指し示す先へ
駆け出しトレジャーハンターの俺は腕っ節には自信があった。
島では有名な怪物や、広大な海をも恐れぬ男だ。
しかし、白い魔物には勝てない。
やつらは俺の懐に入り込み、何かをしていく。
しかし、やつの姿を捉えることはできない。
朝になると犯行現場だけが俺の下着についている。
これは魔物の仕業だろうか。
そうに違いない。
俺はそう決めつけて、ワイルドセンスでその魔物の位置の探索をした。
ビビビと俺のワイルドセンスが激しく反応する。
「こ、これは...」
ワイルドセンスが指し示す方向は、シャンティ・ハリ諸島の名前の由来にもなった大きな火山、シャンティ・ハリ火山のある方向であった。
あそこの火山には大昔に存在したとされる伝説の龍、シャンティ・ハリが封印されている火山だ。
子供の頃から、あそこには近づいては行けないとババアや村の大人には口うるさく言われていた。 それは今でも変わらない。
あそこに入ることができるのは、一流ハンターだけだ。
しかし、そうやって縛られれば縛られるほどやりたくなってしまう。
おそらくそこには俺の想像を絶するような宝があるはずだ。
俺のワイルドセンスがシャンティ・ハリ火山
に行けと言っているんだ。
目の前に宝があって、行かないやつはハンターじゃねぇ!
そう思った俺は、俺を起こしたはずのババアが家にいないことも気にせず、ドアを勢いよく開けて、外に飛び出した。
外に出ると、まだ朝日も出ていない、肌寒い朝方だった。俺はこの時間帯に起きたことを幸運だと思った。
「朝日が出ると、シャンティ・ハリ火山には警備がつくからな。まぁ、ばれない間に早く行っちまうか。」
独り言のように呟く俺にどこからか返事が聞こえた。
「何ぶつぶつ言ってんのよ。アザゼル。」
振り向くとそこには、幼馴染みのリリがいた。
「べ、別になんでもねぇよ。さっさとかえれよ。」
俺は誤魔化すようにそう言った。
「あー。目背けてる。嘘ついたってリリちゃんには全部お見通しだぞー。」
そう言いながらリリは唇と唇が触れ合ってしまいそうなほど顔を近づけた。
「ち、近いって!離れろよ!」
こいつといると調子が狂う。
こいつは俺のことを気にせずに自分のペースで俺を振り回してくる。
「で、どこ行くのよ?こんなに早く起きてさ。あんたが早く起きるなんて冒険以外ないと思うけどね。」
「そうだよ。冒険だよ。冒険...でm」
おれが話し終える前にリリは話し始めた。
「私も行く!」
出たよ。これだこれ。
だから言いたくなかったんだよ。
もうこうなるとリリは折れない。
リリの大きく綺麗な目がピカピカと輝きながら俺を見つめてくる。
「わかったよ。わかった。ついてこいよ。」
俺がそう言うとリリは犬のようにはしゃぎ始めた。
主にリリが一人で話しながら俺たちはシャンティ・ハリ火山へ足を進めた。
「ねぇ。アザゼル。」
「ん?」
「しおり作ってないや。」
遠足じゃねぇんだわ。これ。