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聖 白薔薇学園執行部   作者: 南條 樹
初対面
14/45

久々にやって来たここは、学園の敷地内では外れに当たり、生徒はおろか、通りで働く人達ですら来ない所だ。それでも此処から眺める景色が好きで、一人になりたい時には来るのだが、今日は珍しく先客が居たようだ。


「これがこうなって …… あれが、こうだから …… えーと、こんな感じかな」


「ここで何をしている?」


「え?きゃっ!!」


突然、声を掛けたのが不味かったのか、声を掛けられた相手は、驚いて座っていたベンチから転がり落ちる所だった。咄嗟に手を差し伸べたから、どうにかなったものの、次からは気を付けねばと思った。


「え? あ、有難うございます。急に声を掛けられて、びっくりしちゃってスミマセン」


「いや、急に声を掛けたこっちが悪い」


初めて相手の顔を見たのだが、この顔 ……何処かで見た様な。それに ……その制服は、この学園の生徒か。真新しい感じもするから一年生って所だな。


「あ、あの ……私に、何か用でしょうか?」


「いや、特に用は無い。ここに人が来ている事が珍しくて声を掛けたまでた」


「そうでしたか。私は何度も此処へ来ていますが、確かに誰かが来た事は、有りませんでした」


「一人でここに来てる?」


「はい。私は元々引きこもりしていたせいで、人との付き合いが時々息苦しく感じる時があり、そう言う時には此処へ来てます」


「俺も似た様な感じだ」


「そう言えば、自己紹介がまだでした。私は、この春から白薔薇学園に通い始めた、一年生の雪村 葵と言います」


「俺は、3年の皇 新」


「皇 ……先輩ですか」


「俺の事は、新と呼んでくれて構わない」


「それでは、新先輩と呼ばせて貰いますね」


「ああ」


「それでは新先輩。これからも宜しくお願いします。あまり長居してしまうと、先輩達に怒られてしまうので、先に失礼します」


「日も落ちてきたし、気を付けて帰れよ」


「有難うございます」


彼女は持っていた書類を片付けると、学園の方へと歩いて行った。それにしても彼女 ……何処かで見た様な。名前にも覚えがある。何処だったかな……


「皇先輩、ナンパですか?」


「颯斗か。見ていたのか?」


「途中からですがね。先輩が部屋に戻らず此方に向かっていたので、後を付けてました」


「質が悪いな。ナンパでは無いが、こんな人気も殆ど無い所で、女の子が一人で居るから声を掛けたまでだ」


「それをナンパと言うのですよ」


「それよりお前、こんな所に居ても良いのか?」


「東條先輩からは呼び出し有りませんよ。先輩は、デートに出掛けられましたから」


「どっちが女誑しなんだか。それより、颯斗は彼女作らないのか?」


「そんな暇有りませんよ。それに、好みの子が居ませんから」


「ああ、東條家に仕える身だからか?」


「それも有ります」


「翔相手じゃ、疲れるだろう?」


「それは言えません」


「成程。さて、俺達も帰るか。こんな所に、男二人だけというのは、つまらんからな」


「そうですね」



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