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武器のお披露目と初の敗北?


ギルドでヒュドラーの素材を売ってから2週間が経過した。その間僕は何をしていたかというと何もしていなかった。とは言っても冒険者らしいことは何もという意味でだ。別にニートになったわけではない。



結局ミーシャちゃんと話し合った結果、僕が王都に行くことはあっさり許可された。それどころかミーシャちゃんも一緒に観光に行きたいと言い出した。



宿屋のお仕事は大丈夫なのかなと思いおやっさんに聞いたら、「子どもが余計な心配すんな。・・・それに、なぜミーシャが1人で手伝いをしているのか気にならなかったか?俺の妻は病気で早死にしてな。ミーシャには苦労をかけてるからたまにはわがままも言ってほしいのさ。」と押し切られてしまった。


奥さんの姿が見えなかったので、なぜだろうと思いながらも気まずくて聞けていなかったがそういう事情があったらしい。


そこで僕は街を出るまでのこの2週間、僕達がいない間の仕事が少しでも減るようにと宿屋のお仕事を手伝っていた。



そういうわけでクエストを受けずに過ごしていたのだ。クエストといえば、先日完成した僕の装備を武器屋の店員のラル君が届けてくれた。受け取った装備はまだ試せていないので、そういう意味でもこの王都旅行・・・ではないか、一応賞金狙いで行くのだから。まあどちらにしろ楽しみだ。



そして、いよいよ今日が出発の日。僕とミーシャちゃんは荷物を持って街の門へと来ていた。王都に行く商人の人と事前に交渉して、馬車に乗せて行ってもらうことにしていたのだ。



「おお、お待ちしていましたよ、ショウタさん!」



「おはようございます、バラットさん。よろしくお願いします。」



「いや〜、こちらこそ助かります!王都までSランクの冒険者に護衛してもらえるなど、道中の安全は保証されたようなものですからな!ハッハッハ!」



そう、僕は道中馬車を護衛する代わりに僕とミーシャを運んでもらう契約を結んだのだ。ギルドを通すと僕はBランク以下の依頼は受けられないが、個人的に約束するだけなら別だからね。そのぶん、人や依頼の見極めはしっかりしなければいけないけど。



「ははは、まあ乗せてもらえる以上はがんばります。お嫁さんを危ない目に合わせるわけにもいきませんしね。」



そう言い、隣にいるミーシャの方へとちらっと視線をやる。



「おお、ということはそちらのかわいらしいお嬢さんが今回の旅の仲間ですな。バラットです、よろしくお願いしますぞ!」



「ミーシャだにゃ。よろしくだにゃ〜。」



おお、さすが宿屋の受付だ。大人相手でも物怖じしないな。



「では、さっそく出発いたしますかな。お2人とも、お乗り下さい。」



そう促され、僕はミーシャの手を引き2人で馬車へと乗り込む。

少しすると、ヒヒィーンと馬が一声鳴き進みはじめた。ああ、馬車に揺られて旅をする機会なんて現代じゃなかったろうな。




そして馬車で旅すること3日。モンスターや盗賊に襲われることもなく、旅路はいたって順調だった。うーん、モンスターでも出てきてくれれば武器を試せるのになーと考えていたところで、外から大きな声が聞こえてくる。ガタッと音を立てて馬車も動きをとめたようだ。お、これは僕の期待通りにでもなったかな?



「ショウタさん!盗賊が向かってきます!数は・・・20はいます!」



なんだモンスターじゃなかったか。だとすると、武器を投げつけて死んだら困るな。近接武器としても一応使えるらしいけど今回は素手でいいか。



「はーい、今行きまーす!ミーシャ、危ないから馬車の中で待っててね。」



あ、そういえば最近ミーシャちゃんのことを呼び捨てで呼べるようになってきた、うれしい。普通ならこんな場面で言うことじゃないけど、盗賊なんかよりこっちの方がよっぽど大事だ。



「はいにゃ!ショウタお兄ちゃん、気をつけてにゃ。」



返事を聞き、外へと飛び出る。



うお、本当だ。数が多いな。囲まれてるじゃないか。



「ああん、なんだ?護衛が1人?ふざけてんのか?」



僕が出てきたところで声を投げかけられる。おそらく、こいつがリーダーかな。ちょっと雰囲気あるし。



「はじめまして、盗賊さん。今逃げるなら見逃してあげますよ。」



こういうセリフ、言ってみたかったんだよね。まあ盗賊を逃がしても被害が広まるだけだし、実際にはそんなつもりはないけども。



「あ?やっぱふざけてやがんなこいつ。生け捕りにして売っぱらっちまうつもりだったが気が変わった。おまえら、殺れ。」



そう言うと皆一斉に剣を抜く。だが態度は緊張したものではなく、舐めきった様子だ。まあ当然か、この人数差でしかも僕は素手だ。



後ろにいた男が切りかかってくる。身を守るためとはいえ、人殺しはあまりしたくはないな。ミーシャもいることだし。しょうがないので、後ろに回り込み男のズボンを膝下までずり下げてみた。剣を振るために踏み込んだ男の足はもつれ、地面に転がる。・・・ぷっ、一回転してる。



しかし周りの男たちはなぜこんなことが起こったのか飲み込めていないようだった。すかさず煽ってみる。



「アハハハ!盗賊のお仕事って、もしかして僕たちを笑わせてくれることだったんですか?すいません、怖い人たちかと勘違いしていました。なんなら観覧料でも払いましょうか?」



普段はこんなことは言わないが、別に相手が相手だしいいだろう。怒ってくれた方が動きが単純になって対処が楽だしね。



周りの盗賊たちが赤い顔をして突っ込んでくる。うーん、心配になるくらいの素直さだ。僕は先ほどと同じように、躱してはズボンを下げ、また躱してはズボンを下げた。もう10人くらい地面に転がってしまった。



「使えねえやつらだ!おいガキ、これでも喰らえ!〈ウォーターボール〉!」



最初に声をかけてきたリーダーが何やら手を前にかざし叫ぶ。すると顔ほどの大きさの水球が1つ僕めがけて飛んできた。



おお!これってもしかして魔法か!何気に初めて見たんじゃないかな。ドラゴンのブレスが魔法に当たるなら別だけど。



いきなり魔法を見れて驚いたので避けるのをすっかり忘れていた。気づけば水球は顔の目の前だ。・・・しょうがない、水だしまたあれでいいか。ひゅっと口に水を吸いこむ。あ、普通においしい水だ。



「ごちそうさまです。」



ぺこりと頭を下げる。おもてなしをされたらお礼を言う。日本人として当然のマナーだね、うん。



「・・・は?」



おや、水球を撃った本人はもちろん、周りの盗賊たちも口を開けて固まってしまった。ちょうどいい、水をくれたお返しを差し上げよう。せっかくだから日本式のおもてなしがいいかな。



転んでいる盗賊のうちの1人から剣を1本拝借する。さて、やるか。僕は盗賊たちの間を縦横無尽に駆け、剣を振るう。うーん、ここは思いきってばっさりいってみよう。こっちはあえてサイドを残してみる。おお、なかなかいいんじゃないか?僕は全員分の作業を終え、動きを止める。



うん、完成だ。見回すと、そこには個性豊かな頭髪をした盗賊の数々。日本の芸術、盆栽のプレゼントだ。



いやあ、やっぱり芸術はすばらしいなあ。国の壁どころか、世界の壁まで超えて感動を与えるなんて。だってほら、盗賊たちは自分の頭部に触れわなわなと震えたり、地面に伏せて泣いている者までいる。よっぽど衝撃だったんだろう。



「さて、どうする?僕としてはもうちょっと異文化交流をしてもいいんだけど。次は手が滑って別のとこを切っちゃうかもしれないけどね。」



そう言い、剣先を盗賊のリーダーの頭部に向ける。ちなみに彼はハート型ヘアーにしてみた。



「す、すいませんでしたあああああ!」



盗賊たちはみんな揃って地面にひれ伏した。なるほど、盆栽へのお礼としてジャパニーズスタイルの土下座を選ぶとはなかなか分かってるじゃないか。



うんうんと僕は満足げにうなずく。



・・・ちょっと遊びすぎたかな?てへぺろ。



バラットさんからロープを借り、盗賊全員の手を縛り一つなぎにする。これでばらばらに逃げることもできないだろう。次の街には明日着くそうなので、そこで彼らは衛兵に引き渡すことにした。犯罪奴隷として需要があるので街で買い取ってくれるらしい。






盗賊たちを引きつれ、道をまた進んでいく。しばらくすると夕方になったので馬車を止め、野営の準備をしている時に盗賊たちがざわざわと騒ぎ始めた。



「お、おい!助けてくれえ!殺されちまう!」



「ひぃ、やつが出やがったあ!空の死神だあ!」



なんだと思い盗賊たちの方へと近づく。盗賊たちはみな揃って上空を見上げている。上に何かいるのか?



ひょいと上を見る。・・・おお、グリフォンかなあれは?



「な、グリフォンですと!Aランクモンスターに遭遇するとは運のない・・・。それもグリフォンとはまたやっかいな。」



バラットさんも寄ってきたみたいだ。へえ、Aランクなのかグリフォンは。



「どういうモンスターなんです?」



「ええ、空に滞空しながら一方的に風の刃を繰り出してくるので、遠距離攻撃ができないとまず間違いなくやられます。地上に落とせたとしても爪もくちばしも強力で対処が難しいですな。」



「ありがとうございます。それだけ分かれば十分です。」



なるほど、武器のお披露目にもってこいだな。念のためヒュドラーの鱗で造った鎧もつけておこう。



グリフォンは上空からこちらを見下ろしている。その表情にはどこか強者の余裕が見える。僕はそんな中、はじめてこの武器を構えた。



持ち手は1メートルほどの細長い金属。ここまでは特に変わったことはない。この武器の特徴は先端である。先は鋭く光る白色の物体。そう、ヒュドラーの牙だ。



投槍〈 オロチ 〉



これがその武器の名だ。掲げた右手に力を込める。狙いはグリフォンの胴体。



そこまでした時だ。グリフォンがこちらの攻撃の意思を読み取ったのか先に仕掛けてくる。空中で前足を1振りすると2メートルはあろうかという三日月形の風の刃がこちらへ飛んでくる。



僕はそれを見てオロチを投擲した。ゴォォォォォという音を立てながら突き進む。僕とグリフォンのちょうど中間あたりで両者は激突する。そして一瞬の間も持たず、風の刃は霧散する。



はじめて用いた武器の威力とこの戦いの勝利を確信して僕はにやりと笑う。放たれた槍はその威力を衰えさせることなく、まっすぐと進む。まっすぐまっすぐ進み、グリフォンの真横を通り抜けて、やがて空の彼方に見えなくなった。



「・・・・・・オ、オロチィィィィィィ!!!」



素人がいきなり槍なんか投げても当たらないらしい。剣は手元にあるぶん簡単に扱えたが、槍のコントロールは少し練習が必要そうである。



僕はその後、槍を探して30分草原を駆け回ることになった。





え、グリフォン?



そこら辺の石投げまくって倒したよ。



試合に、いや、死合に勝って勝負に負けた気分といったところだろうか。勝ったのは僕なのに敗北感がすごい。



・・・次はがんばります。









ギャグ漫画あるある


XXI ・・・モブの扱いが雑

XXII・・・大事なところはポカする

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