クラス配置
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始業式終了後。
一旦全生徒はクラス確認を行う為、ホールへと向かった。
そこにはクラスの割り当て表が貼られ、仁和、朝露、陽人の三人は膨大な量の名前から自分のを探していた。
こういう場合大概ラッキーなのが……
「おー、同じクラスか」
「そうみたいですね」
「で、でも…なんか変じゃないですか?」
陽人は他のクラスを見ながら、少々狼狽えていた。
その「変」という異常さは仁和にも朝露にもすぐ理解できた。
「そうだな……俺達のクラスだけ異様に人数少なくね?」
「ですね。他はこのクラスの倍の人数ですし。十人近く位しか確認できませんね」
「まだ会ってない人も居るみたいです。これだけ生徒が居ればクラスに行かない限り確認出来ないと思います」
三人は校門の前で互いを認識している。
だがそれ以外にも当然クラスには他の生徒もいる。
それをしげしげと見つめていた三人に、在校生の一人が声をかけた。
「よう新人!珍しい組み合わせのクラスに入ってるな!」
「どういう事でしょうか?」
「気づいてなかったか、ここ。この名前…既に何年か前に抜刀隊の一員だった御崎歩生がいるんだぜ」
「はぁ!?現段階でもう抜刀隊になってる奴がクラスに居るのか?」
確かに、彼らのクラスの名前の表記リストには、「御崎歩生」という人物の名前が記されている。
でもまだ会っていない。どんな経歴があるかは分からないが高校生になる前に抜刀隊に所属している人物は珍しい。
しかし珍しいのもそれだけでは無かった。
「桐生蛍、神楽坂信人……ま、名字で分かる通り桐生はこの学校の理事長の息子さんだぜ」
「そ、そんな立場の偉い学生まで抜刀隊に?」
「適性があればそうするのが普通さ。まーでも桐生は跡継ぎだから絶対過保護にされるな」
話を聞いていく位置に仁和は気に入らない雰囲気になった。
それを朝露も感じ取っている。
仁和はクラスの中で特別になるつもりでいた。成績が優秀だとか、即戦力だとか。
何かと注目の的を浴びたかった。
しかし既に自分の異彩を曇らせるようなメンバーが三人。まだ後二人存在するようだが、それだけでも自分が目立たない事に不満を抱いていた。
「仁和、顔に出てますよ」
「うっせー。見ろよ、それに女子も居ねぇ」
「どうします?辞めます?」
「うっせうっせ!意地でものし上がってやる」
どんな人物か三人にはまだ分かっていないが、仁和だけは抜刀隊への意欲だけ満身創痍だった。
朝露も陽人も張り合う必要ないのに……とまではいかないが、隠れて肩をすくめる。
とりあえずそのクラスに向かうしかお互いを確認する術はない。
このままホールに居ても仕方ないので、三人は自分の教室に向かう事にした。
「女子いねぇー!」
「煩い」
その後―
「……1-Aか」
三人が去った後、クラスの番号を確認した御崎歩生。
何か騒がしい様子だったから、その場所が静かになるまで待っていた。
その三人の姿が見えなくなると、彼らと話していた学生が歩生の姿を見てびっくりしていた。
「こ、こりゃどうも……」
「いえ。敬語は良いです。抜刀隊とは言えまだ1年生ですから」
本人は嫌味を言ったつもりはないだろうが、聞いた本人は気に入らなかったに違いない。
それでも歩生自身は誰かとなれ合うつもりもないだろう。
友達感覚での交流、そう言うのに疎い。抜刀隊としての、そして特待生としての義務を全う出来ればそれでいい。
そう思いながら彼もまた教室の方へと向かった。
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