04:昼下がりのお茶会
今回はネイ視点です。
キャストがアリエ様の部屋に伺ったと聞いて、何かまた電波なことをしでかす前に止めるべく急いで向かうと、すでに扉の向こうで何か始まっていた。
「アリエさんって、好きな人いますか?」
「は?」
普段からは考えられないような声で、ポカーンとするアリエ様。ちょ、ヒロイン、何言ってんの!
「それは……どういう意味でかしら?」
「あ、恋してますかって意味で! 結婚したいな~とか、思う人いますか? 例えば、キーラさんとか」
と、やめてぇええ!!そんな選択しなかったはずでしょねえ!?アリエ様、なんか黙っちゃったし!
なんとか助け舟を出すべく、お茶を載せたワゴンを携えて扉をノックすると、アリエ様の安心したような声で、「どうぞ」と返ってきた。
間違ってもお茶を零したり辺りを汚してしまわないように、恐る恐る扉を開ける。
「お、お茶が入りました……」
「あ、ちょうどよかった!お茶にしましょう!」
ネイもご一緒しない?と笑顔で言われれば、頷かざるを得ない。
きりきり痛む胃をさすりつつ、ご相伴に預かることにした。
ーーー
一定の階層以上じゃないと味わえない高級茶に舌鼓を打っていると、ヒロインはまたも口を開く。
「それで、どうなんですか、アリエさん。好きな人、いますか?」
まだ言うか。
苦笑いのアリエ様を意にも介さずに問い続けるヒロイン。KYというか、なんというか……。
「えっと、まず私は結婚に意思を挟めないし……。それに、仮に選べたとしても、キーラ様たちはちょっと、ね」
「えー、そんなのおかしいですよ!結婚ぐらい、好きにしたいですよね」
ヒロインマジKY。いかにも日本人の発想らしいが、それを異世界にまで持ち込むんじゃない。
それにしても、アリエ様がキーラたちを苦手という設定はなかったはずだけど、やっぱゲームと現実は違うんだなぁ。
比較的キャストは原作よりの感じだけど、アリエ様は割りと色々違う。好きなものとかは似ているけど、周囲の人に対する接し方、とか。
ゲームのアリエはなんというか、対人関係に潔癖気味だった。どろどろした、性根の腐った人間が苦手で、少しつんとした印象を与える。
そのせいか少し宮殿ではやや孤立気味で、ネイやヒロインが傍にいても邪魔をされにくいのだが。
「ネイは、どうなのかしら?」
「へい?」
「あー、聞きたーい!ネイさんは、誰派ですか!?キーラさん?エスラさん?クーリさん?まさかのシンさん?」
売られたぁぁあああ!!!いつの間にかヒロインの視線はこちらに向けられていて、その目はきらきらと輝いている。
色々考えているうちに、気がついたら矛先が自分に向けられている。まさかアリエ様、最初からこれを見越して!?
ばっとアリエ様を見やると、笑顔でサムズアップされる。その顔にはまるで、"頑張れ"と書かれているようである。
スケープゴートにいつの間にかされていた私は、誰一人見方のいない中、力なく項垂れ、一方的に繰り広げられるヒロインの乙女ワールド全開な妄想に相槌を打つしかできなかった。
ヒロイン「私の女子力は53万です」