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染華深の怪談屋

夜逃げ

作者: 染華深

 確か、俺が大学生の時の話だったと思う。

 俺と俺の彼女と、友人のAとその彼女のBと、ファミレスで飯を食いながらだべってたんだ。

 Bと会うのは初めてだったんだけど、Bはゴスロリにボサボサの金髪という格好。しかも口を開くと、霊が見えるとか占いが趣味とか、なんとなく痛々しいことを話していた。

 うわ、A痛い奴と付き合ってんなぁ……なんて内心思っていたりした。


 で、俺たちみんなオカルト好きだったから、話の流れで近所の廃墟に、肝試し行くことになったんだ。Aも俺も車を持っていたから、それぞれでえっちらおっちら行くことにした。

 そこは、俺とAが高校生の時に、一家で夜逃げしたから空き家になっていただけであって、いわくなんてありもしなかった。

 だけど俺とAは話を合わせて、そこは一家心中した家族が住んでいた家だってことにしたんだ。

 で、そこに入ったんだが……今思えば、立派な不法進入だよな。

 ちなみにAは、Bの霊感云々は本気にしていないらしい。それを聞いて、少しほっとしたことは言うまでもないだろう。

 家に入ると、予想通りBは演技を始めた。曰く

「赤ちゃんの泣き声がする」だの

「白い顔した女の人がこっちを見てる」だの。

 ちなみに、夜逃げしたのは老夫婦で、子供や若い人なんか住んでいなかった。それを知っていた俺とAは、にやにやしながらBの戯れ言を聞いていた。


「違う。違う違う違う違う、違うよ?」


 そんな中、Bの話を聞いた俺の彼女が急に低い声で呟き始めた。

 かと思うと、俺の手を引きながら奥の和室を指さしながら


「ここ。ここ、ここだよ。ここにいるよ」


 と、低く掠れた声で言い出すんだ。

 Bは泣き出すし、彼女の目は虚ろで焦点があわない。俺とAは引いていたが、それよりも気味が悪かった。

 その後Aは必死でBを慰め、俺は未だにぶつぶつ言っている彼女を、車に引きずって戻った。

 余談だが、そのときのAの様子から、あいつは本当にBが好きなんだと感じた。我が友人ながら、物好きな奴だ。 彼女については悪ノリしすぎた、ということにしておいた。気持ち悪くて、追求したくないというのが本音だった。

 彼女とはそのあと、1ヶ月もしないうちに別れた。


 でさ。最近、高齢者と連絡がとれなくなっているとかいうニュースがあったよな。

 それに関わって、市役所がさ、その廃墟に住んでるはずの老夫婦と連絡がつかないって捜査していた。

 後は、市役所に勤めてた叔父から聞いた話なんだけど。

 なんだかんだで老夫婦は見つかったんだけどさ、問題はその夫婦の母親がみつからないということ。

 結局、金目当てに母親を殺して、例の廃墟の和室の床の下に埋めたって自白したらしいけど。

 それで、罪悪感から住めなくなって夜逃げしたみたいだけど……それって、死体がそのままってことだよな?



 俺の彼女は、なにを見ていたんだろうな?

 老夫婦もまた、何かを見たんではないだろうか?

 俺はもうそこには住んでないから、真実はわからない。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 実録風の生々しい文体が良い。 [気になる点] 粗筋の様なまとめ方でストーリーが簡略かなという印象を受けた。 [一言] 最後の締め括りが良いですね。
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