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うさ耳ネコ耳トラ耳


いっけな〜い沈む、沈む!僕、坂上 笑太、どこにでもいるごく普通の17歳!でも、ある日ひょんなことから底なし沼に沈んじゃったの・・・。僕、一体これからどうなっちゃうの〜!?



いや、死ぬだろ。あかん、少女漫画風現実逃避してる場合じゃない。早くなんとかしなきゃ復活初日に死亡とかいう伝説を作ってしまう。



しかも「Sランク冒険者現れる!ただし当日に沼で溺死。」とかこの世界の人に噂されるんだろう。バナナの皮といい勝負の笑い者になりそうだ。



考えろ、どうすれば助かる?指先ぐらいは動くがすでに腕や足は動かない。体の力で無理やり抜けることはできなそうだ。



では、魔法は?ノリで撃てたりするとは書いてあったがどうすればいいかさっぱり分からない。現にさっきも失敗している。



となると残された道は1つ。スキル『ギャグ漫画体質』だけだ。



ギャグ漫画みたいな方法でこの状況を抜け出す。何かないか、何か。ギャグで沼から抜ける。・・・沼?そうだ、沼ってことはつまり水だ。



だったらアレができるんじゃないか?どのみち行動を起こさなければ死ぬだけだ。やってみる価値はある。



水が入り込まないように閉じていた口を開ける。うう、あとでお腹壊したりしないかな。



そんなことを思いながら僕は勢いよく水を飲み込んでいく。



ごくごくっなどという生易しい音ではなくバシュウウウオオオオと掃除機で吸い取るような音が響く。



うげええ、まずい。しかも吐き出すほどまずいってわけじゃなくギリギリ我慢できるレベルのまずさなのが微妙にむかつく。いや、助かるといえば助かるんだけどさ。オラ飲めよって強要されてる感があって嫌だ。




・・・どれくらい飲み込んでいただろうか。沼が干上がりました。てへ。そして代わりに沼に収まっているのは、お腹を沼いっぱいに膨らませた僕。



う、うっぷ。さすがに苦しい。なんとか気合いで沼から這い出て沼にゲェーっと水を吐き戻していく。気分はマーライオンだ。



全ての水を吐き終わると元通りの体型になりスッキリした。ふう、動きやすい。両手を上にあげ、んーっと伸びをする。いやー、なんとかなるもんだ。



ほっとしたところで沼の対面にシアンさんがいることに気づく。あれ、沼まで来ちゃったのか。走り幅跳びの要領で沼をぽーんっと渡りシアンのところへ行く。



「いやー、無事に倒せてよかったです!シアンはさんは怪我とかしてませんか?」



声をかけるもシアンさんは口をあんぐりと開けたまま固まっている。目の前で手のひらを振ってみるが反応がない。



まさか、この世界のヒュドラーはメデューサみたいに石化させる能力でもあったのか?



「シアンさん!大丈夫ですか!」



少し肩を強く揺さぶる。かってに触れるのはどうかと思うが緊急かもしれないので気にしていられない。



「・・・・・・はっ!」



シアンさんが気がついてくれた。よかった、どうやら石化ではないようだ。でもなんで固まってたんだ。



「シアンさん、大丈夫です?意識しっかりしてますか?」



優しく体調を問いかける。



「わ、私はもうだめですう!ヒュドラーがいきなり弾けたと思って駆けよったらショウタさんが見当たらないですし。かと思ったら今度はすごい勢いで沼の水が減りはじめて、中からおっきなお腹のショウタさんが現れるし。挙句の果てには、すぐに元の体型に戻って軽々沼を飛び越えてくるし。きっと私はおかしくなっちゃたんですううう!うわぁぁぁぁぁぁぁん!」



やっべ、これ固まってたの僕のせいじゃん。



「シ、シアンさん!大丈夫です、それは現実ですからシアンさんはおかしくないです。正常ですよ!」



「ほ、本当ですかあ?」



ぷるぷる震えながら涙目で問いかけてくる。



「やっぱ嘘です。」



「や、やっぱり私は壊れちゃったんだああああ!うぇぇぇぇぇぇぇん!」



いかん!涙目のシアンさんがかわいくて、ついイジワルを言ってしまった。



「あー、ごめんなさいシアンさん!からかっただけですって!泣かないでください!」



その後、泣き続けるシアンさんをたっぷり30分なだめることとなった。



「うう、ショウタさんはヒドイですう。イジワルですよう。本当にびっくりしたのにい!」



やっと落ち着いてはくれたが恨みがましい目を僕に向けてくる。まあそんな目をしてもかわいらしいだけなので僕的には嬉しいだけなんですけどね。



「ははは、すいません。お詫びに今日の報酬で、ごはんでもごちそうするので許してくれませんか?」



「・・・むぅ、しょうがないですねえ。ベジベジ亭のにんじんフルコースで許してあげますよう!」



うさ耳がピコピコ動いている。よっぽど好きなんだなにんじん。ていうかこっちにもあるのかにんじん。たくましいな。



「分かりました。明日のお昼はどうですか?」



「明日はお休みなので大丈夫ですう!」



ご飯の約束、ゲットだぜ!ついでに明日は街の案内もしてくれることになった。まだ何も知らないから助かる。そんなふうに会話をしながら僕達はジークの街へと帰っていった。



・・・落っこちていたヒュドラーの首を束ねて引きずりながら。








さすがにヒュドラーの首を9本も引きずって街には入れなかったので街の門のそばに置いておいた。依頼達成の報告ついでにサーシャさんに素材の買取も頼んでおいた。本当に倒しちゃったんですねと驚かれたが、それ以上に無事戻ってきたのを喜ばれてこそばゆかった。



査定に時間がかかるそうなのでまた明後日に来てほしいと言われ、ヒュドラーの討伐報酬だけその場で受け取った。



2000千万ゴルドを渡されたが、どれくらいかの価値か分からなかったので物の値段などを聞いてみたら、だいたい1円=1ゴルドくらいかなーという感じだった。厳密には違うんだろうけど。都合がいいからまあいいや。



落っことしたら怖いので100万ゴルドだけ手元に残しあとはギルドに預けた。その後サーシャさんに宿屋の場所を教えてもらい宿に向かった。



今日は色々あって疲れた。死んで、神様に会って、ドラゴンを倒して、ついでにヒュドラーも狩って。



・・・盛りだくさんすぎるだろう。早くご飯を食べてゆっくりと休みたい。



教えてもらった宿屋に着く。宿屋「ニャンコのおもてなし」と看板が出ている。こ、これはネコ耳ちゃんが出てくるのか?だとしたら癒されそうだ、疲れた俺にはぴったりだ。



期待して扉を開ける。



「いらっしゃいませだにゃ〜。コースはどうするにゃ?」



10歳くらいのちょこんとした女の子がカウンターに立っている。お父さんとお母さんのお手伝いなのかな?ああ、かわええ。癒されるわ〜。思わずほんわかする。



「ええと、今日はじめて宿屋を使うんだ。説明お願いしてもいいかな?」



「はいにゃ!泊まるだけなら1泊3000ゴルドだにゃ。朝、昼、夜のごはんがいるかどうか選べて、1食ならプラス1000ゴルドにゃ。2食と3食はどっちもプラス2000ゴルドだから3食の方がお得だにゃ。お部屋は次の日のお昼までいれるにゃ。」



お昼の約束はしちゃったから、もったいないけど夕ご飯と朝ごはんだけお願いしようかな。



「じゃあ今日の夕飯と明日の朝ごはん付きでお願いするね。」



「分かりましたにゃ。じゃあ5000ゴルドお願いするにゃ。お部屋は2階の1番奥の部屋だにゃ〜。夕ご飯はすぐ食べるかにゃ?」



「うん、すぐ食べようかな。」



お金を渡しながら返事をする。



「じゃあ受付の裏の食堂に行ってくださいにゃ。中でお父さんが料理してるからごはんちょーだいって言えばいいにゃ。」



「ありがとう。じゃあ行ってくるね。」



「バイにゃ〜!」



手を振って送り出してくれる。あ〜、本当癒される。あっちの世界でも猫飼ってればよかったな。



食堂に入ると座席と奥に厨房が見える。お、あそこで鍋を振っている人がお父さんかな。



「すいませ〜ん!ご飯お願いしまーす!」



くるっとこちらを見てくる。



「ん、見ねえ顔だな、新規の客か。ちょっと待ってろ、すぐに作ってやるぜ。てきとうに座ってな。」



悪い人ではなさそうだけど、さっきのネコ耳ちゃんと口調が違いすぎません?ていうか顔が猫じゃなくて虎だ。同じネコ科なら違う種類も生まれたりするのか?・・・ナゾだ。



5分ほどで虎の料理人がご飯を持ってきてくれた。



「ほらよ、オークの野菜炒めだ。初めて見る顔だからトードの唐揚げもオマケしてやるよ。」



皿を置いて厨房へと戻っていった。オークにカエル肉か。・・・食えるかな?いや、沼を飲みほしといて今さら怖気付いてもしょうがない。男は度胸!



「いただきます!」



ぱくり。



「うっま!」



なんだこのオークの肉!めっちゃおいしい!トードの唐揚げも鶏肉より柔らかくてうまい!



お腹も空いていたので一心不乱に食べた。ふー、満足だ。一息ついていると客に食事を出し終わったのか虎のおやっさんがまた歩いてきた。



「おう、いい食いっぷりだったな!うまかったか?」



「はい、すごいおいしかったです!」



「そいつはよかったぜ!」



・・・多分笑っているつもりなんだろうが、虎の顔で微笑まれると凄みがある。



「明日の朝も楽しみにしてますね。」



「おう、期待しとけ!ところでお前、新人冒険者か?」



「はい、田舎から出てきて今日登録しました。ギルドにここを紹介されて、依頼達成してきたお金で泊まりに来たんです。」



「やっぱりか。あそこのギルドマスターとはちょっとした知り合いでな。気を使っているのかしらんがあそこのギルド職員は新人には皆ここを勧めてくんのさ。えこひいきみたいで気が引けるんだがな。」



やれやれと言った感じで告げてくる。ギルマスの知り合いにしては性格が良すぎるぞこの人。



「そんなことないと思いますよ。受け付けの娘さんもいい子ですし、料理もおいしいし、純粋に勧めているんですよきっと。」



「お前、娘のよさが分かるとはいいやつだなあ!そうなんだよ、ミーシャは本当にいい子でなあ!いつも文句も言わずに手伝いをしてくれるんだ。あんなにできた娘は他にいないぜ!・・・よっしゃ、ちょっとミーシャの話を肴に酒でも飲もう!」



そう言って厨房に酒を取りに走っていってしまった!



お、おおう。なんだなんだ。唐突に親バカが発動した。ていうか僕寝たいんだけど・・・。



「おい、新人。おやっさんの前でミーシャちゃんの話は禁句なんだぜ。言ったが最後、日が変わるまでミーシャちゃんの自慢話に付き合わされるんだ。ま、今日は覚悟を決めな。」



隣で食事をしていた冒険者が首を振って諦めなとジェスチャーしながら告げてきた。




すぐにおやっさんがスキップしながら戻ってきた。・・・残業で残されるサラリーマンってこんな気持ちなのかなと思いながら、疲れた体で夜を過ごした。




ギャグ漫画あるある


⑭パクリじゃなくてパロディ(と言うと許される気がする)

⑮飲み食いで異常なほどふくらむお腹

⑯ご都合主義

⑰ちょっとしたことで豹変するキャラクター

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