悪夢
息苦しい。
ここはどこだ?
おれはどこにいるんだ?
「教えてやろうか」
ふとおれの横で声がして、とっさに振り向く
「なんだよ。」
俺が振り向いた先には得体の知れない化け物がいた。
俺は、恐怖から暗闇の中を懸命に駆け回った。必死に必死に。
しかし、化け物は俺の真後ろにびっしりとつけてくる。その間も化け物は俺に話しかける。
「ここはどこだと思う?」
「し、知らん!」
「じゃあ、なんでこんな場所にいるんだ?」
「し、知らない!俺を元の場所にかえしてくれ!」
その言葉と同時に俺の視界は一層、真っ暗になった。
暗闇に視野が慣れた頃には、俺はさっきいた場所とは全く別の場所に移動していた。
「な、なんなんだよ。一体、だれか!だれかいないのか!!」
耳を澄ましながらも、大声で俺は人を探した。その時、俺は微かだが、助けを求める声を耳にした。
「タ、タスケテ...」
「タ、タスケテ...」
その声は徐々に俺のいる場所に近づいてくる。
「タ、タスケテ...」
「タ、タスケテ!!!」
急激に俺の耳元でその声がした。
俺はとっさに後ろを振り向いた。
そこには、人間のように2足歩行だが、顔は血だらけで腐敗しており、片目は今にも落ちそうになっている。まるでゾンビのようだった。
俺は恐怖のあまりパニックになり、足が勝手にその場を離れようとした。
「ニゲルノネ...」
そりゃ逃げるさ。
だってこんなの悪夢以外の何者でもない怖さだろ。
「ナンデ、タスケテクレナイノ?」
そりゃ俺だって助けたいけど、もうそんな様子じゃ無理だって...
「ナンデヨ。ムカシ、ヤクソクシタノニ、アザゼル...」
「!?」
ふと俺はそのゾンビの口から発せられた言葉によって金縛りにあった。
い、今、アザゼルって...
それに昔した約束って...
「お、お前、リ、リリ...なのか?」
「ソウダヨ。ナンデワカッテクレナカッタノ」
「あ、あ、そんな...」
頭が回らない。あのゾンビがリリ...?
声にならない声や涙とは思えない涙
いろんなものが俺の体から出てくる。
「う、嘘だ。嘘だ。嘘だ嘘だ!!!」
自分の現状が認められず、俺はたまらずリリに背を向けて、闇の先に向かって走り始めた。
「カナシイ」
リリがその一言をつぶやいた後、俺の足は何か異質なものに掴まれた。
足下を見ると、俺の足には無数の黒い手が俺の足に掴まっていた。
そしてその手はとても俺ではふりほどくことができぬほどの力で、俺はその手が引っ張る場所に連れて行かれた。
「やめろ!やめろ!!やめろ!!!」
俺が何を言おうと、その手は俺を引き続け、ついには俺を闇の中にある穴に落とした。
「うわぁ!うわぁーーー!!」
俺が穴に落ちる時、リリは俺を悲しそうな顔をしながらもどこかで何かを期待しているような顔をして、俺を見下していた。
俺は落ち続けながらも微かではあるが、リリが発した言葉を聞き取ることができた。
「これは...あなた...が選ぶ...道の結...果?どういうことだ!教えてくれ!!リリ!!!」
リリは俺の質問には全く答えず、
その間も俺が闇の中に落ちる姿をリリは見下し続ける。
徐々に小さくなるリリを見つめ続け、俺は闇の中に落ちた。
「うわぁ!!!」
俺は起き上がった。
「オウ、ヨウヤクオキタカ。」
「アザゼルやっと起きたー!心配したんだよ!」
「え、俺は一体...それにリリも...」
「私がどうかしたの?」
そう言うリリの姿はゾンビではなく、いつものように憎たらしいほど可愛かった。
「い、いや。大丈夫だ。」
「ズイブンアクムニウナサレテイタヨウダナ。ナニカオモシロイモノハミレタカ?」
「何か面白いもの?」
老いぼれ魔物の言ってることは理解できなかったが、どうやら俺は悪夢から脱出できたらしい。
どうして俺はあんな夢を...
それにリリのあの姿...
気になることだらけではあったが、俺はそんな悪夢のことを考えるのをやめた。