別れと謎の島
ぎらぎらとまぶしい太陽に焼かれて、僕は目を覚ました。
「ん……むぅ、ふぁあ……」
全身がかなりだるい。首も痛いし、まったく起きる気になれない。
少し起きようとして、やめる。そうしているうちに、いろんなことが頭の中をめぐる。
「そういえば」
ふと、あたりを見回す。
僕は、僕は
「なんで、こんな所にいるんだー!?」
そう、ここは無人島だった。
時はさかのぼり、空には大きな月がのぼっている。
ここはとある船の上――といっても思い浮かべるような古めかしい形ではなくどちらかというと、近代的な形だ――その甲板に一人の少年が立っていた。
その少年は遠い海を静かに眺めていた。
すると、甲板に出るドアが開きそこから
「やあ」
と軽い挨拶とともに、中年の男性が現れた。
「こんなところで、何をしてるんだい?」
「別に……だだ、ちょっと風に当たりたかっただけ」
「……………………」
少しの沈黙の後、
「おじさんは?」
とさっきより少し柔らかく、次は少年の方からの質問。
「わたしも……そう……少し風に当たりたかったたんだ」
「……………………」
二度目の沈黙、それをやぶったのは
ゴゴァォオオン!という何か大きなものに当たったような音と、大きな揺れだった。
「う、うわわ」
「何だ! どうした! 船が何かにぶつかったのか!?」
やがて、船の中からも異変を察知した人たちがちらほらと甲板に出てくる。
「どうなってんだ! 安全じゃなかったのか!」
「おい、どこだ! どこが当たったんだ!」
「どうしたの? 何で止まっちゃったの?」
「う、うぁ、ひっ……ひっぐ……うぁあああん! 怖いよう、うぅぁああぁん!」
その、叫びや怒鳴りの渦の中で、僕もパニックになりかけていた頃に
「君! そう、君だ! こっちだ! こっちに来い!」
僕は、半ばパニックになりながら、必死におじさんの声の方向に人ごみを分けながら進んでいく。
押しつぶされそうになりながら、人の間を縫うように進んでいくと、その中にようやく
おじさんのものらしき手を見つける、そして、掴む。
「お、おじさん?」
「ああ、いくぞ? 手を離すなよ」
そして、また走り出す。
何人もの人にぶつかりながら、しかし手だけは絶対に離すまいと握りしめる。
もうどれぐらい走っただろうか。船と言っても、そこまで大きくないはずのこの船だが
僕としては、フルマラソンより走った気がする。まあフルマラソン走ったことないけど。
「ハァ……ハァ……」
「大丈夫かい?」
ともすれば、父よりも年をとっているように見えるこの男性だが
あの人ごみを抜けてきてまだ涼しい顔をしている。
「あ、ありがとう……ごさ……ハァ……」
「ハハハ、そんなに焦らなくてもいいよ」
「ハァ……ふぅ、ありがとうございました。ところでここは?」
「私の部屋だよ」
「そう……ですか、それでさっきの騒ぎはどうなっているんですか?」
「君はせっかちだな」
その、落ち付き払った態度が、保護者のような目つきだったので、僕は少しむっとする。
「ハハ、すまない、そんな目をするな」
それでもまだ、バカにされている気がしたが、流した。
「うむ、それでさっきの話だが、ここに来るまでの間にこの船の乗組員に聞いた話だと
この船はどうやら座礁したらしい、だが心配する必要はないぞ、船が沈むまでにはまだ時間があるし
もう救命ボートでの脱出もはじまっている。」
「そうですか」
そこでふと疑問に思った。
「どうして、僕の為にそこまでしてくれるんですか?」
「…………実は私にも君とおなじぐらいの息子が」
「そんな、わかりやすい嘘はいいんです」
「そ、そうか…………本当のことを言うと、とくに理由は無いんだよ。しいて言うならば
たまたま甲板に出たら君がいた、その君が困っていた、だから助けた。それだけさ。」
なんだか納得のいくような、いかないような話だったが、とりあえず素直に受け取っておくことにする。
そんな話をしていると船の乗組員が救命ボートに乗るように促してきた。
僕とおじさんは一緒にボート乗り場へと向かった。
そこでは多くの人がボートをまっていた。だが乗組員の先導がうまいのか
ボートの順番が来るまで、気になるほどの時間はかからなかった。
よく考えればここまで、かなりのことが起こっていたが、僕はかなり冷静だ。
もちろん、この冷静は自分に起因するものではないことは、明々白々だが。
だからこそ、このおじさんには感謝しなければならない。一緒に無事で帰れたら改めてお礼を言おう。
とそこでまた、ゴアァァォオン!と一度目より大きな音が鳴った。
僕は、さっきまでの冷静は何処えやらアワを食って急いでボートへと飛び乗った。
それとほぼ同時に、ボートはエンジンをうならせて勢いよく走りだした。
ドキドキしながらも、命の危機から脱出したことによる安堵と脱力が全身を襲う。
そして、ハッとしてボートの中を見回す
おじさんは?乗ったのか?どこだ、見えない。
「………………いた!」
しかし、おじさんは他の人たちに押されてボートから落ちかけている
下手をすると、僕の命の恩人かもしれない人がボートから落ちそうになっている!
その事実だけで、なぜか体が動いていた。
自分のことは考えず、だだおじさんを助けるために。
「おじさん!こっちだ!こっちだよ!」
僕は必死で声を上げた、おじさんがそうしたように。
ただ、それを見たおじさんは、一瞬嬉しそうな顔になり、そのあと険しい顔で僕の手を払った。
僕はその意味が分からず、もう一度、手を伸ばし今度は自分から、掴んだ。
だが、僕一人の力じゃあ、おじさんは持ち上がらず、僕はバランスを崩す。
しかし、僕は焦らなかった。これだけの人がいるんだ、一人ぐらいは支えてくれるだろう、と。
倒れつつある自分の体をまるで、スローモーションのように見ながら考える。
そこで、気付く。誰も、誰も、助けてはくれない。さっきの険しいおじさんの目が脳裏をよぎる。
ああ、そうか。とおじさんのさっきの目の意味が理解できた気がした。
そこまで考え、もう一度、自分と共に深い海に落ちようとしているおじさんをみる。
おじさんの目にもう力はない。だだ、僕に向かって悲しげな笑顔を向けるだけ。
そして、二人は大きな月に煌々と照らされながら、深くそしてどこまでも青い青い海へと消えていった。
この小説は僕の初めて書く小説です。
ですので、誤字脱字、おかしな点などありましたら指摘してくれると嬉しいです。
できたら感想も書いてほしなーと思っています。
初めてですがよろしくお願いします。