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部屋で起きたちょっとした話

風溜まり

作者: 渡ノ森 水緩

部屋の掃除をする。

今日は秋晴れ、少し肌寒いぐらいに空気の澄んだ爽やかな日だ。


床に散乱していた本を棚にしまい、紙くずや菓子の袋をゴミ箱に捨てる。脱ぎ散らした服を、洗濯機に放り込む。取り込んで放置していた乾いた洗濯物をもう一度洗うか悩んだが、特に臭いがついたりもしていないようなのでクローゼットに放り込んだ。


本と一緒に散乱していたプリントやチラシ…つまるところ紙束は、あとで仕分けして捨てようと部屋の隅においてあるミニテーブルにばさりと乗せた。


散乱していた「モノ」を片付けて、息を吐く。


これできちんと床が見えるようになったが、床の上に舞う砂埃や綿埃も目立つようになってしまったな…。面倒だが仕方ない、掃除機もかけるか。


クローゼットの奥から掃除機を引っ張り出し、からからとコードを引き出す。


コンセント…あそこのはいっぱいだ、台所側のは空いていたか? 目だけでコンセントを確認する。台所側のコンセントは空いていないが、差してあるうちの1つは携帯の充電器。抜いても大丈夫だな…そんなことを考えながら台所のコンセントまで行く。


携帯の充電器を抜き、代わりに掃除機のコンセントを差して、スイッチを入れる。ごおおおおおお…と思ったよりも大きな音を立て、掃除機が埃を吸い込み始めた。


おぉ、どんどん床が綺麗になるぞ。よしよし、この調子で部屋中綺麗にしてしまおう。調子に乗って、部屋の隅から隅まで掃除機を走らせる。


と、その時。

すぅっ、と足首を撫でる冷たい風を感じた。


なんだこの風? 掃除機から出ているのか? と排気口に足を寄せてみるが、吹き出る風は暖かい。そりゃそうだよな、掃除機のモーターを抜けて出てくるんだから、冷たい訳がない。


じゃあいまの、ひやりとした風は一体どこからーーー?


首を傾げつつ風を感じたあたりーーー部屋の隅、壁と壁がぶつかる角、ミニテーブルと壁に挟まれたあたりだーーーにしゃがみ、壁をじっと見つめる。…壁に、目に付くような穴は空いていない。


もちろん、目で見てわかるような穴が空いていたら大事だから、空いていなくてよいのだが。


次に、壁に沿って手の甲をゆっくりと動かして見る。風の出どころ、つまり風が抜けているところを探すなら、手のひらより手の甲の方が感じやすいはずだ。


そう思って手の甲を壁側にしたのに、風が触れたのは手のひら側だった。ひんやりした風が、さわさわと手のひらをくすぐる。


なんだこれ。空気の流れが、たまたまここに吹き込んでるのか? いやでも、室内に風を起こすようなものは何もないぞ。風を手のひらに感じながら、風が吹いてくる方に向かって動かしてみる。どこだ。どこからきてるんだ、この風は。


しゃがんだ足の間まで手を動かすと、風の吹く向きが変わった。手の甲にあたる、冷たい風…。さらに風の吹く向きが変わる一瞬前、風が止んだような気がしたから、確認のためにゆっくりと手を戻してみる。


じり、じり、と動かしていくと、確かに風のないところがあった。ついでに、手を右、左と動かしてみる。すると、風は10cm四方ぐらいのエリアから、ごく弱い風が四方八方に向かって吹いているらしいことがわかった。


どうやら、部屋の空気の流れがここに吹き込んでいるわけではないらしい。


だが、そんなことがわかったところでどうにもならない。ここに「風が吹く何か」がある、というだけだ。しかも目視できない、透明なものが。これがなんなのかはわからない。だが、風が吹くだけならば 害もない。


害は無いが、良いことも別にない気がする。

今日は少し肌寒い。


立ち上がって伸びをし。

軽く目を閉じてため息をつき。


なんの気も無しに「暖かい風だったらよかったのになぁ」と呟いた瞬間。


ごうっ!と暖かい突風が下から吹き上げ、置いてあったプリント類が部屋中に舞い散った。

超ショートホラーストーリー8本目です。

描写を増やす方向で書いているため、6本目までよりだいぶ長いです。

が、それでも2分ほどで読めると思いますので、お気軽にどうぞ。


感想やアドバイスなども、とても嬉しいです。

よろしくお願いいたします(ぺこり)

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