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禁断の扉を開きし者


タイトルとの落差がひどいです。


「う、うーん。」



頭にズキズキという痛みを覚え、目を覚ます。寝ぼけた頭で天井を見つめる。どうやら宿の自室みたいだ。



あれ、僕いつのまに寝たんだっけ?昨日の記憶があいまいだ。体を起き上がらせるのもまだだるいので、横になったまま昨日の記憶を探る。



たしか昨日は、シアンさんとごはんを食べたはずだ。それから武器屋で一騒動あって、ギルドに立ち寄ってから、宿に帰ってきて……



サーっと血の気が引いていく。い、いやあれは夢…だよな?



まさか11歳の女の子と結婚することになるなんてあるはず…



「んぅ…」



声がした。僕以外誰もいないはずのこの部屋から。



ギギギと錆びついたネジみたいに首を動かし、顔を音の発生源へと向ける。それは僕の布団の中からだった。



ごくり。



僕は無意識につばを飲み込む。布団の下に広がる光景によっては、僕の人生が決定してしまうことを悟って。



いや、ただの猫かなにかが入りこんだに違いない。



頭ではそんなことを思いながらも、僕には布団をめくる勇気はなかった。しかし、この緊迫した状況に耐えられるほどの余裕ももはや残ってはいなかった。



ゆっくり、ゆっくりと布団へと手を伸ばす。手が布団へと1センチ、また1センチと近づくごとに、僕の鼓動も大きくなる。



頼む、どうか猫であってくれ。



僕は生まれて初めて本気で神に祈った。それぐらい、切羽詰まっていたのだ。



…そう、神様の性格を忘れるほどに、切羽詰まっていたんだ。あの神様がこんなおもしろい状況をどうにかしてくれるはずなんてあるわけがないことも忘れて。



布団をめくった先にいたのは、猫だった。僕に寄り添い気持ちよさそうに眠っている…猫の獣人だった。



おまわりさん、ごめんなさい…。







しばらくぽけーっとしてみたものの状況が変わるはずもなく、しかたないのでミーシャちゃんを起こすことにした。うう、僕こんな小さな子と寝ちゃったのか?最低だ。やってしまった以上は責任をとってミーシャちゃんを精一杯幸せにしてあげなきゃ。



「ミーシャちゃん、ミーシャちゃん。朝だよ。起きれる?」



「ふにゃあ〜?…んー、おはようだにゃ〜」



軽く肩を揺さぶりながら声をかけると、目をこすりながらも起きてくれた。



「おはよう。よく眠れたかな?」



「うん、ショウタお兄ちゃん温かかったにゃ〜。」



ゆ、湯たんぽてきな意味ですよね?



「は、はは。そっか、それはよかった。そ、それでね昨日の話なんだけど。」



「あ、ちょ、ちょっと待つにゃ!私から言わなきゃいけないことがあるんだにゃ。」



「うん?なにかな?言ってみて。」



なんだろうか。まあ今さら何がきても驚かないとは思うけど。



「そ、その。私、結婚できないんだにゃ!ごめんなさいにゃ!」



……へ?昨日の宴会のときは結婚を喜んでいる様子だったのにどうしたんだろう。宴会のあとに何かあったのか?



宴会のあとって…たぶん僕の部屋?僕の部屋であったことで、結婚を断られるようなこと……う、うそだろ、まさか。




「ぼ、僕そんなに下手だったの……?」




は、ふふふ、あははははははははは。六つも年下の子に結婚を考え直されるほどダメだったのか…。もう、生きていけない…。



「下手?なんの話だにゃ?」



「い、いいんだ。ミーシャちゃん、気を使わなくて。僕が悪いんだから。」



「本当になんの話か分からないにゃ。」



あれ、マジで分かってないのか?



「…ミーシャちゃん、ちょっと確認していい?」



「はいにゃ。」



「僕、部屋に戻ってきた記憶がないんだけど、どうしてか分かる?あと、ミーシャちゃんが僕の部屋で寝てた理由も。」



「ショウタお兄ちゃんがお酒いっぱい飲んで、部屋に戻るときふらふらで危なかったから私もついて行ったにゃ。夜遅かったし、私も眠くてそのまま一緒に寝ちゃったにゃ。」



よっしゃああああ!祝・童貞!いや、めでたくはないけどめでたい!最終ラインだけは超えてなかった!おまわりさん、僕、やりましたよ!いや、やってませんでしたよ!



「いや〜そっかそっか。うん、ならいいんだ。送ってくれてありがとうね!」



あれ、でもそうするとなぜ結婚できないって?



「気にしなくていいにゃ。ショウタお兄ちゃんのことは好きだしにゃ。」



す、好きって言われると照れるな。いやでも、好きだとするとますます理由が分からない。



「あ、ありがとう。えっと、じゃあさっきのミーシャちゃんの話の続きをしてもらってもいい?」



「あ、そうだったにゃ!私、まだ11歳だから結婚できないのにゃ。昨日は舞い上がって忘れてたにゃ。」



そうか、異世界でも結婚できる年齢は決まってるのか!日本だと女性は16歳だったっけ?こっちは多少早いとしても14〜15歳くらいかな?3〜4年もすればミーシャちゃんも僕なんか飽きてしまうだろう。



「そうなんだ、年齢のことがあるんじゃしかたないよね。」



「うん、結婚できるのは14からだからあと3年あるのにゃ。そ、それでにゃ?」



「うん、なにかな?」



きゅっとミーシャちゃんが小さな手で僕の胸元を握ってきた。



「しょ、ショウタお兄ちゃんは、強いし、かっこいいから、女の人が寄って来ちゃうかもしれないにゃ。で、でも、私のこと、待っててほしいにゃ。ショウタお兄ちゃんと結婚したいんだにゃ…」



よく見ると彼女の手先は細かく震えていた。目元にも涙が溜まっている。



…僕は、バカだ。自分の都合ばかり考えて、目の前の子の思いなんて気にもかけていなかった。




というのは置いといて。




やっば、何この子!めっちゃかわいいじゃん!こんな健気ないい子見たことないわ!バカか僕!なにためらってんだよ!結婚するしかないでしょ!



倫理観?そんな細かいことは知らん!だいたいここは異世界なんだ!地球の倫理観なんてなんの役にも立たないさ!おまわりさんなんていないんだよ!



「もちろんだよ、ミーシャちゃん!ミーシャちゃんが14歳になったらすぐ式をあげよう!僕、それまでにがんばってお金稼いで家を買うよ!」



ガバッとミーシャちゃんを抱きしめる。



「ショウタお兄ちゃん、うれしい!」



ぎゅっと抱きしめ返してくれた。



カフッ、やばい吐血しそうなくらいかわいい。今なら自信を持って言える。もうロリコンでいいや!



この日、僕は新たな扉を開いた。









ずっとミーシャちゃんとお話でもしていたかったが、ミーシャちゃんには宿屋のお仕事があるし、僕もギルドに行かなければいけなかったので、名残惜しいが支度をして出かけた。



宿屋を出るとき、ちらっと食堂を覗いてみたが客の半分くらいが机に突っ伏したまま寝ていた。おやっさんも一緒だった。本当に朝まで飲んでたのかもしれない。…仕事大丈夫なのかな?



ギルドへとたどり着き扉を開けると、妙に視線を感じた。というかギルド内のほとんどの人が僕を見ている気がする。



「おい、あれが噂のやつか?」


「ああ、間違いないぜ。あいつだ。」



…なんだ?僕が噂になってるのか?まあ、この街に来て3日目だし、僕がSランクだって話でも広まってきたのかな?



気にせず受付へと歩いて行く。しかし途中で聞こえてきた話に思わず足を止める。



「やつが小さい女の子のためにヒュドラーを狩りに行ったっていう変態か…。」


「ああ、まったく、実力も頭もおかしいとは俺達の手に負えるようなやつじゃないな。関わらんのが1番だな。」



「ちょっと、待とうか君たち?」



噂をしていたやつらのもとまで一瞬で距離を詰め、逃げられないよう肩をつかむ。



「ひぃ、いつのまに!?」


「お、俺達は何も言ってないぞ!」



「いやー、そんなにびびらなくてもいいじゃないですか、先輩方。ちょっと後輩として先輩に質問があるだけなんですよ。…もちろん、答えてくれますよね?」



ほんのちょび〜っと肩をつかむ手に力を込める。脅すような真似をして申しわけないがここは聞き逃してはいけない。



「いだだだ、分かった!なんでも話すから!離してくれえ!」



「ありがとうございます先輩。さっきの噂先輩たちが流してるんですか?」



「ち、ちげえよ!冒険者の間で流れてる話だ!出どころは知らねえ!」



「なるほど、うわさはいつから?」



「今日の朝からギルドの中で流れてたんだ。」



となると、昨日宿屋に泊まっていた冒険者が朝にギルドに依頼を受けるついでに漏らしたって感じかな。ぐぬぬぬ、口止めしとけばよかった。世間で変態の噂が流れるのはつらい。



「他に何か知っていることは?」



「…言っても怒らねえか?」



「あなたのせいじゃないなら怒りませんよ。」



「お前の、二つ名が流れてる。」



「二つ名?なんですそれ?」



「そうか、一応新人だったな。二つ名ってのは強いやつや珍しいスキルなんかを持ってたりするやつの通り名みてえなもんだ。周りから勝手に呼ばれんのさ。二つ名をつけられるのは冒険者にとって一種のステータスみてえなもんよ。」



「へ〜、かっこいいですね。いいことじゃないですか。」



「そうだな。王都にいるSランク『紅蓮』みたいな名前ならな。」



「何か含みのある言い方ですね。…僕の二つ名は?」



「 『理不尽なロリコン』だ。」



「は?」



「ヒュドラーを1人で倒しちまう理不尽さが由来らしい。」



「いやいや、だったら理不尽だけでいいでしょ!」



「俺に言われてもしょうがねえよ。まあ実際ロリコンじゃねえってんなら、大人の彼女でもつくりゃ噂も消えんだろ。Sランクならモテるだろうしよ。」



「……」



「おい、なんだその間は。まさかお前本当にロリk…」



「それ以上は言わない方がお互いのためです。」



「お、おう。そうだな。俺は何も知らない。噂はただのうわさだった。それでいい。」



「物わかりのいい先輩で助かりました。では、また。ありがとうございました。」



周りに会話を聞かれるのも嫌なのでさっさと受付へと逃げる。うう、そんな間違った噂が流れるなんてひどい。いや、今では真実になってるんだけどさ。どっちにしても恥ずかしい。



「サーシャさん、おはようございます。今いいですか?」



受付のサーシャさんへと声をかける。



「はい、大丈夫ですよ。あ、聞きましたかショウタさん。変な噂をされてましたよ。」



「ええ、一応は。」



「ヒュドラーを倒したのは宿屋に行く前だから、ミーシャちゃんのために狩りに行くなんてできるはずないのに。根も葉もない噂でロリコン扱いなんてひどいですよね。」



やめてくださいサーシャさん。今の僕はその言葉に反論できないんです。



「あのですね、サーシャさん。1つお知らせしたいことがありまして。」



「どうしたんです?そんな改まって。」



「実はミーシャちゃんと結婚することになりました。」



「…ええ!?結婚!?たかが2、3日で一体何があったんです!ていうか本当にロリコンだったんですか!?」



「いや、まあ色々あったんです。あとロリコンというよりはミーシャちゃんに惚れただけです。」



「は、はあ。とにかくおめでとうございます?」



「疑問形のあたり納得していない気もしますがありがとうございます。」



「えーと何の用で来てたんですっけ。びっくりしすぎて忘れちゃいました。」



「ヒュドラーの査定の話ですね。」



「あ、そうでしたね!えーっと、首1本で300万ゴルド、レーアさんのお店に渡す分を除いたら8本で2400万ゴルドです。」



「…そんなに高いんですか?」



「大きさが大きさですからね。鱗や肉がかなり大量に取れたので妥当な値段だと思いますよ。」



「んーなら、8本全部売却でお願いします。結婚に向けてお金も貯めなきゃないので。」



「…なんか私より年下なのに急に大人に見えますね。ふふ、私もそろそろ相手探さないとやばいかな…。」



「いや、落ちこまないでくださいよ。人生案外ちょっとしたきっかけで変わったりするんもんですから。」



バナナの皮とか。勘違いとかね。



「そんなもんですかね〜。お金はどうします?またギルドで預かっておきますか?」



「あ〜、100万くらい受け取りであとは預かってもらえますか?」



「分かりました。その他に何かご用はありますか?」



んー、何かあるかな。ああ、そうだ。稼がなきゃいけないしクエストでも受けとこうか。



「Sランクのクエストって何かあります?」



「んー、Sランクは近場ではないですね〜。Aランクなら1日程度で行けるのもあるんですけど。」



「Aランクって報酬はどれくらいなんです?」



「ものによって違いますけど50万〜300万くらいのが多いですかね〜。」



あれ、そんなもんなのか。ヒュドラーは討伐で2000万だったよな?



「ヒュドラーとずいぶん差があるんですね。」



「当たり前ですよ。Sランクは本当に規格外なんです。しかも普通の冒険者はパーティーで報酬を分けるので高収入を得られるのは一流の人だけです。」



うーむ、意外と厳しいんだな冒険者も。



「そうですか〜、だったら遠くまでSランクの依頼を受けに行ったほうが稼げるかもしれないですね。」



「あ、依頼ではないんですけど高額のお金を得る機会ならありますよ。結局ちょっと遠くに行くことにはなりますけど。」



「依頼じゃない?」



「ええ、1か月後に王都で闘技大会があるんです。優勝すればけっこうな賞金が出るはずですよ。国内から凄腕が集まるので勝ち上がるのは大変ですけど、去年もSランク冒険者が優勝したのでショウタさんなら可能性あると思います。」



へー、闘技大会なんてあるのか。おもしろそうだな。それに王都を観光してみたい気持ちもある。



「いい情報ありがとうございます。ちょっと考えてみます。」



「馬車で2週間くらいで行けるのでゆっくり考えてみてください。それじゃあ持ち帰る分の100万ゴルド持ってきますね。」



そう言ってサーシャさんはお金を取りに行った。



うーん、あれを買うつもりだったけど、王都の方がたぶんいい物が売ってるよな?というかこっちの世界でもあれを贈る習慣とかあるのかな?…まあなかったら単にプレゼントってことでいいか。



そんなことを考えながらサーシャさんを待ち、お金を受け取ってから帰路に着いた。



とりあえず宿に戻ったら、ミーシャちゃんに王都行きのことを相談してみるか。



話はそれからでも遅くはないだろう。





ギャグ漫画あるある


⑳実は主人公が1番やべーやつ

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