ゆめのせい
カツーンカツーン。
間延びした足音だけが、うるさく響く。それはこの洞窟が深く長いことと、そこに彼しかいないことを意味していた。
そう、薄暗い洞窟の中にルチル・アザゼルはいた。彼の能力:ワイルドセンスが告げているのだ。この洞窟の最奥部に、宝が眠っていると。
高鳴る鼓動を、しかしアザゼルは冷静に律した。視界も足場も悪いこの洞窟で、無闇に先へ先へと進むのは自殺行為。急いては事を仕損じる。そんなことは、まだ駆け出しのトレジャーハンターであるアザゼルにもわかっていた。
慎重に、目を凝らして、手で洞窟内の壁を探りながら、ゆっくりと足を進める。もちろんその両の手は、強度の高い特製の手袋に守られている。アザゼルはまだ幼いが、若さを言い訳にして勢いだけで突っ走るほど馬鹿ではないのだ。
突然、アザゼルは足を止めた。彼のワイルドセンスが感じ取ったのだ。この洞窟に眠る宝の気配を。それがすぐ近くにあることを。
ビンビン。
そしてアザゼルの股間が隆起する。それはまさに破竹の勢い。みるみるうちにアザゼルのそれはそそり立っていく。
「くっ……感じるぜ!宝の気配をよぉ……!すぐそこに、いやがるな……!」
アザゼルは、自分が宝の目前まで来ていることを確信した。しかし高揚する気持ちはあくまでも抑えて、先ほどまでと同様にゆっくりと、歩みを進めた。否、アザゼルは急ぎたくても急げなかったのだ。不用意に刺激を与えると、アザゼルのアザゼルが果ててしまいそうだったから。
「くっ……!」
アザゼルは喘ぎながらも、ついに宝の居場所を突き止めた。すぐ目の前に見えるその角を曲がれば、そこに宝はある。彼のワイルドセンスがそう告げていたのだ。
「はぁはぁ……さぁ、観念しなお宝ちゃん!」
アザゼルが洞窟の最奥部に顔を覗かせると、なんとそこにあったのはーー
「アザゼル!まったくいつまで寝てるんだい」
ウー婆ちゃんだった。
「うわああああ!?」
アザゼルは勢い良く起き上がった。そのせいでベッドが激しく音を立てて軋んだ。彼はしばらく状況が把握できずにいたが、彼の部屋に差し込む爽やかな朝日と、指が通らないほど自分の長髪がボサボサなことを確認したことで、自分が今眠りから覚めたのだということに気づいた。そして先ほどまでの洞窟探検はすべて夢であったということも同時に知った。
刹那ーーアザゼルには予感が走る。そう、それも嫌な予感が。
「いや、まさかな……」
アザゼルは恐る恐る視線を落とし、右手をそこに伸ばした。すると案の定、嫌な感覚がそこにはあった。べたり。下着が張り付いて気持ちが悪い。
「最悪だ……」
アザゼルの股間は、ねっとりと湿っていた。