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魔物との対峙①

まただ。また果ててしまった。

そういうアザゼルの股間には白いものがべったりとこべりついていた。

流石のリリも俺の異常事態には気付いただろう。俺はチラとリリを横目で見た。


「はぁ...はぁ...アザ...ゼル,もうダメ。」

なんでこいつはこんなに頬を火照らせてるんだ。

どうやらこいつは俺の股間が残念なことになっているのを気付いてないみたいだ。


それに警備の姿はもうないんだ。

今こそここを出るチャンスだ。

「おい。リリいつまでぼーっとしてんだ。はやく行くぞ。」


ボーっとしたリリを担ぐような形で俺達は小屋を脱出していた。

その時,俺は必死すぎて自分の股間の汚れをふき取ることも忘れていた。

というよりかはリリの前で下半身を裸にするのは恥ずかしすぎたのだ。


しばらくリリを担いで歩いていると,リリもようやく恥ずかしくなったのか,

またさっきまでのようなうるさいリリに戻ってしまった。


まぁ,このぐらいうるさいリリの方が俺は落ち着くんだけどな。

ピクニック気分で俺達は火山の最深部を目指していた。


俺のワイルドセンスは火山の最深部を指しており,

俺達はその感覚に従うようにくだらない話をしながら,歩いていた。


「まったく,何が危険なところだよ。全く,魔物も出てこないじゃないかよ。なぁ,リリ」


「そうだねー。やっぱりみんなが大げさに言ってるだけなのかもねー。」


「全く,大人たちも何のためにそんな嘘をついたんだか,やっぱりここには強い魔物も何もいないんじゃないのかー?」


「イルンダヨ。」

突然の片言に違和感を感じた俺はリリに問う。

「おい,リリ急に片言でしゃべんなよ。」


リリは不思議な顔をして,俺の質問に答えた。

「え,アザゼル何言ってんの?私何も言ってないよ。」


「そんなバカなことあるかよ。お前以外誰が喋るんだよ。」

次は間髪入れずに謎の声が返答した。


「ソイツハチガウナ。」


明らかにさっきとは違う声,これはリリではない。


これは魔物に違いない。

そう悟った俺は,その声の主の魔物がどこいるのかを探ることにした。


俺はワイルドセンスを使い,声の主の居場所の特定を行った。


俺がワイルドセンスに集中している間に,リリも謎の声が聞こえたらしく,一人で大騒ぎをしている。


「集中...集中...」


「ハヤクオレノバショヲサガシテミロ。」


「えー。さっきの声,何!?ねぇ,アザゼルアザゼル!!」

「集中...集中...」


「オレノバショガドコカワカルカナ」


「ねー。アザゼル!無視しないでよ!ねぇってば!!」

「...集中...集中...」


「...オ,オレノバショヲ」


「なんでそんなに無視するのよ。あ,わかったアザゼル私のこと好きなんだ!!」

「...集中...うっせーんだよ!!!」

「...ウッセーンダヨ!!!」


思わずリリのうるささに俺は叫んでしまった。

その時は気付かなかったが,俺は隣にいたやつとリリのうるささを共有していた。


「ちょっとあいつうるさすぎませんか?全然,集中できないんですけど!」

「マッタクダ。アイツノセイデゼンゼンオレヲミツケテクレナイ!!」


隣からほんの少しだけ聞きなれた声,それにこいつなんて言った?

「え,見つけてくれない?...あ!!」


俺が隣にいるやつの正体が魔物だと気づいたのか,そいつは自ら正体を明らかにした。


その魔物の風貌は人というには,不完全で,そして爬虫類と言うには,物足りないものであった。

人と爬虫類のハーフなんて見たことも聞いたこともねぇ。


自分の知らない世界がこの火山にあったことにさっきまでの俺の退屈ムードはなくなっていた。


「イマ,オマエ,オレノフウボウガキニナッテイルダロウ。」

その魔物は俺の心を見透かしたように,一人で話し始めた。


「マァイイ。オレハコノシャンティ・ハリカザンニスムシガナイマモノダ。シュゾクデイウトリュウマゾクニナルダロウ。」


「し,しがない魔物だと...見た目は老いぼれた感じでそれに竜魔族だとかどこからどう見ても実力を隠していて実はとてもつよいとかいう要素を詰め込んでやがる癖によ。」


「オモシロイコトヲイウヤツダ。マァイイ。オマエラハナニヲシニキタ。」


ようやく事態を把握したのかリリが返事をした。

「えーっとね。アザゼルと一緒に遊びに来たの。」

「オマエハイイ。ダマッテロ。テンポガクルウワ。」


見ず知らずの魔物にまで謎の注意をされたのかリリはかなり落ち込んだ様子だ。

「デ,ナニヲシニココニキタ。」


「俺のこのワイルドセンスがこのシャンティ・ハリ火山を指したんだ。つまり,ここにはすごい宝があるんだろ。俺はその宝をもらいにきた。」


その間もその魔物は俺の体を上から下までなめるように観察していた。


そして,二,三度,俺の体を観察した魔物は俺の下半身で目線を止め,

下半身を見ながら話し始めた。



下半身で止まるな。

そこはデリケートゾーンだ...


「ナルホド,ワイルドセンス...ソレニソノカハンシン...フフ、ウンメイトハオモシロイ。」


何が面白いだ。

そんなに思春期の男子の下半身が面白いか。

この外道め。


「イイダロウ。オレトタタカッテ,カッタラ,サイシンブマデノアンナイヲシテヤロウ。」


「え!?」

思わぬ発言に俺は驚きを隠せなかった。

なんせこのしがない老いぼれ魔物を倒せば,俺は最深部に行くことができるのだから。


「おもしれえ。その提案のったぜ。死なないでくれよ。老いぼれよぉ。死んだら何も聞けなくなっちまうからよぉ。」


俺と老いぼれの魔物が対峙し,二人の間には絶妙な空気感が漂っていた。


この静寂を破るのはどちらか...様々な思考が二人の間には駆け巡る。



「ねぇ。私どうすればいいのー。」

その静寂を破ったのはリリだった。


「お前は端っこでのんびりしてろー!!」

自分が役立たずだと思ったのかまたしてもリリはしょぼんとしながら端っこで正座を始めた。


「オマエモタイヘンナヤツヲツレテキタナ。」

「まぁ,俺にとったらこんな火山はピクニック気分よ。楽しませてくれよ。おじいさん。」


「イツマデ,ソノヘラズグチガタタケルカナ!!!!」


先に静寂を破ったのは老いぼれ魔物だった。


次の瞬間,風を切るような速度で老いぼれ魔物は俺の懐に入り込んでいた。




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