表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/24

年下の彼氏

ハル君と遊ぶ前日の土曜。

里実と亜矢と3人で近くのクラブに遊びにいった。


里実「あ〜ぁ・・・彼氏欲しいなぁ〜」

亜矢「だよね〜 せっかくのこの若い時期を女ばかりで過ごすなんてもったいないよねぇ〜」


二人は煙草を吸いながら文句を言っていた。

なんとなく明日のことを、この二人に言ったほうがいいのか、

言わないほうがいいのか・・・そう思いながら二人の会話を聞いていた。


里実「華・・・欲しくないの?彼氏。お客でいいのいない?

 金持ちでイケメンで・・・そうだな〜背が180くらいの」



「あのさ・・・・やっぱ高校生はナシ?」

軽い感じで聞いてみた。



亜矢「うっそ!実はそんな関係だったの?あのおこちゃまと」



「あ・・・いや。そうじゃないんだけど・・・ ちょっと可愛いかなって。

 ほら、見た感じ背も高いし、見えないでしょ?高校生に」


里実「ん〜 まぁ・・・高校生って言っても2つ下だしね。

 制服でデートしないならアリかな」



「だよね?だよね?全然アリだよね?」同意を求めて詰め寄った。


亜矢「え〜 私は無いな・・・ だって金も車も無いんでしょ?

 私は年上しか興味無いなぁ・・・」


亜矢はいつも年上のお金持ちしか付き合わない人だから

きっと言うことは分っていた・・・


里実「で。付き合ってるの?あの結婚式の時もうそうだったの?」



「いや・・そうじゃないけど。何回かバイクで遊びに行ったんだよね。

 で、、明日家に行くことになってるんだけど・・・・」


亜矢「へぇ〜 高校生かぁ・・・ まぁ一回くらい付き合ってみても

  面白いかもね?ちょっと新鮮で。今度紹介してね」


ニヤニヤして二人は言った。


(別に付き合うとかって感じじゃないんだよなぁ・・・・)


そんなことを思いながら、その日はちょっと遅めの3時に家に帰った。

うちの親はそんなにうるさい方でも無いし、

いつも3人で遊んでいるのを知っているので、特に外泊を

しなければ文句は言われなかった。


翌日、12時には用意をしてリビングでお茶を飲んでいた。

昨日とは打って変わって健全な日曜日の誘いに

やっぱり学生だと変な所には連れて行けないもんなぁ・・・

そんなことを考えていた。


時間よりちょっと早い時間にハル君のバイクの音が聞こえ

外に出るといつものバイクが停まっていた。


真っ直ぐハル君の家に行くと、山崎さんと初めて見た奥さんが

ニヤニヤしながら玄関に出てきた。


山崎「いらっしゃ〜い♪」

山崎さんの言い方がちょっと気になった。


「あ・・お邪魔します。へへへ・・・」

無意味にヘラヘラして笑いながら家にあがった。

逆に考えれば親に会うことに緊張しなくていい・・とう特権はあった。


山崎「ちょっと茶の間でお茶くらい飲んでいきなよ〜」

奥さん「いつも主人がお世話になって、すいませんねぇ・・・どーぞ」


二人に詰め寄られどうしようかちょっと困った。


ハル「つーかさ・・・俺と遊ぶって来たんだから。部屋二階だから、こっちね」


そう言って先にハル君が二人を止め二階にあがっていった。


「あ・・じゃあ後から・・ご馳走になります」

そういって二人に挨拶して二階にあがった。


「よかったの?少しくらいなら顔だしてもよかったのに」

山崎さんが(あ〜ぁ)といった顔をしたのを見て、

部屋に入ってからハル君に聞いた。


ハル「いいんじゃない?だってどうせ夕飯食べていくでしょ?

 ならその時、顔合わせるじゃない」

そう言いながらTVのリモコンを探していた。


「え・・・いいよ。夕飯なんて。なんだか悪いし・・」

ハル「え!そんなに早く帰るの?」


真顔で言われた。


「え?じゃあ泊まっていったほうがいい?」

ハル「ガキだからって馬鹿にしてるでしょ!」


「で。なんのゲーム?私なんでも強いよ」

そう言って話しをそのまま飛ばした。


ハル「ちょっと・・・本当にゲームだけしに来たの?こんなに早い時間に」


そう言って話しを誤魔化したことを蒸し返した。


ちょっとだけドキッとした・・・

(え・・・他になにが?)少し変な方向に頭が回った。


「え・・・なに?ゲームしようって言ったじゃない」


ハル「いや、そうだけど。もっと時間あるんだし、TV見たりとか話したりとか

 あるじゃん。せっかく初めて遊びに来たのにさぁ〜」


「あ・・・なるほどね。うん。いいよ。ハル君の好きなことで」


勉強机のイスしか、イスらしいものが無いので、ベットに腰掛け部屋を見渡した。

何枚かのバイクのポスターが貼ってあり、部屋は綺麗だった。


「もっと・・アイドルのポスターとかベタベタ貼ってるのかと思った」

そう言ってバイクのポスターを見ながら笑った。



ハル「そんな訳無いじゃん・・・ まぁ、、貼ってるヤツもいるけどね」


「ふ〜ん・・・綺麗だね。男の子の部屋って汚いのが定番だと

 思ってた。意外だったなぁ・・・・」


ハル「そりゃ・・華さんくらい男慣れしてたら、いろんな部屋も見てるだろうから

 汚い部屋の男もいただろうけど、俺結構綺麗好きだから」


ちょっと嫌味っぽく、それでいて笑いながら言われた。


「だからさ・・・ そのイメージどうにかならない?

 真面目だって言ってるじゃない。それにそんなに男の人の部屋だって知らないから・・・・」


全然知らない訳では無いが、いままで遊びに行った人の部屋で

独り暮らしの人はやっぱりちょっと汚い部屋が多かったように感じた。


ハル「へぇ・・・ そうなんだ。じゃあさ、年下っていままで付き合ったことある?」


いきなり言われてちょっと慌てた。なんでこんな話になったんだろう・・・

それもなんだか上手く尋問されてるし・・・


「年下は無いかなぁ・・・ やっぱり学生の頃とかって

 1学年違うだけでも、すごい離れた感じするしね」


ハル「そうなんだ・・・ やっぱりガキだな〜とか思う?

 俺くらいの歳だと。特に華さんもう働いてるしね。高校生とかってやっぱり眼中に無い?」


この質問の答え方一つで、、、ちょっと今後この部屋に

居づらくなるんじゃない?そんなことを考えた。


「ん〜 どうだろ?私、制服のハル君見たこと無いしね。

 この前の式場の制服姿なら、全然イケてたよ?」


(ウマイ!)自分の答えに完璧だ!と思った。


ハル「ふ〜ん・・・」


それ以上話を突っ込めなくてハル君は黙ってTVをつけた。

ちょうどお笑い番組が入っていて、二人でなんとなく見ていた。


そこに山崎さんが「お邪魔しま〜す」とジュースを持って

入ってきた。


ハル君がドアの前で受け取り、

「だからオヤジはいいってば。後から下行くからー」と

ワイワイと二人で騒いでいた。その姿を見て、

「いいじゃない?山崎さん休みなのにどこも行かないんですか?」と話し掛けた。


まってました!とばかりに部屋の中に山崎さんが入ってきて座った。

そんな山崎さんを見てハル君は不満そうな顔をしながら目の前にジュースを置いてくれた。


しばらく山崎さんの話に付き合い、30分くらいで

「そろそろ息子が怒ると困るから下に行くよ。

 じゃ、後から一緒に夕飯食べようね〜」と下りて行った。



「ハル君てお父さん嫌いって訳じゃないんでしょ?

 そんな不機嫌な顔したら可哀相だよ」


ハル「華さん、オヤジに会いにきたの?」


ムスッとした顔でこっちを見て少し怒った顔をした。


「ううん。ハル君のとこに遊びに来たの。なんで?」


ハル「別に・・・」


その言葉にちょっとだけ機嫌を直したのがすぐ分った。


やっぱりわかりやすくて可愛いなと思った。

なんとなく彼女の気分になった。まだそんな感じは全然ないけど・・・


それからしばらくしてゲームをしたり、学校の話したりするうちに

すっかり夕方になっていた。

下で山崎さんが「ご飯だよー」と呼ぶ声がした。


ハル「じゃ、続きは後からね。ゲームこのままにしとくよ」

そう言ってTVだけ消して一緒に下りて行った。


リビングに行くと、ハル君にそっくりな人がもう一人いた。

座った背格好はほとんど同じだった。

顔を会わせるとちょっと驚いた顔をして頭を下げた。


「双子?」驚いて山崎さんに聞くと、

山崎「いや、年子なんだ。こっちは誠って言うの。どっちがいい?華ちゃん」


素敵に空気読めてないぜ!オヤジ!と思った。


誠「ハルの彼女?」


声までソックリだった。


ハル「そう。俺の彼女・・」


そう言ってハル君がイスに座った。


その言葉に一瞬、焦りながらも否定したほうがいいのか、

そのまま知らない顔をしたほうがいいのか迷ったが、

山崎さんと目が合いヘラヘラと笑うだけでその場を流した。


山崎「そう。父さんが見つけてやったの。誠も探してやろうか?」

ニタニタと笑いながら、誠君を見た。


キッチンを見るとお母さんが一人で悪戦苦闘をしているが見え、

私までここにドッカリと座っていいのかちょっと考えた。

別にいい顔をするつもりは無かったが、手伝わないのも悪いと思い、


「あの、たいしたお役に立ちませんがお手伝いしますけど・・・」と声をかけた。


内心(あらいいわよ。座ってて)と言われてからのほうが座りやすいと感じた。


奥さん「あ。いいの?ありがとー うちって男所帯だからだれも手伝ってくれないのー 」


そう言って簡単に手伝うはめになった。

一応、一回くらい断ってくれるだろうと次の台詞も用意していたのに無意味だった・・・・


「男の子二人だといろいろ大変そうですね?」

一緒にキッチンに並び、お母さんに話し掛けた。


奥さん「そうなのよ〜 体ばかり大きくて全然言うこときかないんだから!

 大きくなると親と口もきかなくなるし。

 でも、こうやって彼女とか連れて来てくれて一緒に台所に

 立ってお手伝いとか憧れていたの。ふふふ」


ニコニコしながらお母さんにそういわれ、返す言葉が無いまま

愛想笑いをしながら手伝った。


食事中は山崎さんがはしゃいで、いろんな話をし、

ハル君も誠君もその話を聞いて笑っていた。

さっきのお母さんの言ったような親と口ときかないという雰囲気はまったくなかった。


食事の後、一緒に後片付けをしながら、ダイニングに座り

釣りの話で盛り上がる3人を見ながら


(やっぱり男が3人もいるとむさ苦しいなぁ・・・)と

思いながらその団欒を見ていた。


奥さん「華さん。また近いうちにぜひ一緒に食事してね。

 やっぱり女の子が入ると場が和むのか、普段はご飯食べたら

 サッと二人とも部屋に行っちゃうの・・・

 主人も本当は寂しいんだと思うから。ね?」


「あ・・はい・・・」笑顔で皿を洗いながら答えた。


(けど・・・もう来ないかもよ・・・お母さん!)

そう思いながら複雑な気持ちになった。


後片付けが終わり、お茶を入れまた、みんなでダイニングに座った。

隣に座る誠君の顔をジ〜と見て、


「あの・・・弟?お兄さん?」と聞いた。


誠「え?あ・・・兄です。ハルより大人っぽいでしょ?」


髪が長い分そう感じたような気がしたが、それでも大人っぽいと

言うほどのことはなかった。

どっちにしても高校生だし・・・・


ハル「へっ・・・彼女に振られたばっかのくせに。早く勉強すれば?

 受験生なんだから〜 」

そう言ってハル君がからかった。


誠「うるせぇな・・・ 俺が振ったんだよ。年下はダメだな。うるさくて。

 華さん・・だっけ?ハルなんか子供だから、俺のほうがいいよ?

 性格だって俺のほうがいいし。俺も年上好きだから」


「えっ・・・いや、、、そんな訳じゃないんだけど・・・」


ハル「兄貴はやめたほうがいいよ。女癖悪いから。華さんいこ!じゃ、部屋行くわ!」

少し慌ててハル君に手を引かれリビングを出た。



部屋に戻り、ちょっと気まずい空気の中、さっきのゲームの続きを

しようとTVの前に座った。


「さ!どっからだっけ?私がやる?それともハル君がする?」

コントローラーを手に取り、ハル君の顔を見た。


ハル「兄貴、口がうまいから気をつけてね。

 その、、すぐ女の人コロコロ変えるしさ、悪い人じゃないけど・・」


「なに言ってんの。あんな言葉で動揺すると思う?へ〜んなの」


そう笑ってTVの画面を見た。



ハル「さっきさ・・・「俺の彼女」って言ったのどうして否定しなかったの?」

ポツリと言われ、そっちの言葉のほうが動揺した。


「あの場の雰囲気で「違います!」とか言うと空気悪いかと思って。

 それにお母さんもそう思ってるし、

 彼女が来たら一緒にお料理するのが夢だった〜みたいなこと

 言われて言えないでしょ。これでも空気は読めるほうだよ?お父さんよりは」


その言葉に二人で一緒にクスクスと笑った。


ハル「あのさ・・・もしよかったら。その、、本当にそうなっちゃわないかなって。

 思ってるんだけどぉ・・・・ どう?」


主語を抜きすぎたその言葉でも、言いたいことは伝わった。

ハル君の顔を見ると、緊張したように何度も髪を触り、

目線をこっちに向けられずに、TVを見たり、壁を見たりと忙しく動いていた。


「「そう」ってなに?」


その行動が面白くて、わからないフリをして聞いた。


ハル「わかってんでしょ?」

(嘘だろ?)という顔をして、やっと目がこっちを向いた。


「さぁ?お兄さんと付き合えってことかな。それもいいかなぁ」

チラッと顔を見て言った。


ハル「やっぱ・・・兄貴のほうがいい?」


(いい?)のいの字を言ったままの口で止まっていた。

不安そうなその顔を見て、なんだか可愛くて、つい笑ってしまった。


「ううん。どーせ年下と付き合うなら、ハル君のほうがいいかな?

 不器用っぽくて。私真面目だから、女慣れしてるのはちょっと苦手だし」


ハル「マジ・・・で?よかったぁ〜 ここにきて兄貴に取られるかと思った・・・・」

大きなため息を吐き安心した顔をして笑った。


「けど・・・気にならない?その、、歳とか?

 やっぱり同じ学生とかのほうがいいとか思うんじゃないの?

 それも、、ちょっと下の子とか?」


ハル「ぜんぜん!だって年上と付き合ってるなんて自慢だよ。

 それだけで友達に「すげー」って言われるよ。

 さっそく明日、友達に自慢しなきゃ!兄貴にも言ってやる!

 初めて上に立てた気分だ・・・・くぅ〜〜」


なにが自慢なのかは意味不明だったが、本人がそう言うなら

(ま・・いっか)と思い、そのまま両手を握って高々と上げ喜んでいるハル君を見ていた。


そして内心・・・

(里実と亜矢になんて言おうかなぁ・・・)

そんなことを考えながら、その後も健全にゲームを延々としていた。

これがいつもの調子で、年上の彼氏とかなら

こんな素敵なタイミングにキスのひとつもしてくれるのになぁ・・・


そんなことを思いながら、隣で

(うわ!やられたー!)と敵に倒され<THE END>の

画面にショックを受けている年下の彼氏を見ていた。




(まぁいいか・・・可愛いのは本当だから・・・)

そう思いながら、リセットボタンを代わりに押してあげた・・・・




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ