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星崎さんから、三年生の先輩が私を訪ねて来る事を聞いてから数刻ほど経った頃、部屋のドアをノックする音で私は先輩が訪ねて来た事を確信し、返事をしてドアを開ける。
「あ! やっと会えたね」
私の顔を見て破顔した相手は、女子執行部の一人である愛沢先輩。こんな有名な先輩が私を訪ねて来るなんて何の用事なんだろう? と言うか、こんな有名な先輩が、普段居る事の無い所に突然現れれば騒がしくなるのも当然。愛沢先輩が寮に来ている事を知った人達が、私の部屋の回りに集まっていた。
「ここじゃ人が多くて話し出来ないから、私に着いてきて」
「あ、はい」
私は、先輩に言われた通りに従い、先輩の後を着いて行く。
私達を囲んでいた他の寮生達は、私達の邪魔をしない様にと道を開けてくれた。私を訪ねて来た愛沢先輩という人は、女子執行部の中では、一番気さくで話しやすい人と、誰かが言っていた事を思い出す。そんな先輩が、私を連れて何処へ向かっているのか不安になりつつも、こんな人と近付けるなんて、思ってもみなかった事だったから嬉しい。先輩の後を着いて行く事数分、目的地に着いたのか先輩は私の方を向いて話して来た。
「私の事は知っていると思うけど、改めて自己紹介するね。私の名前は愛沢 すみれ。三年生で執行部の一員。これから、貴女が向かう先は、私達執行部のメンバーが居る所ね」
「あ、はい」
そして愛沢先輩に着いてやって来たのは、とある一室。
先輩はノックをすると部屋のドアを開け、私を中へ入る様にと促した。
「失礼します」
私は粗相の無い様に挨拶をしてから部屋の中へ入れば、そこで待っていたのは、女子執行部の方達だった。正面に座る人は、このメンバーの中でリーダー的な人なのだろうと私は推測した。
「態々ここまで出向いて貰って、申し訳ありません。雪村さん、貴女に用があり来て貰いました。そうですね、先ずは自己紹介しましょうか。私は、この女子執行部の会長をしています藤原 五十鈴と申します。私の左隣に居るのが、副会長の神宮寺 夏蓮。私の右隣に居るのが、庶務のアイラ・G・ピースクラフト。その隣に居るのが、同じく庶務の東雲 美紗。そして、貴女の隣に居るのが、書記の愛沢 すみれ。今は、この五人で執行部を仕切ってます」
藤原さん …… もとい藤原会長が、一旦黙ったと言う事は、今度は私が自己紹介する番なのだと気付いた。
「私の名前は、雪村 葵と言います。今年から、この学園に通わせて頂いている、一年生です」
私は自分の自己紹介が、間違って無いか不安だった。すると、目の前で座っている藤原会長が、にこりと微笑んでいた。
「雪村さん。そんなに緊張しないで下さい」
「五十鈴。それは無理な事だよ。急に呼び出されて着いて来た先に、私達が居れば誰だって驚くよ。それに雪村さんは、まだこの学園に来て一月しか経って無いのだから尚更緊張するよ」
愛沢先輩が、私のフォローをしてくれた。『緊張しないで』と言われても、こんな有名所に囲まれては緊張しないわけがない。
「雪村さん。貴女をここに呼び出したのは、貴女に私達の補佐として、執行部に入って欲しいのです。毎年、一年生から一人、執行部の補佐を選び、私達と共に活動して貰ってます。貴女はこの学園に招待されて入学したと、理事長から教えられました。そんな貴女なら、他の生徒達とは違う目線で、この学園を良くしてくれると思い、勧誘させて頂きました」
「わ、私が …… 執行部の一員にですか?」
「そうです。貴女なら、出来ると思います。ですが、急に言われても返事に困ると思いますので、一週間、猶予を上げますから、考えておいて下さい。一週間後、今日と同じ時間で良いですから、受けるにしても、断るにしても、ここへ訪ねて来て下さい」
「は、はい …… 分かりました」
「遅くなってしまったので、今日はこれで解散にしましょう。雪村さんも、気を付けて帰って下さいね」
私は、執行部のメンバーが集まる部屋から出ると、先程の会長が言った言葉が、現実となって蘇ってきた。
少しは会話っぽく出来たかな(´・ω・`)
説明文ばかりじゃ、つまらないよね?