チンピラ
高校に上がる以前は、父は恐怖の対処以外の
何者でもなかった。
自分より弱い人間を泣かせる事にしか喜びを
感じない、そんな類の男。
ネチネチと精神的に追い込むのは常套。
殴るにも蹴るにも理由があるらしいが、
例えば…明日、学校で使うからハサミを
借りたい…と申し出て、散々殴られた事も。
いまだ意味不明。
おそらくはパチンコで負けたか上司に叱られ
たか、そんな背景があったのだろう。
口の中が切れ、血が止まらなかった。
俺は相手が誰だろうが、理にかなわない奴は
時と場所を選ばずビシッとヤル。
父の口癖。
しかし…親戚の前では常に控えめ、意思表示
すらできない。
おそらく上司だろうか…電話口で何度も頭を
下げつつ、おべっか連発。
私以外の人間を殴るどころか怒りを現してる
のを見たことが無い。
本人曰く、暴力団の構成員らしいが…脳内
だろう。
中学生の頃は、隙をみて殺害しようと真剣に
狙っていた。
隙が無かった訳ではない。
むしろ父は愚鈍だった。
病弱なフリを装っているが、実はそうでは
なく、根は怠惰で、かつ周囲の同情を買い
たいだけ…入退院を繰り返していた。
私の親殺しに歯止めをかけていたのは、祖母
の存在だった。
後年、親戚から聞いた話しでは…父は幼い頃
からセコイ困った輩で、それ故か祖母は溺愛
していたらしい。
わからんでもないが。
唯一、私を庇ってくれる祖母を、私が泣かせ
ては…そんな単純な理由と葛藤した。
日々殴られ脅され、だんだんと感覚は麻痺
してゆく。
高校進学のあたりに、父の暴力が止んだ訳
ではなかった。
どうでもよくなった。