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学校生活が始まって、一ヶ月が過ぎた。
クラスメイトとは馴染めていると思う。特に、時雨とは波長が合って、今では一番の親友だ。
「そう言えば、葵は課外活動先、決めた?」
「いや、まだ。私、中学生の頃は、部活に入らず学校が終わったら、ずっと家に居たから運動とか苦手で。委員会やるにしても、何処か良いのか分からない。そう言う、時雨は決めたの?」
「私も、まだ …… ねえ? 私と一緒の所にしない?」
「いいよ。実を言うと、一人だけというのは寂しかったんだ」
「それなら、早く言ってよ。でも、これで一緒に居られるね」
それから私達は、何処の活動先にするのか決める為に、校内の色々な所を回った。その結果、何ヵ所か気になる所を見付け、明日見学に行く事に決めた。その後私達は寮へと戻り、各々の部屋へと別れた。
「ただいま」
部屋に戻ると、同室である星崎さんが既に居て、勉強机に向かって読書をしていた。
私は、星崎さんの邪魔をしない様に、自分の勉強机に鞄を置くと、部屋着に着替えベッドに寝転んだ。
この学園は、日々の宿題が無い変わりに、月に一度テストがあり、このテストで赤点を取ると、放課後に補習を受ける事となる。補習を受けるとなれば、課外活動も当然出来ない為、評価は下がる。私の成績は悪くないが、上位と言うわけでも無い。同室である星崎さんは、きっと上位の方なんだろう。
「雪村さん」
小さな声で私を呼ぶのは、読書に集中していたはずの星崎さん。私は、復習する気は無いのと、自室に籠っていても、パソコンがあるわけでも無いので、共用スペースに行こうとしていた。
「雪村さん。先程、貴女が帰宅される前に、三年生の先輩が訪ねて来られたのですが、貴女が不在でしたので、時間を改めて再度伺うと言ってました。ですから部屋を出られると、三年生の先輩とすれ違ってしまいますので、部屋に居て下さい」
「三年生の先輩が私に …… ? 何の用事だろう? 分かった。部屋で待っていれば良いのね?」
星崎さんは私の返事に反応せず、読書を再開させていた。
私は、三年生の先輩が来るまで部屋で待つ事にしたが、何時来るのか分からない上、部屋に居てもやる事が無いので、暇を持て余していた。