってしまうことを俺は何気に罪悪感を感じていた。
テーブルの上にはトーストに目玉焼き、そしてサラダ。
面倒見がとてもいいあいつは、ここまでしてくれる。
「…唯一俺が素でいられる奴なのかな」
ポツリと俺は呟いた。
俺の二つの側面をどちらも受け入れてくれる存在。
この世には一人もいない、やっぱりあいつは良い奴なのかもな。少し態度を改めようか…前言撤回俺はやっぱりやめた。
トーストをひっくり返すと器用にジャムでキモオタと書いてあった。
俺はバター派だって言ったのに!!
いや違う違う。許さねえ!!
学校に間に合うよう俺は、素早く飯を食べ家を出た。
実際にあったりなかったり?
大体どの程度書けばいいのかわからないところです。
試行錯誤中です。