感じたぜ!お宝の気配!
クーックーッ。
一面の青にきめ細やかな光の粒をキラキラと映し出した海の上を、数羽のカモメが飛んでいる。
ぶくぶく。
海面にいくつもの泡が浮かび上がってきた。何かの気配を感じたカモメはその泡立つ海面へと下降するが、すぐさま踵を返した。
ざばあ。
海から顔を出したのは、一人の男だった。
「あんなに潜ったってのに、これっぽちかよ」
不満げにそう漏らした男の右手には、小さなしかし力強く光り輝く宝石が握られていた。
男は海面から顔を出しながら、器用に泳いで陸を目指した。まだ垢抜けないその顔から、海面に張り付くようにしてその特徴的な長髪が後ろに伸びている。
すると間もなく一つの小さな島が見えた。それは、南の海にぽつんと浮かぶシャンティ・ハリ諸島の一つであり、また同時に男の住む島であった。
ざばあ。
男は陸に上がった。そこで先ほどまで海中に隠れていた男の体があらわになる。上裸に短パンというラフな恰好。そして注目すべきは、その少年のような面持ちからは想像できないほどの、アンバランスなまでに鍛え上げられた肉体。その至るところには、きっと消えることのない傷跡が、まるで勲章のようにいくつか刻み込まれていた。
浜辺を歩きながら、再度男は右手にある宝石に視線を落とした。
「まあ確かに、〈ワイルドセンス〉の感度もあんまし良くなかったからな。こんなもんだよな、うん」
男はまるで自分に言い聞かせるようにそう言った。
そのとき、砂浜に描かれた男の足跡の軌跡が突然止まった。
「ぐっ……ああっ!」
男は歩みを止めたその場所で、情けない声を上げた。
「か、感じる……ぜっ……!」
ビンビン。
見ると、男の短パンの股間の辺りが隆起していた。
「こ、こいつは……!?姿が、全貌が見えねえ……!なんてでけえーーいや、でかさなんかじゃねえ。それだけこいつは価値のある宝だってことか……っ!」
苦しそうに悶える男の股間は、ますます盛り上がっていく。そしてとうとう、限界は来た。
「くっ、はぁっ……!」
男はその場に倒れ果てた。男はその場に倒れて、果てた。
「はぁはぁ」と荒い息を吐き出しながら、男は力の入らないその両脚に鞭打って、無理やり体を起こした。
見ると男は笑っていた。これでもかというほど口角を上げて、無邪気に、まるで少年のような笑みを浮かべていた。
「すげえ……ビンビンに感じたぜ!俺の〈ワイルドセンス〉でも、その姿を捉えることすらできねえすげえ宝!だが、その名だけはしかと感じたぜ!」
男は天を見上げ、まるで想い人を想って、恋に焦がれる乙女のように、求めるその宝の名を叫んだ。
「必ず俺が手に入れてやるからな!珍宝!!」
これは、まだ誰も見たことがない伝説の宝〈珍宝〉を探し求めた一人のトレジャハンター〈ルチル・アザゼル〉の冒険譚である。