表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/11

ゆめのせい

 カツーンカツーン。

 間延びした足音だけが、うるさく響く。それはこの洞窟が深く長いことと、そこに彼しかいないことを意味していた。


 そう、薄暗い洞窟の中にルチル・アザゼルはいた。彼の能力スキル:ワイルドセンスが告げているのだ。この洞窟の最奥部に、宝が眠っていると。


 高鳴る鼓動を、しかしアザゼルは冷静に律した。視界も足場も悪いこの洞窟で、無闇に先へ先へと進むのは自殺行為。急いては事を仕損じる。そんなことは、まだ駆け出しのトレジャーハンターであるアザゼルにもわかっていた。


 慎重に、目を凝らして、手で洞窟内の壁を探りながら、ゆっくりと足を進める。もちろんその両の手は、強度の高い特製の手袋に守られている。アザゼルはまだ幼いが、若さを言い訳にして勢いだけで突っ走るほど馬鹿ではないのだ。


 突然、アザゼルは足を止めた。彼のワイルドセンスが感じ取ったのだ。この洞窟に眠る宝の気配を。それがすぐ近くにあることを。


 ビンビン。

 そしてアザゼルの股間が隆起する。それはまさに破竹の勢い。みるみるうちにアザゼルのそれはそそり立っていく。


 「くっ……感じるぜ!宝の気配をよぉ……!すぐそこに、いやがるな……!」


 アザゼルは、自分が宝の目前まで来ていることを確信した。しかし高揚する気持ちはあくまでも抑えて、先ほどまでと同様にゆっくりと、歩みを進めた。否、アザゼルは急ぎたくても急げなかったのだ。不用意に刺激を与えると、アザゼルのアザゼルが果ててしまいそうだったから。


 「くっ……!」


 アザゼルは喘ぎながらも、ついに宝の居場所を突き止めた。すぐ目の前に見えるその角を曲がれば、そこに宝はある。彼のワイルドセンスがそう告げていたのだ。


 「はぁはぁ……さぁ、観念しなお宝ちゃん!」

 

 アザゼルが洞窟の最奥部に顔を覗かせると、なんとそこにあったのはーー


 「アザゼル!まったくいつまで寝てるんだい」


 ウー婆ちゃんだった。


 「うわああああ!?」


 アザゼルは勢い良く起き上がった。そのせいでベッドが激しく音を立てて軋んだ。彼はしばらく状況が把握できずにいたが、彼の部屋に差し込む爽やかな朝日と、指が通らないほど自分の長髪がボサボサなことを確認したことで、自分が今眠りから覚めたのだということに気づいた。そして先ほどまでの洞窟探検はすべて夢であったということも同時に知った。


 刹那ーーアザゼルには予感が走る。そう、それも嫌な予感が。


 「いや、まさかな……」


 アザゼルは恐る恐る視線を落とし、右手をそこに伸ばした。すると案の定、嫌な感覚がそこにはあった。べたり。下着が張り付いて気持ちが悪い。


 「最悪だ……」


 アザゼルの股間は、ねっとりと湿っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ