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神様、笑いすぎじゃありません?


目が覚めると真っ白な空間。



そして、腹を抱えてゲラゲラ笑うおじいさんだけが僕の視界に入りました。



ここはどこなんだろう?僕の記憶が確かなら先程まで学校に通うべく通学路を歩いていたはずなのに。現に僕は学生服を着ているし間違いないと思う。



記憶を確認したところで、ずっと笑い続けているおじいさんに話しかけてみる。



「あのー、すいません。」



返事の代わりに笑い声だけが返ってくる。めっちゃ笑うなこの人。笑い死ぬなんて言葉はありえないと思っていたけれど、この様子を見ると案外そんな死因もあるのかもしれないと思えてくる。



「すいませーん!聞こえてますかー!」



先ほどよりも声を強めてみる。



「ブハハハハハッ!ちょ、ちょっと、ヒッ、待っとくれ。ウハハハ!」



ようやく反応を返してくれたがまだ落ち着かないようだ。しょうがないのでそのまま待ってみる。



・・・5分程経った頃だろうか。ようやく目の前の老人は話しかけてくる。



「ハァ、ハァ。やっと呼吸が落ち着いてきたわい。いやーすまんの少年。あんまりにもおもしろくての。」



そう言われても何のことか分からないので反応に困る。自分の状況を確かめなければいけないはずなのに、あんなにも笑われると一体何があったのか気になってしょうがない。



「あのー、色々聞きたいことはあるんですが、なぜあんなに笑っていたんですか?」



「いやいや、君があんまりおもしろいことをするもんだからのう。こんなに笑ったのは数千年ぶりじゃわい。」



ウハハハとまたちょっと笑い声を出しながら答えてくれた。え、僕のことで笑ってたのか。何かしたっけ。



「すいません、特に何もした記憶はないんですけど・・・。あと、ここは一体どこなんでしょうか?」



「ああ、覚えとらんのも無理ないわい。だって君死んどるしの。それからここは神の世界じゃ。人間で入ったのは君が初めてじゃぞ、喜ぶといい。」



・・・・・・は?



「え、僕が死んでる?神の世界?何かの冗談ですよね?」



「いいや、君、坂上 笑太(さかがみ しょうた)は間違いなく死んだ。神の名において保証しよう。」



神様に死の保証をされました。なんだこれ。



いや、しかし全く信憑性がないわけでもない。僕はこんなどこまで行っても一面真っ白な世界など見たこともないし、存在するなど思わない。



この目の前の老人にしても、僕の名前を言い当てたし、何より得体の知れないオーラがある。少なくとも、人間には見えるが人間ではないとなぜか確信できてしまう。



「そっか、僕死んじゃったのか・・・。」



言葉にすると意外なほどすんなりと受け入れられた。死への未練よりもこれからどうなるのかという不安の方が大きいだけかもしれないが。



ただ、どうして死んでしまったのかは気になるな。



「神様、僕どうして死んだんですか。やっぱり交通事故とかですかね?」



その言葉を告げた瞬間、待ってましたとばかりに神様がにやっと笑った。



「よくぞ聞いてくれた!君はのう、うぷぷ、バナナの皮ですべって転倒死したんじゃよ!い、今どきバナナの皮で滑るやつなどおるとは思わんかったわい!ウハハハハ!しかも死ぬって、こんなの神といえども笑わずにおられんわ!」



え、うそーん。



嘘だと言ってよマイゴット。



担任の先生がクラスメイトたちに「今日は残念なお知らせがあります。笑太君が、バナナの皮で転倒してお亡くなりになりました。みんな、1分間黙祷をしましょう。」とか言って、黙祷しながら絶対みんなこらえ切れずに吹き出すんだ。



うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!



頭の中で残酷な妄想をしていると神様が声をかけてきた。



「まあ、言葉を失うほど驚く気持ちは分かるがの。そこまで気落ちせんでもええぞい。」



「えっ、もしかして生き返れるんですか!」



神様の言葉に反射的に答える僕。



「いや、生き返らせることは無理じゃ。普通は死んだら天国か地獄行きじゃからのう。」



げ、天国とか地獄って本当にあるのか。まずいぞ、たいして悪いこともしてないけどいいこともした覚えがない。



「あ、あのう。僕はどちらに行くことになるんでしょうか?」



「まあそんなに焦るでない。先ほど君はこの神の世界に来た初の人間じゃと言ったじゃろう?」



「あー、そんなことを言われましたねそういえば。」



「うむ、神ってのは案外退屈なもんでの。君の死に様は久々におもしろいことだったのじゃ。そこでの、君には第三の選択肢をプレゼントしようと思ってここに呼び寄せたんじゃよ。」



人の死に方をそんなに楽しむのはいかがなものかと思うが、訳も分からず地獄とかに飛ばされるよりはマシかもしれない。



「はあ、その選択肢ってのはどんなものなんでしょう?」



「そっちの世界では小説など創作が流行っておるから分かりやすいじゃろうな。簡単に言うと、異世界へと送りそこで第二の人生を歩んでもらう。」



異世界!僕も高校生だ、人並みにアニメや小説なんかも見たりする。その言葉にはちょっと憧れがあるのは間違いない。ただ少し不安もある。



「それはありがたいんですけど、ただの高校生がいきなり異世界に行って生きていけますかね?」



「そこは大丈夫じゃ。笑わせてもらった礼にオマケで便利なスキルもつけてやろう。お主にぴったりのな。ちなみにじゃが、異世界行きが嫌なら通常どおり天国か地獄行きじゃのう。こっちじゃと行ってみるまでどちらに行くか明かすことはできん。」



ふむ、ならもう決まりだろう。死因がバナナのままってのは恥ずかしいしな。あっちではスキルを使って異世界を満喫しつつ大往生したいものだ。



「では異世界行きでお願いします!」



僕は力強くそう告げた。これから始まる異世界生活に期待を膨らませながら。



「そうか、なら新たな世界でがんばるがよい。」



神様がそう告げると僕の体は光り輝き、どこかへと消えていった。



だから、神様が最後にこう言ったのを僕は聞くことはできなかったんだ。



「異世界でもわしを笑わせとくれよ?せっかくあのスキルをつけたんじゃからな。ウハハハハ!」



真っ白な世界に神様の笑い声だけが響き渡った。

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