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選ばれたのは、ヒュドラーでした


お〜いお茶の方が好きです。


野宿 / ヒュドラー



どーちーらーにしーよーうーかーなー、てーんーのかーみーさーまーのいうとーおー・・・・・・



いや、よく考えたら神様ってアレか。言うとおりにしたらろくでもないことになる気がする。この方法はダメだな。



ふむ、野宿はもちろん嫌だ。食べるものもないんだからなおさらだ。けど、ヒュドラーか〜。頭がいっぱいあるヘビみたいなのだよね?うげー、気持ち悪い。


今すぐできそうな依頼がそれしかないって運が悪いな。運もSランクだったのに。後ろに不穏な記号があったような気もするけど。



高ランクってのが裏目に出たなー。もっと低いランクだったらすぐに色々依頼もあっただろうに。どうしたものか。あ!そういえばサーシャさんに登録の時説明がされたじゃないか!



「サーシャさん、たしかパーティーを組めば受けられる依頼ってランクが下の人に合わせたものになるんですよね?」



「あ、はい。そうですね、低ランクの者を難易度の高い依頼に行かせるわけにもいかないので。」



「ということは、今から僕がパーティーを組んで簡単な依頼をこなして帰ってくることもできますよね?」



「あー、えっとそれはちょっと難しいかもです。」



サーシャさんが申し訳なさそうに答えてくる。あれ、これダメだった?



「ショウタ、パーティーとは基本的にはランク差が1つ以内の者と組むことになっている。あまり高ランクのものが低ランク依頼ばかりやっていると、低ランクのものは仕事を奪われ食っていけないからな。」



ギルマスが説明をしてくれた。ああ、それは確かにそうだよな。でも、受付のときはランクが1つ差としか組めないとは聞かなかったけどなぜだろう。サーシャさんのうっかりかな。



「ただ、それは通常の場合で明確にルール化されているわけではないんです。ルールで縛ってしまうと、高ランクの者が新人やランクが上がりたての者に戦闘の指導や戦い慣れるまでの安全のために付いて行くようなことまでできなくなってしまうので。」



サーシャさんが補足で追加してくれた。へー、意外とちゃんと考えられてるんだなー。ギルドマスターはこんなんなのに。



「なるほど、そういう決まりがあるんですね。」



「すいません、本来は登録したての新人はギルドからそのまま高ランク冒険者に紹介して、そこで依頼への同行をお願いするのでこの説明は飛ばしていたんです。ショウタさんのランクが規格外だったので説明の機会がなかったですね。」



「いや、今教えてくれたので大丈夫です。気にしないでください。あ、でもそれだと僕も一応新人なので指導を受けるためにパーティーを組めたりは?」



「アホウ。誰がSランクに戦闘指導できるんだ。それにこちらから募集をかけても畏怖か妬みかされてまず受けてもらえんだろう。Sランクってのはそれぐらい規格外なんだよ。ましてオールSのスーパールーキーとあってはなおさらだ。野宿が嫌ならおとなしくヒュドラを狩ってこい。ドラゴンを余裕で倒せるなら死にはせんだろうからさっさといけ。日が暮れちまうぞ。」



ぐすん。ギルマスが冷たい。優しいギルマスもそれはそれで気持ち悪いからイヤだけど。まあ、どちらにしろお金は必要だから覚悟を決めるか。



「はー分かりましたよ。ヒュドラ討伐を受けます。」



あんまりヘビっぽくないといいなあ。



「では、サーシャ。依頼の詳細をそいつに伝えておいてくれ。俺は仕事に戻る。急にSランクなんかが出てきたせいで上への報告やらで忙しくなりそうだからな。」



ギルマスが手でしっしっと追い払う仕草をする。そ、そんなうざったい虫みたいにしなくてもいいじゃないか!



「ではショウタさん。詳細を説明するので受付の方に戻りましょうか。シアンも行きましょ?」



サーシャさんが歩き始めたので付いて行く。うさ耳ちゃんも付いていくみたいだ。シアンっていうらしい、覚えておこう。そういえばギルマスの名前をまだ聞いてなかったな。まあ、どうせサタンとかそんなんだろうからいいや。



受付に戻って早速ヒュドラーの説明を聞く。



「ヒュドラーというのは、一つの巨大な胴体に九つの蛇のような頭を持ったモンスターです。首を振り回して攻撃してくるのですが、頭が多いので手数が多くてやっかいです。ですが、さらにやっかいなことには、それぞれの頭をつぶしてもすぐに再生してしまうことです。」



「そんな危ないモンスターが街の近くにいるんですか?移動してきたら大変ですよね。」



「本来ならSランクモンスターが近くに出現したら王国の騎士団が討伐に来るレベルの自体ですう!でも、このヒュドラーはなぜか沼からは移動しないので一応安全といえば安全なのですう。ですから今まで放置されていましたあ。」



シアンさんも補足で解説してくれた。



「へー、まあいくら強くても移動しないなら関わらなきゃいいだけですもんね。」



「まあ、そうはいっても街の外から来た人とかだと知らずに沼の方へ行ってしまうこともあるのでいない方がありがたいですね。」



苦笑いしながらサーシャさんが告げてくる。今までに何回かそれで犠牲になった人がいたのかもな。それにいくら街には来ないといっても近くに強力なモンスターがいれば街の人だって少しは怖いだろう。



「任せてください、サーシャさん!きっと倒して来ますから!」



「はい、ありがとうございます!でも、無理はしないでくださいね?シアンも一応ショウタさんに付いていってくれる?街に来たばかりで場所も知らないだろうから。本当は自分で行きたいけれども、いざとなった時私のステータスじゃ足でまといになっちゃうだろうし。」



「任せるですよう!敏捷はAランクなので逃げ足には自信がありますう!もしもの時はショウタさんを抱えて逃げてくるですよう!」



頼りになる発言だが女の子に抱えられて逃げるのは勘弁したい。一応僕にも男のプライドがあるので!



「シアンさん案内よろしくお願いします!では、早速ヒュドラー討伐に行ってきます!」



こうして僕達は2人でギルドを出発した。






街から30分ほど歩いた頃だろうか。シアンさんが声をかけてくる。



「あ、ショウタさん沼が見えてきましたよう!」



そう言いながら彼女は少し前方を指さした。なるほど確かにそこそこ大きな沼がある。あそこがヒュドラーの住処か。しかしまだヒュドラーは見当たらない。どこかに隠れているんだろうか。



「ヒュドラーはまだ見えないですね。沼に隠れているのかな?」



「はい、近くを人やモンスターが通ると沼から出てきて攻撃して来ますう!私はこの辺りで待機しているので危なくなったらここまで逃げて来てください!動けなそうになっていたらがんばって拾いに行きますう!」



そう言って沼の百メートルほど前でシアンさんが止まる。距離が遠い気がしないでもないがSランクモンスターがどれくらい恐ろしいか分からないからな。ていうか拾うって。僕は栗か。・・・さて、いっちょう狩ってくるかな。



「分かりました!では行ってきます!」



そう言い沼のそばまで駆けてゆく。距離が十メートルを切ったあたりだろうか。沼に異変が起きた。




ズモオオオオオオっと沼から巨大な水しぶきをあげながら一つの山が突如出現した。



いや、これは山ではない。水しぶきが徐々に弱まりその姿がはっきりしていく。水面から小島のごとく浮かぶ胴体、そこから生えるのは丸太のように太い9本の首と頭。



ははは、想像以上にでかいなこれは。首だけで軽く十メートルはあるな。水面に沈む体を合わせるとどれだけでかいか想像もつかない。これはシアンさんがあれだけ離れるわけだ。



幸いなのはでかすぎて現実味がないからかあまりヘビを見た時のような嫌悪感がないことか。普通のヘビだと触れもしないから助かった。あ、ていうか僕武器も持ってないじゃないか。まあ、素手でも十分な威力が出せるのは確認済みだからいいや。



ヒュドラーが攻撃を仕掛けてくる前に僕は地を蹴り飛び上がる。九個あるうちの頭の一つに肉薄し殴りつけた。



パアン!風船が割れるようにヒュドラーの頭が弾け飛ぶ。お、思ったよりももろい?




残った首を蹴りつけ地面へと舞い戻る。着地をし、ヒュドラーの方へと振り返ると、弾けたはずの頭部周辺の肉がうねうねと蠢いていた。次の瞬間にはボヒュっと音をあげ頭部が再生される。



うへえ。あまり気持ちのいい光景じゃないな。しかも回復速度が早い。3秒もかかってないんじゃないか?



うーんやっぱりヒュドラーは頭を一斉になんとかしなきゃだめか。たいてい僕の世界の漫画やゲームでもそうだった気がするし。



となると広範囲攻撃か同時に攻撃を食らわせる必要があるわけだ。だとしたらやっぱ魔法か。しかしどうやって撃つんだろう。



「ファイヤー!」



手を前にかざし叫んでみる。



・・・・・・。



ブオン!



うわあぶな!何も魔法が出ないうえにヒュドラーに攻撃された。とっさに頭を下げなければ横薙ぎにされていた。



ヒュドラーがここぞとばかりに攻めてくる。頭上からハンマーのように頭が振り落とされたかと思えば、横からムチのように首が迫る。それをかわしても今度は砲弾のように正面から口を開けたヘビの頭が突っ込んでくる。



なんとか身体能力で避けるも防戦一方になってしまっている。くそ、できるかどうかも分からない魔法に頼るんじゃなかった。口に出せば魔法が出るんじゃないかと思うのは安直だったか。このゲーム脳め。まだ元の世界の常識から抜けきれていないな。



・・・ん、常識?そうだ、なんで俺は決めつけていたんだ。ヒュドラーといえば頭を全てつぶすもの。そう思い込んでいた。


だけど、誰がそんなことを決めた?僕はギャグ漫画みたいな存在なんだ。バトル漫画に出てくるキャラみたいにまっとうな戦い方をしようとするのがそもそも間違いなんだ。



頭を全てつぶすなんてめんどうなことはしなくていい。一撃で終わらせる。



そこまで思考したところでまたヒュドラの頭が頭上から振り下ろされた。ちょうどいい、使わせてもらおう。僕はヒュドラの攻撃をサイドステップで避ける。


そしてそのままヒュドラーの頭上に飛び移る。ヒュドラーの頭は地面に叩きつけられた状態でまっすぐだ。つまり、今僕の目の前には1本の道ができている。ヒュドラーの背中までの直行便が。



迷いなく僕は駆け抜ける。



「頭は9個でも、それが付いてる体は1つだよね?」



バカでかい背中までたどり着く。同時に頭を9個も破壊できるような器用な真似は今の僕には思いつかない。でも、巨大な一つの的だったら、僕にでも壊すことができる。先が再生されるなら、大元を叩けばいいんだ。



ふう、と一呼吸する。足元を見つめ、拳を振り上げる。そして、一撃。




ドッパアアアアアアン!!!




凄まじい轟音と共に足元にあった物体は綺麗さっぱりなくなった。




・・・そう、綺麗さっぱりだ。



当然、足場が消えた僕は落下していく。しまったああああああ!あとのことを考えてなかった!し、沈む!なにこの沼!めっちゃ沈むんですけど!




あ、そういえばサーシャさんが言ってたっけ。この沼、底なし沼なんだって。ははは、なぜかヒュドラーは沼から移動しないとも。



もしかして、ヒュドラーは移動しないんじゃなくて、下半身が沈んで抜け出せなかっただけなんてことは・・・。いや、そんなまさかね?



僕はいやーな妄想をしながら、なすすべもなく沈んでいった。






ギャグ漫画あるある


⑫常識は投げ捨てるもの

⑬キレイに終われると思ったら大間違い

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