悪魔の電話
右手を胸に、利き手でなければ左手でも良い。
そして高々と天を仰ぎ、決意を示せ。
選ばれた君達は古よりからのカルマを乗り越える宿命を持っている。
さあ、救われぬ人々の叫びを―その刀で鎮めるのだ。
我らしか出来ぬ、恐れさえも退くその名は―
―
「うん、じゃーまたね」
日も傾き始めた頃、一人の女子高校生がスマホで誰かと話していた。
周囲には誰も居ない。この街において彼女一人と言う状況下はあまり無いのだが人の気配はない。
しかし女子高生はそれを気にしている訳でもなく、ただ淡々と話をして今しがた終わったようだった。
巧みにスマホを弄りながら彼女は歩く。帰宅か、それともまだ寄る場所があるのか。
―カアッ!カアッ!
「ひっ!?……ってカラスかぁ。びっくりさせないでよ」
いきなり彼女を笑うかの様に数羽のカラスが鳴いて飛び立った。
周囲に人が居ない事の異様さを、改めて知った彼女は急ぎ足でこの場を去ろうとする。
群れている方が人間は安心する。孤独を好む人も居るが、この状況下で一人を謳歌する様な度胸はない。
ただ、一人になっているだけなのに。何時から『この場に一人だけ』になっていたのか分からない。
誰か一人でも現れても可笑しくない。それなのに誰も姿を見せない。
「……」
―PIPIPIPI―
彼女が持っていたスマホが鳴る。
孤独からの安心感。恐らく自分の友人だと、着信に出た。
「はーい、もしもしー……」
それが、彼女の最期になるとも知らず―
―