7
「また、会ったね」
新先輩と邑雲先輩がカフェに来たのだが、邑雲先輩は店内に居た女の子達に囲まれていて、新先輩は私の前へ。
差し出された手に思わず手を乗せようとしたら、新先輩に手を掴まれて、そのまま引っ張られ先輩の方へ体をよろめかせてしまった。
「ここは人が多いから、場所を変えよう」
微笑みながら私に話し掛けると、先輩はそのまま私の手を握ったまま店を後にする。
「え? あ、あの…」
「お友達なら、大丈夫だよ」
「あ、はい …」
そのまま先輩と手を繋いで学校から離れたお店に入り、店員さんの案内で個室に通された。
「ここは他の店と違って、生徒のプライバシーを尊重してくれるから、そんなに気を張らなくても大丈夫だよ。それに客として来ているのも、同じ学校の生徒しか居ないよ」
「そ、そうなのですか。私は、初めて来ました」
「一年生で、ここに来る子は余り居ないかな」
「そ、その … 新先輩は私に用があって、ここへ連れて来てくれたのですよね?」
「ん? 用と言うか君があの店に居るのが見えて、話しをしたくなったから連れて来たまでだよ。それと、君が此所に居る事は、黒崎君に伝えてあるから、その辺りの事は気にしなくても良いよ」
「は、はぁ …」
昨日の今日で新先輩に会うって事は、私の知らないうちにフラグ立ってたのかな? 会長や副会長も格好いいけど、新先輩は格好いいと言うか綺麗だよね。男の人なのに長髪だけど、それが似合ってる! それに先輩のファンって、さっきので分かっちゃったけれど、かなり沢山居たよね。それなのに私の下へ来て、連れ出しちゃうなんて。
*****
「あ、葵! ちょ、ちょっと、何処連れて行くのですか!? 私もいっ…」
「これから先は、先輩が店を出るまで通さない」
「はぁ!? 何、言ってるのよ!」
葵達の後を追い掛けようと席を立ったら、私の目の前に知らない男の子が現れ、行く手を阻まれた。
「先輩の所望に応えたまでだ。君みたいな一般生徒は、ここで大人しくしていた方が、無難だと思うがな」
「一般生徒って、貴方だって同じじゃない!」
「いや、俺は先輩と同じ、執行部の一員だ」
「そ、そんな事通用するとでも……」
「相良さん!」
誰かが私の名前を呼ぶと同時に、手を掴んで来た。
「相良さん。彼の言う事に従って」
私の手を掴んで来た人は、昨日、葵と一緒に寮へと帰って行った黒崎先輩だった。
「黒崎さん、お久し振りです」
「二宮君、お手を煩わせて御免なさいね」
「いえ、これも仕事のうちですから」
そう言うと、彼は私達に背を向け、立ち去った。
後に残された私は…
「相良さん。貴女この学校に居たいのなら、男子執行部の人と喧嘩しない事だよ」
「それは、どういう…」
「執行部の内情だから話せないけど、そう言う事。勿論、男子の方だって、女子執行部の人と喧嘩はしない。もし、してしまったら退学は免れないわね」
「先生達は、そんな事黙っているわけが無いじゃないですか!」
「先生達も容認しているわ。そもそも校則にも書いてある事よ」
「え?」
私は慌てて生徒手帳を広げて確認してみた。確かに先輩が言った事と同じ内容が書かれていた。
「分かったかな。これからは、気を付けなさい。雪村さんなら大丈夫よ」
「……はい。先輩、ご迷惑をかけ、すみませんでした」




