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時雨と話さなくなってから半月が経った。
その間に中間テストがあった。嫌がらせは相変わらず続き、その内容は日々悪質な物へと変わっていった。
「雪村さん。最近元気無いみたいだけど、大丈夫? 何処か体調でも悪いの?」
「委員長、大丈夫。何処も悪く無いよ。心配してくれて有難う」
「本当に? あの噂も、消えない所か最近また書き込みが増えたわよ。本当に誰なのかしら?」
「え? ……また……」
「本当に無理しないで、私や先輩方に相談しなさいね」
「う……ん。有難う」
本当は誰かに相談して聞いて欲しいけれど、相談した事によって、その相手にも被害が出るのが恐ろしくて、誰にも言えないままになっている。
時雨は他のグループの人達と仲良くなって、私が声を掛けようとしても、無視したり嫌そうな顔をされたりする様になった。時雨と同じグループの子も、私に対して無視をしてきた。
そんなある日、私は何時もの様に、執行部の部屋へ向かっている途中、ふいに誰かに背中を押され、階段から落ちた。直ぐに誰かの悲鳴を聞いたが、私は頭を打ったせいか、そのまま意識を失った。
「ここは……?」
意識が戻り自分が今何処に居るのか、周りを見回してみると、白い壁と天井。私が寝ているベッドと簡易椅子以外は何も無い無機質な部屋 …… つまり何処かの病院へと運ばれたらしい。
「目が覚めたのね」
私が辺りを見回していたら、ドアが開いて中へ入って来たのは黒崎先輩だった。
「先輩 …… わ ……」
「雪村さん。貴女は階段から落ちて、その時に頭を打ったらしく、そのまま意識を失ったのよ。その光景を偶然見ていた生徒が、直ぐに先生へ連絡してくれて、貴女は病院に運ばれたの。貴女が、嫌がらせを受けている事は、神園さんから教えて貰った」
「そう …… でしたか。心配をお掛けしてすみません」
「謝る事は無いよ。これは私達スターナイツの責任でもあるのだから。執行部の一員である貴女の身を守るのは、私達の仕事なんだから」
「それでも……」
「はいはい。それ以上言うのは禁止。貴女は今、怪我人なんだから、怪我の治療に専念しなさい」
「ケ …… ガ …… 痛っ! ……え!?」
「階段から落ちた時に、右足を捻挫したみたいなのよ。頭も打ってるみたいだから、精密検査して貰ってる。そっちは異常が無かったらしいけど、捻挫は暫く続くわね。それにしても、あの高さから、それだけで済んだのは、奇跡かもしれない」
「それは……?」
「頭の打ち所が悪かったら、即死だったらしいのよ」
「即……死」
「大丈夫よ。貴女は、今こうやって私と話しをしている時点で、捻挫以外何も無かったのだから」
「はい」
「取り敢えず、その足が治るまでは、ここに居なさい。その間に、貴女を突き落とした犯人と、嫌がらせをしているを捕まえるから」
「………はい。有難うございます」
「それじゃ、私は学園に戻るね」
そう言うと黒崎先輩は、病室から出ていった。
先輩から聞かされた内容から、一歩間違えば、私は死んでいたかもしれないと言う事だった。
正直、私自身は、このまま死んでしまいたかった。生きていても、また虐めや嫌がらせの日々が続くだろうし、何よりも先輩方に迷惑を掛けてしまった事が悔やまれた。




