Third-in the night:セカンド・ジョーカー
さー頑張るぞー。
活動休止してすいませんでした。
ずっと一人だった。だから、何も怖くはなかった。もし死ぬのなら、それは私という存在が失われるだけのことで、もし幸せがあるのなら、何処かに一人で静かに暮らすことだろう。そう思っていたのだ。そう、思っていた。
こんなにも哀しくなるなんて知らなかった。涙を絶えず流しながら、糸が切れた人形のように、彼等のように嗤うことなんてないと思っていた。感情を殺して、玩具を演じて、そうしていつか全てから解放されると考えていた。
それなのに、それなのに、私の心はたった一つの感情で狂ってしまった。
嗚呼、何も残らなかった。あの人にもしもう一度会えたのなら、今度こそ、願おう。
―――どうか、私を殺して下さい。
今日の実験では、結局半数以上が脱落した。何せ空気も有限の密室の中だ。狂った者達は皆一様に酸欠で死亡した。
一体何故このような実験を繰り返すのか。表面上の目的が嘘であることは分かっても、その真の目的だけは分からないままに、それでも此処を消滅、もしくは此処から逃亡。それが正しいことだと信じている。そうして、逃げた先で、新しい生活を始めるのだ。それが、私の求める幸せ。そのためにも今は、考えることを続けなければ。真の目的、管理人の情報、機関を潰す方法。そんな思考の渦に唐突に入り込んだノイズ。
「おー、おー、根詰め過ぎちゃダメだぞ?ちゃんと寝なきゃ」
「!」
完璧に寝たフリをしていた筈なのに。それに、今は見回り時間じゃないのに!男のひょうきんな声が響く。ここまで声が響いていて誰も来ないなら、きっとこの男は管理人に違いない。しかし随分若い声だ、おまけに軽い。
「だんまりかよー、ちょっとは構ってくれよ、せっかく起きてる人見つけたんだし?あ、ひょっとしたら、シャイ?じゃー、まずは自己紹介しなきゃね、先輩として」
「?」
先輩ってどういうこと?そんな疑問は次の言葉の前に消し飛んだ。
「俺、管理番号No.54-JOKER。通称ジョーカー。君と同じ、底辺だよ。あ、ちゃんとキースって名前あるから、そっちで呼んでくれると嬉しいんだけど」
「え?」
あ、ヤバい、声出しちゃった。観念して起き上がる。じょ、ジョーカー?二人目がいるの?
「あー大丈夫、いっくら君と俺とが話しててもわかりっこないよ、あいつ等無能の集まりだからさ。いや、それにしても、女の子だったんだ!今まで男ばっかだったのに今度は女の子、こりゃー本物になるか?」
「一気に話さないで下さい、突っ込みどころしかないので」
「辛辣だなー!」
そういって青髪の、少年?青年?うーん、青年未満だから少年でいいか。青髪の少年はカラカラと笑う。十三歳くらいだろうか。
「そろそろ君の名前も聞きたいな、ほら、どっちもジョーカーだし?」
「……アナ」
「良い名前だね~!」
「そ」
「冷たいなあ。まあ、これ聞いたら驚くと思うなー、何せ機関の実験の本当の目的だよ?」
「え、知っているの!?」
「うん、知ってるよ?話すつもりでもある。だって、俺は君を助けに来たんだから」
ひとまず、話を聞いてみよう。それから考える。それで良い。
―――そして、私は間違い始めた。






