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「いや、聞く限り本当に真面目で芯のある子っていうのは分かったよ。嫌がらせも我慢して、与えられた仕事は基本一人でこなそうとするなんて本当に凄い」


 信一先輩の言葉を、俺はぜんざいを食いながら聞いた。


「でもね、社会人って真面目な人から潰れていくんだ。樹が仕事を続けられているのが何よりの証拠だよ」

「ああ?」

「あははは。でも、そういうことなんだよ。樹は仕事で失敗したらどう思う?」

「どうって、失敗したってだけじゃないんすか?」

「うん、そうだね。だけど真面目な人はね、まず自分に失望する」

「自分に?」


 イマイチ、ピンとこない。


「ああ、何で私はこんなこともできないんだろう。ああ、この前も同じミスしたな。情けない。どうしようもない。私は本当に使えない奴だってね」

「……」

「最終的には自分が分からなくなる。自分はどうして、何のために働くんだろうって。自分が選んだ仕事なのに、他の人のことが妬ましくて仕方がなくなる」

「じゃ、じゃあどうすればいいんだよ」

「どうしようもない。こればっかりは自分で納得しない限りはね」


 自分のこの楽観的な性格は長所だと思っている。

 だから嫌なことは大抵受け流せるし、悩みがなさそうっていう嫌味は、むしろ誉め言葉だった。でも、こうして誰かが悩んでいる時に共感することができない。


「……なんだそれ」


 やるせない気持ちで胸が一杯になる。

 信一先輩が頬杖をついて、俺の顔を見てくる。


「樹は、樹にできることをやれば良いんだよ」


 先輩はこうやっていつも俺の相談に乗ってくれる。見返りも求めずに。

 それでもって、先輩の言葉はいつも核心を突いてくる。

 会社で綺麗ごとを口にする上司よりも何十倍も信用できた。

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