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06:素顔と違和感

あの後結局クーリとシンにも同じ質問をされ、みな一様に瞳を濁らせ帰っていった。クーリは去り際に気遣うように手をとったが、さり気なく禁呪を呟いたことは見逃さない。

拍子抜けなほどあっさりと引き下がる彼らを見て、嵐の前の静けさ(これはやばいぞ)という言葉が頭に浮かんだ。


ーーー


「ええっ、エスラさんにやられたんですか、それ!」

「見た目ほど大したことはないのよ、見た目ほどは」


大仰に口元を隠すヒロイン、まん丸の目は零れ落ちそうなほど大きく見開かれている。いやほんと、見た目ほど痛くはないのよ。……さりげなくクーリにかけられた、呪い(嫌がらせ)をのぞけば。

どうやら、ヒロインと話すと発動するらしいこの呪いは、先ほどからキリキリと胃を締め付ける。おかげで茶菓子を満足に味わえやしない。


「ひどい……。私今度、注意しておきますね!」

「いえ、大丈夫よ。もう痛くないわ」


余計なことはやめてくれ、といいたくなる。ただでさえ不穏なのに、火事場にガソリンぶっ掛ける気か。

どうせ、これもイベントのひとつだろう。エスラ(あの駄犬)に注意したところで、他の女に触れたことに嫉妬してるという超解釈が働いて依存度があがるとか、そんなの。私をだしに使うんじゃない。


「でも……」

「気持ちだけでうれしいわ。それより、私、もうお腹いっぱいなの。よろしかったら、頂いて?」


これ以上何かされないうちに、残った茶菓子をずいと差し出す。有無を言わさず押し付ければ、ヒロインはおずおずと手を伸ばし始めた。よし、餌付け完了。


「って、誤魔化されませんよ! 今朝、何があったんですか!?」

「……えっとね……」


のりの悪いヒロインに押し返された茶菓子を、仕方がないので自分で食べる。うん、おいしい。

口内の菓子をすべて飲み込んでから、今朝あった出来事を掻い摘んで話す。すると、次第に顔色が変わるヒロインに、思わず距離を置く。何その顔、怖。


「……それで、アリエさんはなんて答えたんですか?」

「いつも話してる内容を、そのまま言ったわね。皆様、納得してない様子だったけれど……」

「あ、あー……マジですか…ちっ」


可愛らしいヒロインの外見にそぐわぬ声に違和感を覚える。あれ? 今、舌打ちした?


「あ、あの、エナさん? どうかしたの?」

「…いえ、何でもありません! それよりアリエさん、今度彼らにあったらちょっと違うこと言ってみてください! ね?」

「え、ええ。わかったわ」


珍しく真剣な顔で要求してくるヒロインに、思わず頷いてしまう。違うことって、何?


「ありがとうございます! あ、このお菓子おいしいですね~」

「よかった。お代わりもあるからどんどん食べてね」


改めて紅茶を一口すすると、あまりのおいしさに、先ほど感じた違和感も意識の隅へと追いやられてしまった。

ヒロインはもちろん、ハーレム狙いです。

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