内地への招待
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数週間前。
外地のとある中学校で卒業式が行われた。
高校に進学するか就職するか、様々な学生が中学校生活を終えた事の達成感に浸っていた時、刈り頭の三白眼をした学生を中心に話が盛り上がっていた。
「俺なー俺はやっぱり働くわ」
「進学しないのかよ?」
「難しいこと嫌いでさーまた勉強するの?とか」
どうやら三白眼の彼は、中学校を卒業して就職の予定を立てている。
卒業証書をくるくる回しながら、三年間の勉強に嫌気をさしていた。
「山田って卒業ギリギリの点数だったもんな」
「うるせぇ小西!頭より体を使う方が得意なんだよ!」
彼の名は山田和生。
このクラス内の中心的リーダーな存在でもありムードメーカーでもあった。
だから自然と彼の回りに人が集まる。もう一人和生とコンビを組んでいる一人がいるが、その姿はまだ見えない。
教室に居ない事をふと不自然に思い、隣に居た小西という子に聞いてみた。
「祐介はー?」
「穴生?さあ……職員室に呼び出されたと言ってたけど」
「何かしたのかねーまあ俺が居ねぇと何にも出来な……」
その時だった。
―ガラッ
「……」
「祐介?どしたん?」
教室に現れた、茶髪の学生。背が低く、まだあどけなさが残る彼を和生は祐介と呼んだ。
何時も二人はつるんでいて、仲が良い。
だからこそ祐介の表情を見て何かが違うとすぐに察せた。
彼もまた卒業ギリギリの点数だったが、卒業出来ているという事はそこが問題ではない。
祐介は一枚の紙切れを持ったまま、和生に近づいた。
「ごめん……和生。俺就職できないかも」
「へ?ど、どうしたんだよ?」
「一緒の職場で働こうと思ったんだけど……無理っぽくなった」
いきなりのカミングアウトに、和生も驚いた様子で口をパクパクさせていた。
その原因は祐介が持っている紙切れにあると察し、近づいて問い詰めた。
「い、一体何が……」
「俺も良く……分かんねーんだけど……」
そして祐介は紙切れを和生に見せた。
「俺……何でか『内地』へ呼び出されたんだ……」
和生が目にしたのは、小難しい字の羅列で説明され簡単には理解出来なかったが、簡潔に描かれている部分で―
『穴生祐介、本年度4月をもって東京都「桐生討伐併合高校」に入学する事を命ずる』
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