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5.違いとやり直し

あれからしばらく質問攻めにあっていたが担任のシェライラが戻ってきたことで皆落ち着きを取り戻しそれぞれ席に戻っていった。


「皆さん、ユーリ様と仲を深められたようで安心しました。今日はこれで終わりましょうか。」


「え?」


「吃驚した?」


「「「「「魔王様!?」」」」


「魔王…?」


「僕の可愛いユーリ。迎えに来たよ。」


「早くない?てか本当にこれで学校終わり?授業とか…。」


「授業は明日、明後日の休日を挟んだ次の週から始まりますよ。今日はユーリ様とクラスメイトとの交流が目的でしたから。」


「それだけで終わっていいんだ…。」


「あぁそういうことね。ユーリは人間界が長いからそう感じるんだよ。彼らの一生は短い。それゆえに時間に追われて生活しているけど、僕らの生きる時間はとても長いから授業が始まっても1日一科目を1時間。それで毎日終わりだよ。」


「すご…。」


「それに授業の進み方もゆっくりだからね。心配しなくてもユーリなら問題なくできるよ。」


「そうだぜ!わからないことあったらララが教えるし。」


「私でお役に立てるならぜひ!」


「ほら、ユーリの心配していたこと何も問題ないだろう?」


「それは…そうだけど。」


「何か心配事があったのか?」


「ふふ。ユーリは君たちに人間とのハーフであることを受け入れて貰えないんじゃないかってそれを心配していたんだよ。」


「そんな心配は無用よ。私は見ての通り魔族と天界族との混じり者。でも偏見や迫害に会ったことないわ。」


「アイーシャさんは私たちにとって大切なクラスメイトであり大切なお友達です。外見や種族で偏見を持つなんてことは大罪ですから。」


「大罪…。」


真っすぐ過ぎるほどの言葉が痛く心に刺さった。

世界はこんなにも違うのか。

魔界なんて漫画で描かれる想像だけの世界だと思っていたが、目の前にあるのが現実。

それは今まで自分が生活していた汚れた世界とは比べものにならないほどキラキラして見えた。

今なら人間が一番醜い生き物だと言われている理由が理解できる。

誰かを蹴落として自分の身を守る。

そしてその中で生き残った者と、這い上がれたものだけが幸せを掴む。

俺はそのどちらにも属しては居なかったが、常に他人からの評価を気にしていたのは確かだ。

それが自分も迫害される対象になるんじゃないかと心配事が口からこぼれた原因だろう。

自分勝手でなんと醜い感情だろう。

俺はこんなにも弱かったのだろうか。

強い口調や言葉を使っていても内面は脆いなんてかっこ悪すぎるだろ。

この出来事は自分の持つ感情の醜さや脆さに大分落ち込んだ。


「…リ。ユーリ!」


「…。」


「ユーリ。どうしたの?」


「…いや、別に。」


「そう。詳しくは城に戻ってから聞くとしようかな。これからもユーリと仲良くしてくれると嬉しいな。」


ユグニートは彼らを見てにっこりと笑みを浮かべるとそれに反応するようにしっかりと頷く姿が見えた。

それと同時に景色は変わり、魔界に来て初めて見たベッドのある部屋へと移動している。

無言で立っているユーリに何を思ったのか。

いきなり抱き上げそのままベッドへ座り毛布で包んでいく。


「さあパパに話してごらん。」


「…別に話なんてない。」


「嘘はダメだよ~。ユーリの感情が揺れてるのをとても感じる。」


「…。」


「ちなみに魔王は読心術も出来るんだよ?」


「え?」


「まだ読んでないけど、自分から話してくれないならパパはユーリの感情を占めるそれを知らないと心配で何も手につかないから…。」


「わ、わかった。だから読むのは…。」


「うん、ほら話してごらん。」


優しい声色で促すユグニートにぽつりぽつりと自分の感じたことを話し出したユーリ。

それに対してただ頷く彼の腕はしっかりと包み込んでいる。


「ただ、それだけ。」


「ユーリ、ごめんね。パパはユーリにそんな辛い感情を持たせるために人間界に送り出したわけじゃないんだ。ただ、ママの世界に触れてほしいとそう願ってた。でも、あの頃とは変わってしまったんだね。パパは取り返しがつかないことを…。ユーリの可愛い幼少期を間近で見ることも出来ず辛い思いを抱かすことしかない世界に最愛の息子を託すなんて…。そうだ!時間を巻き戻そう。そうすれば全て丸く収まる。」


「いや!収まらないから!」


「じゃあ記憶を消す?」


「何もしなくていい。」


「?」


「別にあんたが悪いなんて思ってない。俺自身の問題だ。」


「ん?何言ってるのかな。ユーリの問題=パパの問題だよ。ユーリが幸福感だけで生きていけるようにするのが僕の務めであり父親としての責務だ。」


「それは行きすぎだろ。」


「そんなことないよ。ユーリは何もできなくていい。何もしなくていい。パパが全ての悪を排除して幸せを与えるんだから。」


「…ほんと過保護。」


「知らなかったの?パパは超が付くほど過保護だよ。だからユーリはもう一度卵から生まれてきてね。」


「…ちょっ!」


彼の言葉を止めようとしたのと同時に目の前が急に真っ暗になっていく。

卵からやり直すって冗談だよな?

自分が卵から生まれたってことすらまだ信じられないのにやり直すってなんなんだよ。

動くことのできない不快感を感じながらなんとかしてこの状況から脱出しようと抵抗を試みるのだった。

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