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10/24

どっちが初めて?

山奥の静かなホテルから見る星空もやはり綺麗だった。


「部屋の電気消したほうが綺麗じゃない?」


そう言ってハルはスイッチまで走りパチッと切り自然な感じで後ろに立った。


(今日もこのまま朝まで星を見る・・・ってことは無いよなぁ・・)


もう星を見ることよりも、この後のことに不安な気持ちで黙って空を見た。


「そんなに無口になるなよぉ〜」


笑いながらソッと後ろから

手をまわすハルに緊張して体が堅くなった。

ただくっ付いていることは大好きなのに・・・


「もう寝ようか?疲れただろ。ずーっと運転だし昨日も寝てないし。

 今日はゆっくり寝ようよ」


「うん・・・ そうだね」


そう言って緊張を隠しながらハルの後ろを着いていった。

ダブルベットが妙に広く感じた。


お互い少し離れたままで横になり黙っていた。

もう寝ようといわれたが・・・きっとまだ普通じゃ考えられないくらい

時間が早いんじゃないだろうか?


(まだ9時くらいじゃ?)


突然ハルが「あっ!」と言って起きだし、なにやらカバンをゴソゴソしまた戻ってきた。


「どうしたの?」


「あ・・いや。なんでも無い」


なにか隠していそうな感じで枕の下に手を入れたのを見て

「なになに?」と笑いながら、そこに手を入れようとした。

それを見て「いいって!いいから!」と慌てて人の手を止めしばらくふざけあっていた。


ハルの体の上を通りすぎ手を入れようとしていたので、

自然とすぐ体の下にはハルがいた。目が合い急に居たたまれなくなり

パッと体を離し、また元の場所に戻り黙って横になった。


ベットからも窓の外を見ると十分、綺麗に星が見えた。


「ここからでも見えるね。きっと昨日の見てなかったら、

 今日のこれでも十分、大騒ぎしてるんだろうね・・・」





「あのさ・・・」


「ん?」


ハルのほうを振り返り顔を見ると、これ以上無いというくらい

困った顔をしてこっちを見ていた。


「俺、タイミングがまったくわかんねーんだけど・・・」


その言葉に思わず吹き出してしまった。

こんな時、もっと男の人はスマートにリードするものだと思っていたのに

ハルはどんな時でも素直でマイペースだった。


少しだけ空いた二人の空間を無くすようにハルの体に寄り添い

布団の中でハルの手首をギュッと握った・・・


ちょっと違和感のある手首に軽く指で触ると


「あ・・・これ?ん〜・・・なんでもないんだ」


そう言って自分で軽く手首の傷を触った。

それはどう見ても自分で切ったような少し浮き上がった傷だった。

その瞬間昨日のハルの話が頭に甦った。


「ハル・・・自分で切ったの?」声が震えていた・・


「ん?あ〜 でも、病院に運ばれたのが早かったから・・・

 でも傷はたぶん一生消えないってさ。ま、根性焼きと思えばね」


そう言って笑ったが、私はその深い傷に心臓が痛いほど早く動いた。


それほど思いつめていたんだ・・・・

そう思えば、思うほどなんとも言えない悲しみが自分に広がった。


(ハルを守りたい・・・・)


もう悲しい気持ちを味わって欲しくない・・・

今の自分の緊張なんか、どうでもいい物に感じられた。


少しだけ緊張しながらハルを見つめた。


「なに?」

「ハル・・・したい?」

「えっ・・・ そりゃ、、、ねぇ・・・」

「じゃ、しよ?」


そう言ってニッコリ微笑んだ。



ハルも微笑んで、ホッとしたような顔をした。

どこかぎこちない動きをするハルだったけど、なにも言わず

ハルの手の暖かさを感じていた。



「俺、ガッチガチじゃない?もっと男がリードするもんでしょ?」


「ううん。そんなことない。ハルの好きにして・・」



手を上にあげた時に枕の下に手が滑り込んだ・・・

なにかを掴みそれを目の前に持ってくると、折れ曲がった

コンドームがパタパタと下に広がった。


「・・・・・・・」


無言で見ている私にハルが気がつき慌てて隠そうと手から取り上げた。


「いや、、無いとダメかと思って!」

「そりゃ、、ダメだろうけど・・・普通一個でしょ・・何回するつもり?」

「失敗した時の為に・・・その・・・」

「何回失敗するつもり?」

「もう〜!いいじゃん!」


そう言ってハルは唇を重ねた・・・


あの初めてキスをした日から、もう何度こうして唇を重ねたのだろう・・・

いつの間にかハルのキスは上手になった。

けれど、それは重ねるだけのキスであり濃厚なものでは無かった。


ゆっくりと唇に力を入れ、少しハルの口を開けた・・・

そっと舌を入れハルの舌を探した。


すっ・・・と吸う息を感じながらも、舌をそのまま絡めた。

その動きにハルも同じように舌を絡めながら、長い間そのまま何度もキスをした・・・

ハルの心臓の音が早くなり呼吸が少し乱れていた。



静かに唇を離すと、ちょっと不安そうな顔をして髪を撫でながら呟いた。


「俺、下手かもしれないけどごめんな・・・」

「先に謝らないでよ・・・」

「いや、、なんだか華ってキスとか上手いからさ・・・」

「あのね、、ハル・・・ 別にプレッシャーかける訳じゃないんだけど・・・」


そう言って、本当はそれほど経験が無いことと、

いままで気持ちがいいと感じたことが無いことを教えた。


「それ・・・プレッシャー以外のなにものでも無いんですけど〜」

「ごめん・・・だって言うチャンスがなかなか無かったんだもん・・・」


「だって、華、キス上手いじゃん。慣れてるっていうか」

「だってキスは好きだもの・・・」

「何それ!すごい強引な言い訳だな・・・」


ちょっと呆れたような顔をして笑った。


「でもハルとなら違うかもしれないし、そんなに緊張しないで?」

「わかった。でも痛かったら言って?無理にするの嫌だし・・」


その言葉にハルは優しいな・・と思った。

前の彼氏は「痛い」と言っても「大丈夫!」となにが大丈夫なのか

その時になってしまえば自分のことだけで突き進み私の痛みなど考えてくれなかった。


数回そんなことが続くともう私の中では「嫌な事」になってしまい

できるだけ二人でいることを避け、会う回数を減らした。


「痛いからするのが嫌い」なんて男の人に言えば

<貴方は下手です>というようなモノだし・・・


結局、私はその人に「好きな人ができた」と嘘をついて別れてしまった。

別れの原因を知ったら・・・その後トラウマになったら可哀想だし。




なんとなくハルとなら痛くないかもな・・・

そう思いながらゆっくりとハルの胸にキスをした。


ハルの手はまるで壊れモノを触るかのように、優しく体を滑った。

ちょっと緊張した顔をしていたが、目があう度に微笑んだ。


ハルの手つきが優しすぎて、いつの間にか小さく声が漏れた。



けど、いざハルが入ってくる時にまた不安がこみ上げ自然と体に力が入った。


「やっぱりやめようか?」

「ううん・・・大丈夫・・」



(どっちが初めてなんだか・・・)



そう思いながら体の力を抜いた。

それを見て、ゆっくりと気にしながらしてくれたおかげで痛みはあまり無かった。


「大丈夫?痛くない?」

「うん。ハル・・・・ありがと」

「え?なにが」

「痛くないか気にしてくれて・・・」

「当たり前だろ・・・痛がる華を見てできないじゃん」


そんなハルの言葉が大事にしてくれているんだな・・・と感じ愛おしくて仕方無かった。


「大好き・・・」


ハルの耳元で小さく囁きギュッ・・と抱きしめた。



「華・・・ちょ、、ごめん・・・」


数回腰を動かしただけでハルは・・・終わってしまった。




(きっと笑ってはいけないんだろうなぁ・・・)



すごく微妙な空気が流れチラッと目が合った。


「俺が大丈夫か?って感じだよなぁ・・・・」



二人でクスクスと笑いながら、そのままキスをして微妙は空気を消した。


「でも、約束通りに男にしてあげたじゃない」

「これじゃまだ男にはなりきってないな・・・・その、、もう一回していい?」

「ん・・・ハルが納得するまでいいよ」


「だって・・・華いきなり「大好き」とか言うから・・・

メーター振り切っちゃうじゃん!」


「次も言っちゃおうかな〜」

「次は大丈夫!もうコツは掴んだ!」

「コツを掴む時間なんかあった?」


「あのさ・・・もっと・・こぅ・・ムードある雰囲気じゃないの?

 こんな時って。なんでこんなに明るい感じぃ?」




結局、ちょっと早めに終わり気まずい空気になりそうになったが、

そこは若さでカバーをし、なんとか普通な感じでハルとの

初めての夜は無事終了した。



「思ってたのとなんか違ったぁ・・・」


終わってからハルは大きく息を吐きながら上を向いてグッタリとした。


「どう違ったの?」

「人の話と自分でするのは違うんだな〜ってさ」

「良くなかった?」

「いーや!すっげぇ〜よかった・・・・」


ちょっと放心状態で言うハルが可笑しくて、顔を見て笑った。


「よかった。でも私もハルなら大丈夫だった・・・

 ありがと・・あんまり良いイメージなかったけどもう安心した」

そう言って首まで布団を引っ張った。


「男にしてもらったし、今度は俺が責任もって華を完璧に女にしてあげるからさ。

 安心して・・・」そう言って髪にキスをして笑った。


(そうなればいいけどなぁ・・・)そう思いながらハルに寄り添い目を瞑った。


前日の寝不足と、やっと緊張から開放されたことで

その日はきっと11時前には眠ったと思う・・・

知らないうちに二人ともグッスリと眠りについた・・・

次の時にはもう生きていないであろう、流星群も忘れて

ハルの胸に顔を寄せ、ピッタリと体を寄せ合いまたひとつハルとの思い出が増えた・・・



(これからはハルにとって素敵な思い出だけ残してあげたい・・・・)




翌日、スッキリと目が覚めた。

まだ隣で眠るハルにバレないようにベットから起き上がり

大きく伸びをした。背中がポキポキと鳴った。


その音に目が覚めたのか、こっちを見てニヤッと笑い

「部屋明るいから裸見えちゃうよ?」と言いながら胸に口をつけた。


「慣れる為にもう一回しちゃう?」そう言ってニヤニヤした顔は

山崎さんにも誠君にもそっくりな顔だった。


その顔に押されて、朝からまたハルに付き合い、

回数を重ねるごとに痛みよりも違う感覚を感じた。


そして私の中に「ハルに抱かれたい」という、いままで無かった気持ちが

生まれていた。


ハルとなら、ずっとこうしていたい・・・


優しく微笑みながら私の上にいる

ハルが前の日よりも大人になった感じがした。



ホテルをチェックアウトして、のんびりと家に向って車を走り出した。

天気はよかったが、やはりもう11月の半ばになると寒さが強くなっていた。


「このまま行けば3時頃には家につけるね?」

ハルを見てそう言うと、ちょっとニヤけた顔をしていた。


「えっ?あ・・・うん。そうだね」

「今、違うこと考えてたでしょ!ニヤニヤして」


「え?いや・・・華って結構胸が大きいんだなって・・・

 バイクで背中には感じてたけどさ・・・」


「ニヤニヤした顔、そっくりだね・・・山崎さんと誠君に・・・・

 そんなことばっかり考えてないで、人の話聞いてよ!」


「わかったって。ごめん!ごめん!で、なんだって?」


すっかり前よりも逆上せ上がったような感じだったけれど、

ハルは終始ニコニコしていた。

(ま・・・仕方無いか・・・)そう思いながら車は予定通りの時間に

ハルの家に着いた。


なんとなくみんなにどんな顔をして会えばいいのか迷ったが

なにも言わずに帰るほうが怪しいと思い、家にあがった。

リビングでは山崎さんとお母さんがお茶を飲みながらTVを見ていた。


「おかえりー こっちでも結構見れたぞ!そっちじゃすごかっただろ?」

山崎さんの言葉にスッカリ忘れていた流星群のことを思い出した。


「星が降るってあんなこと言うんですね〜 本当に凄かったです。

 きっと一生忘れません。行かせてくれてありがとうございました」

そう言って山崎さんとお母さんに笑顔で報告をした。


「ありがとな。オヤジ」そう言ってハルもニッコリと笑った。


「そうか〜 よかったな。で、昨日の夜も見れたのか?」


その言葉に二人で慌てながら「うん!うん!」と頷いた。

どことなく笑いながら「よかったな」と言って山崎さんは笑った。

ちょっとバレたような気がして、ハルと二人で二階にあがっていった。


部屋に入ってからさっきの山崎さんの言い方に二人で

「あれってさ・・・怪しんでるよね?」とコソコソと話をしていた。

バタバタと二階にあがったこともあり、足音に気がついた誠君が部屋に入ってきた。


「よ!どうだった?見れたか?」


「あぁ。すごかったぞ〜 兄貴も行けばよかったのに」


「なに?彼女いないのに嫌味かお前・・・俺だっていたら

 堂々と外泊するチャンスだもの行ったに決まってるだろ?

 ったく、、、星ももうちょっと俺のタイミング見て流れてほしいよな」



誠君が部屋に戻り、ハルとCDを聞きながら本を見ていた。


「あ。車に地図忘れたでしょ?私とってくるね」と部屋を出ると

ちょうど誠君と廊下でバッタリ会った。


「あれ、華さん帰るの?聞きたいとこあったんだよね・・英語」

「あ。そうなの?ちょっと車に物取りにいくだけ。戻ってきたら

 部屋に行くね」そう言って下に降りていった。


地図をとり、誠君の部屋に行き、「どこ?」と聞いた。


「えーとね。ここ・・」そう言って問題を解き説明をしていると、


「ねぇ・・・ハルとさ。やっぱヤッた?」と聞かれた。


「え、そんなことしないよ?」顔色ひとつ変えずに嘘を言った。

「まじで!こんなチャンスにアイツしなかったの?」

「だって朝まで星見てるんだもの?そんなチャンス無いよ」

「そうなんだぁ・・・・ やっぱ俺とのほうが楽しめたね」


そう言って誠君はあっさりと嘘を信じた。

普通信じないだろ・・・・と思ったがきっとハルが真面目な分

そうであってもおかしくないんだろうと思った。


「どう?マジで俺に変えない?」

「変えな〜い。だってハルのこと大好きだも〜ん」

そう言って笑って部屋を出た。


二人とも顔は似てるのに性格は全然似てないんだなぁ・・・

絶対ハルなら、あんなこと言えないのに・・・

そう思いながらハルの部屋に戻った。


その日は少し早めに家に戻った。

どことなく引け目のある外泊にちょっとだけイイ子になろうと

自然にそんな行動になったような気がした。

帰ると言うと、ハルはいつもより寂しそうな顔をしたが、

「また明日会えるじゃない・・・」と言って後ろ髪を引かれながら帰った。




寝る前にハルにメールを送った。


<あの約束は絶対だよ?いつまでも一緒ね>


返信には


<うん。絶対な。初めてが華でよかった>



ハルの初めての人になれたことが何よりも嬉しかった。



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